第五章(13) 僕は、また守れなかった。 By フェイ
僕はまた、守れなかった。
前よりも、近くにいたのに。
僕が目をつむっていなかったら。
あの人に、祈りなんかいらなかったのに。
「・・・・・フェイさん。」
「・・・・」
僕は、声がした方向を見る。
「あの、さっきからお電話なってます。」
男の護衛が教えてくれた。
「・・・ありがと。」
本当はこの人達は、僕に敬語で話す必要ない。
それでも、僕にも敬語なのは、エルザ様と一緒にいたからだろう。
もう、それもないのに。
僕はとりあえず電話に出た。
「・・・もしもし。」
『律?』
「はい。」
電話は、お母さんからだった。
『・・・・大丈夫よ』
何が、大丈夫だというのだろう?
柚紀は、柚紀が・・・・
『大丈夫。』
母は、もう一度おんなじ言葉を言った。
「何が大丈夫だ!柚紀が滝に落ちたんだ。僕はまた守れなかった。守れたはずなのに。前よりも近くにいたんだ。隣にいた。なのに、僕は守れなかった。今回も。ジーク様との約束も、柚紀との約束も、全部、全部、守れなかった。僕は、やっぱり何も出来ない。後悔しかない。あの時、あの時、あの時、あの時・・・・。何も変わらない!何も変えれない!大丈夫なわけないだろ!!!」
・・・・・・・
電話から次の言葉は聞こえなかった。
「なんか言えよ!!!この世界の仕組み教えろよ!!!ここからあっちに行けるのか?柚紀がいる世界に行ける方法があるなら早く教えろよ!!!柚紀がいない世界で生きるなんてできないんだよ!!!」
僕が、怖かったことは、これなんだ。
柚紀がいなくなったら、僕は、何もできないんだ。
だから、あいつを殺そうって言ったのに。
僕が愛していた人は、殺さないって言った。
いなくならないから、大丈夫って言って。
でも、でも、いなくなってしまった。
もう、こんな思いしたくないって、思ったはずなんだけどな。
もしかしたら、全部、自業自得なのかもな。
前の世界でも、僕が父のことに気が付けなかったからで。
今回も、僕が油断したから。
僕が、全部、悪いんだな。
『教えないよ。』
・・・・・・え?
『そんな世界ないもん。』
「・・・・・・・・・・・え?」
『この世界だよ。』
電話から聞こえてきたのは、聞き間違えることがない、柚紀の声だった。




