第一章 (6) 許婚は・・・いない!?
そのあとの時間は部屋で過ごした。
部屋で、サヤにノックの回数について教わっていた。
「ノックの回数には意味があります」
「それは知っているわ。だから今日の朝、ノックの回数に困ったの。間違えてはいけないでしょう?」
「そうですね。本当なら、エルザ様のような年頃の方に詳しくお話しする内容ではないのですが」
「・・・忘れてしまったものはしょうがないでしょう?」
「なので、お話しします」
・・・忘れてるのがおかしいのはわかってるわよ。でも、こっちはこっちでいろいろと訳が分からなくて焦っていたんだもの。過去の記憶はないし。
「まず、よく聞くのは2回のノックですね。これはお手洗いの時に使います」
もし2回のノックしてたらお兄様に失礼をはたらくどころの話じゃなくなっていたかも・・・
「次に、3回のノックですね。これは家族・友人・婚約者・配偶者などの親しい人に使います」
「つまり、私は家ではこれを使えばいいのね」
「はい」
ノックは3回、っと。
「あと、エルザ様のことですから、これからは社交場にも足を運ぶ機会も増えると思います」
・・・今までは行ってなかったのかしら?
「エルザ様、疑問点がおありでしたら、何なりとご質問なさってください」
「・・・私、歳的には社交場に既に行っていてもおかしくないと思ったのだけど」
「ああ、そのことですか。エルザ様は現在18歳でございます。この国のルールですが、18歳未満のお一人での社交界への参加は教育、または今後の国のためにならないというとこで禁止されております」
・・・私、18歳なんだ。
「でも、1人でなければいいのよね?」
「ええ。ですが、エルザ様は今まで一度も社交場に参加したことはありません」
「どうして?」
「はい、第一に参加しないといけないものではないからです。先程お話ししたルールでは、もちろん出会いなどが出来る時期がとても遅くなり、家を継ぐ者がなかなか継ぎにくいという問題点がありまして。その対策のため、3歳の時に許婚を決めておけるという制度を導入しました」
「・・・なら、私にも許婚がいるの?」
「それですが、結論からいますと、現在はいません」
・・・え?
「それは、どうして?」
「はい。エルザ様は何も悪くありません。初めの3歳の時に決めた許婚様のお話しですが、お相手の方の家がエルザ様と許婚になったことを表に、裏で周りを脅し、最終的にはこの家を乗っ取る計画を立てていたことが明るみになりましたので、解消しました」
「なるほど」
「このような感じで、今までに4人の方がエルザ様の許婚になられていますが、皆様エルザ様のことを利用して自分たちの地位を高めるために使われいたので、解消しています」
「最悪ね」
「・・・そうですね」