第一章 (4) 生きたいなんて言ってない
私とサヤは部屋に戻ってきた。
疲れた。
「サヤ」
「はい」
「さっきはありがとう。私が困ってるの見つけたら、サポートしてくれたでしょ?」
「・・・当たり前です。エルザ様はわかりやすいですからね。困っているときは、頭が少しだけですが下がります」
「そうなの?」
「はい。自覚ないんですか?」
「ないわ」
「自覚、持ってくださいね。エルザ様は当家のお嬢様です。いつ、お嫁に行くかわかりません。また、いつ、だれがエルザ様を見ているかわかりません」
ガタン
「エルザ様?」
「・・・大丈夫よ」
「大丈夫じゃないです。足から崩れましたよ?」
「・・・」
「申し訳ございません。私が怖がらせてしまったから・・・」
「違うわ。少し疲れただけ」
「やはりご当主様にお伝えして、お医者様の手配をしていただいた方が・・・」
「いらないって言ってるでしょ!」
「ですが・・・」
「お願い。昼食まででいいから、1人にさせて」
「・・・わかりました。」
サヤはすぐに部屋を出て行った。
サヤに言ったことは本当だった。
サヤのせいじゃない。
ただ、『お嫁に行く』という単語を聞いて、怖くなった。
さっきも、『好き』って聞いて、胸が痛くなった。
絶対、前の世界で、何かあったんだ。
そう確信した。
少しして、眠くなって、寝た。
―ねえ、夢で会った少女。私は、なんでかわからないけど、生きたいなんて言ってないよ。―