幕間(1) 僕と父と母の会話 By ジーク
「今日はお疲れのご様子です。お早めに体を休めて下さい」
そういって、エルザは部屋へと戻っていった。
僕はそれを確認して、電話をかける。
「もしもし」
『どうだった?』
「許可、だそうです」
『・・・』
「お父様?」
『いや、今になって、また怖くなっている。母もそうだ』
「お母様も・・・」
『まあ、さすがにエルザも18歳だ。私たちもそろそろ手を離さねばと思ってはいるが、難しい』
「・・・お父様、もう一つご報告が」
『なんだい?』
「今日、エルザは三食とも、すべての料理、一口は口にしました」
『それは、本当かな?』
「はい。何なら料理長のメイスンとも、親しくなっているようです」
『エルザは、私たちをどう思っているのだろうか?』
「・・・」
『母とかわろう』
・・・私たちを、どう思っているのか、か。
『もしもし、ジーク?』
「はい」
『さっき、お父さんがいろいろ言ってたけどね、私は今のままで大丈夫だと思うわ』
「え?」
『手を放す必要はないと思うの。あの子を私たちと一緒にいさせてあげられなかったのは、すべて、お父さんの、私のせいよ。だからね、手を放してしまったら、あの子のみかたは本当にいなくなってしまう』
「・・・」
『エルザに成長の兆しが見えてうれしいわ。あなたにも、迷惑をかけているわね』
「お母様、僕は・・・」
『今度、そちらに行くわ。エルザにも伝えておいてくれる?』
「もちろんです!」
『・・・ジーク、甘えなさい』
「・・・?」
『最近、敬語が当たり前になっているけれど、いつから私たちに敬語を使うようになったの?エルザにもそうなの?』
「・・・」
あれ、いつからだっけ・・・
『私たちは家族。敬語も、遠慮もなしよ』
「うん」
『それでよし。おやすみなさい。早く寝るのよ?』
「わかってます」
僕は、疲れているのか。
いつから敬語になったかって、あの時だ。
あいつが、裏切ったとき。
あの時、僕はエルザを守らなきゃいけないと思った。
いろんな悪い奴から。
でも、僕には自信がなかった。
お父様とお母様でできなかったものを、僕が守れるなんて、できない。
そう、思ってた。
でも、お父様が僕にエルザを任せた。
そこで気が付いたんだ。
僕は、この人たちと普通に接していたら、甘えてしまう。
自信がないって片付ける。
だから、距離を取るために、敬語を使うことにした。
「エルザは、僕たちをどう思っているのか、知りたいのは、僕も一緒だよ」
独り言を言ってみる。
「執事を雇うなんて、僕も怖い。最悪、また、エルザが傷つく」
エルザも、前より、大きくなった。大人になった。
でも、だからこそ、しんどいはずだ。
傷が、深くなるはずだ。
「早く寝ることなんて、できない」
僕は机で資料にサインをする。
・・・僕は、エルザの笑顔が好きなんだ。




