第六章(22) 両親の思いとエルザの気づき
お母様の話は、さっきまでお兄様に話していた、という内容だった。
「気を遣う人・・・」
「そう。気を遣う人を減らしてみるようにすると、友が増える。そう、これはアドバイスよ。軽く流してくれればいいわ」
「ですが・・・」
「エルザにはやんわりと話すように、と、ジークは言っていたんだが、結局そのまま話してしまったな」
「そうね」
「どうして、お兄様はそんなことを?」
「エルザには僕たちの入れない世界があって、こちらの世界が入り過ぎちゃダメなんじゃないかって」
「え・・・」
「エルザ、そんなことはいいのよ。ただ、私達はあなたたちのことを、大切な人だと、思っているから・・・」
「お母様・・・」
「出来ればでいいから、少しずつでいいから、私達にも敬語を使うのを減らしていってほしい・・・なんて」
その言葉からは、お母様の思いがひしひしと伝わってきた。
私はお父様とお母様に気を遣っていた。それは確かだ。
敬意を示さなければいけないと思っていただけだった。
でも、それは敬意としてではなく、他の意味で伝わってしまった。
「少し私のお願いまで話してしまったわね。後半は忘れてくれていいわ」
「・・・忘れません」
「え・・・」
「今までごめんなさい。気を遣っているつもりはなくて、ただ、敬語を使うことが一番の敬意を示せると思っていただけなの。ごめんなさい」
「いいのよ。謝らないで」
「でも、これからは気を遣わないようにするね!それがお父様とお母様のお願いなんでしょ?」
私、まだ、エルザの両親を、両親として近くに感じたことはなかったのでは無いかと思う。
私にとって両親は、柚紀の母と父だ。
だから、距離が生まれてしまったのかもしれない。
多分、お母様もお父様も、そのことはお兄様から聞いているだろうし、分かっているのだろう。
それでも、娘は娘だから、気は遣ってほしくない。
そんな当たり前のことに、私は今まで気づけなかった。
ちゃんと、エルザとして、両親に感謝しなけれはならない。感謝したい。
「ええ。でも、決して無理はしないで」
「うん」
「エルザ、今までごめんなさい。これからもよろしく」
「本当にすまなかった。私達のせいで、エルザには辛い思いをさせてしまった」
「もう、謝らないでください。それに、私はあまり子供の頃の話は覚えていません。覚えていることはすべて、幸せな思い出ばかりです」
「エルザ・・・」
私の言葉に両親は涙を目に浮かべながら、微笑むのだった。




