第一章 (9) お話
私とサヤはお兄様の部屋の前に来ていた。
「エルザ様、私はここより中に入ることはできません」
「・・・どうして?」
「規則ですから」
「でも・・・」
「大丈夫です。当主様とお話ししてくるだけですよ」
「・・・わかったわ」
コンコンコン
「エルザか?」
「はい」
「入っていいよ」
「失礼いたします」
「早いね」
「ええ。すぐに、と言ったので」
「話を始めよう」
「・・・はい」
「そんなに緊張しなくてもいいよ」
「早く、始めて頂けますか?」
「エルザに執事を付けたい」
「・・・はい?」
あれ・・・社交場に行く話じゃない?
「今までエルザには女中しか付けていなかった。しかし、今後、男性と全く関わらないなんてことはない。そのために、家族以外の男性に慣れてもらおうと思って、執事をエルザに付けるという結論になった」
「執事・・・」
「執事についてはお母様が選んでいる。エルザの許可が下りれば来週にでもこっちに来てもらう。どうかな?」
「・・・お兄様、女中はどうなるのですか?」
「ああ、サヤのことかな?サヤには今のままいてもらうよ。サヤがいないと困るのは僕たちも同じだし、僕たちの大切なエルザをそうそう新入りに任せるわけないからね」
・・・お兄様。
「わかりました。皆様が私のために考えてくれたことですもの。異論はありません」
「そっか。サヤがいるならいいと」
「・・・そんなことは言ってないでしょう?」
「サヤが好きなのは昔から変わらないね」
「・・・」
「何か要望はあるかな?」
「・・・執事さんが私についたとしても、サヤとの時間を多くとっていただけますか?」
「わかったよ。今日は時間を取ってくれてありがとう」
「いえ」
お兄様が部屋のとあを開けたので、私は自分の部屋に帰ることにした。
あ・・・
「あの、お兄様!」
「?」
「今日はお疲れのご様子です。お早めに体を休めて下さい」
「・・・」
「では」
・・・恥ずかしい。
「エルザ様、お話の内容を伺っても?」
「執事を私に付けていいかというものだったわ」
「執事ですか。私はどうなるのでしょう?」
「サヤは今のままよ!」
「確認されたのですか?」
「・・・うん」
「有難うございます」
「別に・・・」
「エルザ様はかわいいです」
「え?」
「私はエルザ様にこそ早く休んで頂きたいのです。一日、いろいろあったのでお疲れでしょう?」
「まあ」
私はすぐにドレスから寝間着に着替えさせられてしまった。
「おやすみなさいませ」
「おやすみ」
こうして、私のよくわからない世界での一日目が終わった。




