第四章(21) 律のお母さんの思いとは・・・➁
律のお母さんは、少しの間泣いていた。
「柚紀ちゃん、急に泣き出して、ごめんね。」
「私こそ、勝手に色々言ってしまって、すみません。」
「いいのよ。その言葉のおかげで、思い出せたことがあるから。」
「何を思い出したのか、聞いてもいいですか?」
「ええ。私は夫に愛されていないと知ったときにね、息子を愛してあげようと思ったの。息子を愛していたら、息子は夫のような大人に、男にならないと思ったの。」
「・・・・・・結果、どうでした?」
「夫は残念な人になってしまった。今思えば、私はあんな人のどこが好きだったのか、わからないくらい。息子は、そうね。いい子に育った。ちゃんと人を人として見ていて、人を愛せるように育った。柚紀ちゃんを好きになったことも、よかったと思うわ。だって、私が柚紀ちゃんが大好きだから。」
次は、私が泣く番だった。
「私も、です。さっきも言いましたけど、お母さんを亡くして、お父さんは仕事ばかりになって、律しか頼れなかった私を、あなたが助けてくれた。救ってくれた。私は、律のことが好きです。でも、それと同じくらい、あなたのことが好きです。だから、私は律の奥さんになろうと思ったんです。」
「・・・・・・私は、息子だけでなく、あなたにも愛されていたのね。うれしい。」
「私、この世界で必ず生きて、今度こそ、あなたと、律と、私の母と、一緒に生きることにしました。昨日の夜は、殺されて、死んでしまうと思っていましたけど、そう、大丈夫です。なので、一緒に幸せになりましょ
。」
「もちろん。私も、もう夫の行動をただ見ているだけなんてごめんだわ。あ、安心してほしいの。夫がどんなことになっても、私は死なないわ。あなたたちと、幸せになることにしたから。」
律のお母さんが、いつもの様子に戻った。
みんな、何かしら過去があって、未練があって、ここにきている。
それなら、この世界を壊されるわけにはいかない。
私も生きて、みんなで生きて、ここで幸せになるんだ。
そう、私は胸に誓った。




