第一章 (2) お兄様との対面
ドレスに着替えた私は、サヤに付き添われて、リビングルームへと急いだ。
お兄さん、どんな人かな?
楽しみな気持がある。
・・・もしかしたら、前の私にはお兄さんはいなかったのかもしれないな。
ドアの前に立って、ドアを開けようとして、止まる。
あれ、当主をしてくれているのだから、私より偉いよね。
なら、ノックしてから入らないといけないよね。
・・・ノックって、何回だっけ?
「どうかなさいましたか?」
「・・・ノックの回数って、何回だったかしら?」
「ノックは三回です。そのあと、すぐに入っていただいて大丈夫です。
あと、ノックについては、忘れていらっしゃるようなので、くわしくは食後に教えさせていただきます。」
「・・・わかったわ」
コンコンコン
私はサヤに言われた通りに中に入った。
中には若い男の人が座っていた。
・・・20歳くらいかな?
「おはよう、エルザ」
「おはようございます・・・お、お兄様」
「お兄様でもいいけど、ジークと呼んでもいいと、いつも言ってるよね?」
いつも?
もしかして、これ、転生?
それなら、私はなりきるしかないじゃない!
いつも、お兄様は名前で呼んでいいと言っている。
それなら・・・
「はい。ですが私のお兄様はただ一人ですので、お兄様と呼ばせて頂きます」
そう言ってみた。
どう・・・・?
「はあ~。エルザらしいね。私はそんなエルザが好きだよ」
その言葉を聞いた瞬間、胸が痛くなった。
・・・どうして?前の私に、何かあったの?
「エルザ、どうした?」
「・・・え?」
「なんか今日は顔色が良くないし、いつもとなんとなく雰囲気が違う」
・・・ま、まさか、なりきれてないとか?
「ここは、サヤから説明させていただきます。エルザ様ですが、今日は私の名前と、ご当主様のおことを聞かれました」
「エルザ、やはりどこか悪いんじゃないか?」
「いえ、心配には及びません。ただ悪夢を見ただけですので」
「・・・本当に?」
「はい」
「わかった」
「有難うございます」
「サヤ」
「はい」
「明日も、報告してくれるか?」
「もちろんです」
・・・こうなったら、変なことは問えないし、間違えられない。
私、やっていけるかしら?
わからない。
でも・・・
とりあえず、なりきらないとね。