第五章(15) お母さんに謝らないと By フェイ
「柚紀」
「何?」
「あのさ、聞きたいことあるんだけど。」
「うん。」
「さっきの、聞いてた?」
「さっきの?」
「お母さんと電話で話してたの、聞いてた?」
「うん。」
聞かれてた・・・・
僕はあの後、結構な時間、柚紀に背中をさすられ、泣いていた。
泣き止んで、思い出した。
そういえば、お母さんと話して、すぐに柚紀に声が変わった。
つまり、お母さんとの会話を柚紀は聞いていたんじゃないか?
それで、聞いてみた。
聞かれていた。
「ごめん。僕、柚紀、ほんとに滝に落ちたと思ったから・・・・」
「普通は、そう思うよね。私も、落とされた時は、そう思ったよ。ああ、私死ぬんだなーって。」
柚紀がそう言った声は、とても静かだった。
「でも、死にたくないって思ったの。この世界で生きたいって。そしたら、ネックレスが光って、勝手に私を守ってくれたの。」
柚紀は笑っていた。
「そのあと、お母さんがきて、ここで話を聞かれて、私はこの話をして、それで、律のお母さんが律に電話をかけたの。」
そうだったんだ。
お母さんが、大丈夫って言ってたのは、僕を励ますためじゃなくて、柚紀が無事ってことだったんだ。
・・・・・お母さんに、謝らないと。
「ねえ、お母さんがどこにいるか知ってる?」
「律のお母さん?」
「うん。さっき、柚紀のお母さんがここに来たけど、僕のお母さんは一緒に来てなかったから。」
「そうだね。お母さん!律のお母さん、どこにいるか知ってる?」
柚紀は柚紀のお母さんに聞く。
「ええ。でも、私が案内してはいけないのよ。あなたたちが、自分で行きなさい。」
「え?」
「なら、ヒント、教えて!」
「ヒント。私たちが指示を出していた場所よ。」
「もうそれ答えだよ!!!」
え・・・・
「柚紀。律くん、案内してあげなさい。でも、あれだけは、考えてもらいなさいね。」
「うん!行こう、律!」
そう言って、柚紀は僕の手を掴んで歩き出した。
「柚紀、僕、何のことだか・・・・」
「大丈夫。私、わかってるから。ついてきて。」
柚紀が僕を連れてきたのは、サヤの部屋だった。




