第一章 (1) 私はエルザ様
夢である少女と出会った。
でも、その少女は私が知ってる世界の人ではないくらい美しくて、かわいい、ピンクのドレスを着た女の子だった。
『あなたは、殺されて、死んだわ』
この子、かわいいのに、こんなこと言うんだ。
私は、殺されて、死んだ。
へ~、そうですか。
『でも、あなたは次の人生を生きるの。あなたの生きれる場所はあるわ。今度こそ、幸せになりなさい』
ちょっと待って。どういうこと?
私、生きたいなんて言ってないわ。
そう言おうとした途端、不思議と意識が遠のいた。
「・・・エルザ様、エルザ様、エルザ様」
・・・誰よ。
私は・・・
あれ、誰だっけ?
もしかして、私の事、呼んでる?
「エルザ様、おはようございます」
私は、エルザ様らしい。
なんか、なじみがないのはどうしてなの?
「今日の予定、覚えておられますか?」
予定?
何もわからない。
「・・・ごめんなさい。覚えてないです」
「そうですか。エルザ様にしては珍しいですね。今日の予定は後でお伝えします。とりあえず今から朝食へ行きましょう」
朝食・・・
「ねえ」
「はい、いかがなさいましたか?」
「・・・お名前、度忘れしてしまったようなの。教えて頂けますか?」
「はい。サヤと言います」
「サヤ。いい名前ね」
「・・・エルザ様、大丈夫ですか?」
「どうして?」
「予定も、私の名前まで覚えていないなんて、今までにありませんでしたし、どこか具合の悪いところでもありますか?」
「いえ、悪い夢、見たのよ。大丈夫よ」
「そうですか。念のため、ご当主様に伝えておきますね」
「ご当主様って、誰ですか?」
「・・・エルザ様のお兄様です」
「・・・」
「・・・とりあえず、着替えましょう」
「はい」
「もうご当主様はリビングルームにいらっしゃっています。急ぎましょう」
私はそう言われ、すぐに着替える準備にかかったのだった。
私はエルザ様らしい。
お兄さんがいて、当主をしている。
私の世話をしてくれる人は、サヤという。
服やベッドはなじみがある。
散々な夢、見たわ。
夢・・・
なんか、女の子が言ってたな。
前の、記憶がないのも、『エルザ様』になじみがないのも、この世界に来たばっかだからなんだ。
服もベッドもなじみがあるってことは、前の私も、お姫様だったのかもな。