第五章(7) 僕は考え、愛する人の名を呼ぶ Byフェイ(律)
「それより、聞きたいことがあります。」
僕は父に聞いておきたいことがあった。
「何だ?」
「あなた、こちらの世界に『何役』で来られたんですか?」
この世界での、役職。
僕が、執事で、柚紀が令嬢のように、父にも役職があると思ったからだ。
「何役・・・ああ、兵士だ。」
兵士・・・
僕は父さんが通っただろう道を見る。
父さんがここに来るまでに争わなかったってことはないはずだ。
軍の人にも、侵入を阻止しろと、命令が出ていたはずだ。
それを考えたうえで、周りを見るが、庭や入口が全く血で汚れていない。
つまり、父よりも、僕たちの軍の方が強いことがわかる。
「そうですか。」
「ああ。律、お前はどうだ?」
ここで嘘をついてもいいが・・・バレると面倒だからな。
正直に言うか。
「この建物、つまり貴族の家の執事です。」
「そうなのか。それなら、いい女を知り尽くしてるよな?」
おい、執事の仕事を何だと思っているんだ。
女の子の調査とかじゃないぞ?
エルザは学校に通ってないし、友達も見たことがない。
そもそも、興味ない。
僕は、柚紀を見つけたかっただけなんだ。
「いい女のところに私を連れていけ。」
「・・・・」
どうする。
何とか言いくるめることも考えていたが、この人、本気で押しかける気だ。
誰か、誰かいないか?
父が満足しそうで、なおかつ、周りに被害がなくて、この人を引き留める方法・・・
『貴族の家の執事です』
あ。
そうだ。
僕は執事なんだ。
つまり、紹介すればいい。
父は、今は自分たちにお金持ちの家や貴族の家と対等に取引できるような力がないことをわかっていない。それなら、この手が使える。
「あの、今から紹介したい人がいるんです。」
「・・・恋人か?」
「違います。僕の仕えているご令嬢です。」
「そうか。わかった。その令嬢とやらに会って、いい女を紹介してもらおう。」
この人が、単純な人であって良かったと思った。
そして、僕はフェイとして、愛する人の名を呼ぶ。
「エルザ様、今よろしいでしょうか。」




