第六章(21) 図書館での思い出を思い出す
私は図書館で本を手に取りながらも、全く読んでいなかった。
何をしているかというと、思い出していた。
始めに、フェイが来た時のことを。
フェイと、屋敷案内といって、サヤに案内してもらって、私もフェイと同じく案内してもらったこと。
懐かしいな・・・・
あれからまだそんなに経ってないのに。
あの時、律が本を私に見せてきてた。
あの時も変だと思ったけど、嘘がほんとに上手で、気が付かなかったな。
私の中で、エルザと柚紀がごちゃ混ぜになってた。
あの時は柚紀の方が強かったのかもしれない。
「・・・柚紀」
「わ!」
急に声をかけられて、驚いた。
「そんな驚くか?」
今まで思い出(?)の中にいて気が付かなかったし、思い出していた本人が急に隣にいた、なんて、驚くに決まってる。
「・・・うん」
「本が進んでないからさ。何してるのかな~って」
「・・・思い出してた」
「何を?」
「フェイが私に小説を見せてきた時の事」
「・・・思い出さないで。僕は僕であの時必死だったんだ。エルザが柚紀かどうか確かめるために」
「わかってるよ。でも、嘘が上手だな~ってね」
「しっかり覚えてるんだな」
「あの時私がどれだけ混乱したと思ってるの!忘れられないわ!あと、気になったのだけど、もし柚紀とエルザ様が別人だったらどうするつもりだったのかな、って」
「別人だった時か・・・考えてなかった」
「・・・そう。複雑な心境だわ」
「ここには、あの本、ないんだな。あったら律として本を渡してあげるのに」
「嬉しい!・・・ねえ、記憶消そうとしてない?消さないでよ。あれも律だもん!」
「・・・まあ、消さないっていうなら消さなくていい。忘れられるのが、一番怖いから」
「そうだね」
次に私が気が付いたとき、ベットの上にいて、傍にはにやけ顔の両親がいた。
「え!私、どうしたの?サヤ!」
驚いてサヤを呼ぶと、サヤはドアを開けて入ってきた。
「サヤ、私、どうしたの?」
「エルザ様は図書館でお休みになられました。旦那様と奥様、当主様がいらしたときに起こしさしあげようと思ったのですが、お三方に止められてしまいまして・・・」
「え!そうだっけ・・・」
「そうよ。エルザの寝顔、あの頃よりもかわいく思えるわ!」
「あははは・・・・あ、そういえば、り、フェイは?」
お母様の発言を軽くスルーして、気になったことを聞いた。
「フェイくんなら、ジークと一緒さ。僕たちが図書館に行ったときにフェイくんは僕たちに気づいて目を覚ましたんだがね、エルザは起きなくて、そのままフェイくんにここまで運んでもらったよ。そのあとジークがフェイくんを誘っていたからどこかで話してるんじゃないかな?」
「そうですか」
律とお兄様は、仲が良さそうなのだ。私の知らないうちに、仲良くなっている。
お兄様にも、話したいことがあったのかもしれない。
「エルザ、話があるの。いい?」
「はい」
お母様が話したいことはまだあるのだろう。
内容がどんなことであれ、まずは話を聞こうと思った。
今回の連載で100部となりました。
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