第一章 (3) この世界で初めての朝食
「では、朝食にしようか」
「はい」
・・・挨拶、しないと。
「エルザ様、初めに『国民と神に感謝いたします』と、お祈りします。そうしたら、食事を始めて頂いて結構です」
さりげなくサヤが教えてくれた。
・・・挨拶、ないの?
っていうか、挨拶、わかんないのに、なんで挨拶するって思ってるの?
「エルザ、お祈り、しようか」
「はい」
「「国民と神に感謝いたします」」
お兄様はすぐにパンを食べ始めた。
私もパンを食べてみる。
・・・おいしい。
「エルザ、パンを食べるのは良いけど、他の料理もちゃんと食べるんだよ?いつも何かしら手も付けていない状態で席を立つだろう?」
・・・私は、パン好きで、あまり他のものを食べない女の子になりきればいいんだ。
「・・・食べる気、ないでしょ?」
「!」
「食べなさい。もう、なんでも食べないといけない年なんだよ?」
「ですが、パンが好きなものは好きなのです!」
「なら、今日はすべての料理に手を付けること。一口でもいい。わかった?」
「・・・わかりました」
「よし、いい子だ」
私、いくつなのかわかんないけど、いい子って言われる年ではないはず・・・
とりあえず、スープを食べてみる。
・・・おいしい。これ、絶対パンにあう!
次にサラダ。
・・・これは茎が固くて苦い。好きではないかも。
次にポテト。
・・・ほくほくでおいしい。
最後に紅茶を飲む。
・・・なんか、違うな。
えっと・・・挨拶、ないのかな?
「エルザ様、食後の挨拶はありません。そのまま部屋へ帰ります」
また、サヤが小さな声で言ってくれた。
私は席を立った。
もちろん、朝食はまだ残っている。
・・・パンとスープ以外。
「エルザ、スープ、全部飲めたんだ」
「・・・今日のスープはパンにとてもあっていたので」
「後で、料理長に伝えておくよ」
「・・・はい。では、失礼します」
「うん。じゃあ、夕食の時に」
「はい」
私はサヤに付き添われて、部屋に戻る。
夕食も、お兄様と一緒なのか。
楽しいけど、緊張する。
あと・・・ちょっと怖い。
なりきれてなかったら、一番にこの人にばれそうだから。