第五章(10) 僕は怖い Byフェイ(律)
「すみません。今指示を出していました。」
一人で戻ってきた柚紀は、そう言った。
「そうですか。どんな指示を出されたのか、気になりますな。」
「お父さん、そんなこと、貴族のご令嬢に聞いちゃいけないことだ。」
「だが、気になるものは気になるだろ?」
「はー。申し訳ございません、エルザ様。父がとんだ無礼を。」
「いえ。いいんですよ、フェイ。」
「ですが・・・」
「あなたのお父上ですから、特別に無礼を許しましょう。」
「・・・本当に申し訳ありません。」
ほんとに申し訳ない
こんな父に殺されたこととか。
こんな父と今も話させていることとか。
でも、でも、冷静に話せている。
僕も、柚紀も。
だから、大丈夫だと思うけど、でも、指示を出していることを柚紀は、言ってしまった。
どうするんだろう・・・
「何を指示していらしたのですか?」
「私、こないだから誰かにずっと見られている気がしていて、調べさせていたんです。」
「そうなのですか?それは大変ですね。」
「ええ。先程フェイのお父様が誰かいないか、と言っていましたので、記憶を探っていたところ、そのことを思い出しまして。私を見ている人が、貴方様がおっしゃっていた人の可能性も無きにしもあらずでしょう?」
そんなこと、ないのに
誰かに身代わりを頼んだのか。
柚紀、そんなことして、つらくないわけがない。
でも、それでも、今ここに堂々と立っている柚紀をすごいと思った。
「そうですね。」
「なので、部下に、確認に行ってもらいましたの。すぐ戻ってくると思うので、それまで、フェイのお父様とお話させていただいてもいいですか?」
「私はかまいませんよ。私としては、息子の魅力にもっと気が付いていただきたいのです。」
「魅力ですか・・・」
「ええ。息子は・・・」
そんな話を少ししたとき、部下が帰ってきて、柚紀に何かを話した。
「確認が取れました。私を追っていた方は、ここの近くで目撃されています。先程、こちらへ向かったらしいのです。」
「なんてこと・・・」
「よろしければ、ですが、こちらへ来ていただけませんか?さっきからこっちから視線を感じるのです。」
「ええ。もちろんです。」
柚紀は、向こうの角から視線を感じると言った。
そして、父と一緒に行動しようと言い出した。
僕は怖い。
柚紀が、今回のことで、後悔しないかどうか。
誰かを犠牲にしてしまったと泣かないだろうか。
泣かれたら、僕はどうしていいかわからないだろう。
僕たちはそのまま、柚紀が言っていた角に着いた。




