解放Ⅰ
『健康食品店トワイライト』の閉店時刻は夜の七時だ。周囲の店に比べると少し早いが、そもそもこの店にふらりと立ち寄るお客は少ない。郵送でのやり取りが多いからだ。
時計の針が七時を指したことを確認して、俺は店の入口へ向かう。ドアに閉店の札を掛けるためだ。だが、それよりも先に店の扉が開かれて、見知った顔がひょっこり顔を出した。
「京弥さん、お店はもう終わりですか?」
「ああ。今から閉めようと思っていたんだ。ドアの札をcloseに変えてもらえるか?」
「分かりました」
頷くと、霞はその場でくるりと身を翻した。そして、慣れた様子でドアノブに掛けられたopenの札をひっくり返す。
一緒に夕食を食べるようになってから、彼女がこの時間に顔を出すことは日課になっていた。住居と繋がっている店の奥からではなく、わざわざ店の入口から入ってくるのは、残っていたお客に店員と間違えられたことがあったからだ。
「なんだか、すっかり寒くなりましたね。そろそろお鍋の季節でしょうか」
暗くなった外を見て、霞は少し背を丸める。まだ真冬とは言い難い時期だが、寒がりの彼女にはこたえるらしい。すでにマフラーを巻いている霞だが、街中ではまだまだ少数派だ。
「それは楽しみだな。それじゃ――霞?」
いまだに半開きのドアを見て、俺は首を傾げた。こちらからでは彼女の後ろ姿しか見えないが、外にある何かを見つめているように思える。
「どうした?」
霞の真後ろに立つと、彼女が見ている方向へ視線を向ける。
「……ルーカスさん?」
そこに立っていたのは、師匠の戦友であり英国の魔術師でもあるルーカスさんだった。目が合うと、彼はにっこりと微笑む。
「やあ、京弥。そして美しいお嬢さん。よければ少し時間をもらえないかね?」
「ええ、構いませんが……」
突然の申し出だが、断る理由もない。霞に視線で問いかけると、彼女はそっと頷いた。
「お仕事の話なら、私は外したほうがよさそうですね」
「――よかったらお嬢さんもご一緒に如何かな?」
「え?」
ルーカスさんの予想外の誘いに、俺と霞の声が唱和する。師匠と霞に接点はないため、不思議な申出に思えたからだ。
「京弥が世話になっているようだからね。それに、妖怪サイドの意見を聞きたい案件もある」
その補足に思わず霞と顔を見合わせるが、彼女の判断は早かった。
「はい、私でよければ」
そう答える姿は凛としていて、ホライゾンカフェで働いている時の霞を思い出させた。見ず知らずの相手ということで、そっちのモードに切り替わったのだろう。
「立ち話もなんですから、店内へどうぞ」
そうして二人を店へ招き入れると、小さな丸テーブルへ案内する。霞がさっと追加の椅子を持ってきてくれたため、俺たちは机を囲むように座り込んだ。
「さて……突然すまなかった。実は気になる情報を掴んでね」
霞と初対面の挨拶を交わしたルーカスさんは、早々に話を切り出した。
「―――君たちを襲った神山家の跡取りが失踪したらしい」
「え?」
思いも寄らない展開に、俺は間の抜けた声を上げた。八岐大蛇の血を濃く受け継いだ少年の顔を思い出すうちに、自然と渋い表情が浮かぶ。
「そんな……」
見れば霞もショックを受けているようだった。襲撃された時のことを思い出しているのだろう。
「たしか、あの少年は謹慎していたんですよね?」
「そのようだ。だが、所詮は神山家内部の話だからね。その実態がどうだったかは知りようもない。そして、あの一族には厄介な特性がある」
「『執着』のことですか?」
そう問いかけると、ルーカスさんは軽く驚いたようだった。俺がそこまでの情報を掴んでいるとは思っていなかったのだろう。
「その通りだ。かの少年は傲慢な性格だが、あれでも神山家の次期当主だからね。本来ならあのような暴挙には出られないはずだ」
「なるほど……」
「調べたところ、かの家は昔から直系血族の『執着』に振り回されているようだね。その特性がなければ、天原の台頭を許すこともなかっただろう」
「天原というと……陰陽四家の一つである天原家のことですか?」
霞への説明も兼ねて、俺は確認の言葉を投げた。天原家は陰陽四家の一つだが、研究者気質の強い一族で、権勢を振るうイメージはあまりない。とは言え、陰陽寮の研究開発部門などへの影響力は大きいと聞くから、侮ることはできない。
「その通りだよ。まあ、あの家は神山と違って内向きだからね。神山が意図的に取り立てたフシもあるが……」
そう告げて、ルーカスさんは卓上のコーヒーカップに口を付けた。そして、真剣な表情で俺と霞を交互に見つめる。
「なんにせよ、神山家の『執着』が君たちに危害を加える可能性は高い。入念に撃退準備をしておくべきだろう」
「そうですね……」
苦い声色で呟く。前回は何とか持ちこたえることができたが、次もそうとは限らない。なんとなく隣の霞へ視線を向けると、何かを察したのかルーカスさんが口を開いた。
「京弥、今のうちにお嬢さんだけでも逃がしておくかね? もしその気なら、私も協力は惜しまないよ」
「え……?」
その申し出に、霞が動揺した声を上げる。
「踏みにじられてからでは遅いからね。大切な人は先んじて守らなければ」
ルーカスさんは寂しそうに微笑む。魔物戦闘のスペシャリストだけに、彼の手からこぼれおちた命もたくさん見てきたのだろう。
「……そうかもしれませんね」
そう答える俺の口調もまた、苦い響きを隠しきれていなかった。安全のためとは言え、彼女がいない生活は上手く想像できない。
「でも、あれだけ大きな妖力なら遠くからでも分かりますよね? あの時は京弥さんが心配で近寄ってしまいましたけど、今度は避難しますから……」
「そうだな。むしろ目の届かない範囲にいるほうが心配になる」
彼女の言葉を幸いと、少し強引に結論付ける。すると、ルーカスさんはなんとも言えない表情でこちらを見ていた。ひょっとして真意を見抜かれたのだろうか。
「君たちが決めたことならば、それは構わないが……」
だが、ルーカスさんはそれ以上追及するつもりはないようだった。その代わりとでも言うように、彼はその表情を引き締める。
「あの少年は災害クラスの存在だ。本来であれば、魔力を持たない人々も含めて、避難勧告や捜索を行うべきだが……」
「一般人に魔術や妖怪の存在を明かすわけにはいきませんからね」
ルーカスさんの言葉を引き継ぐ。それは昔から続くルールであり、身を護る術でもあった。だが……。
「――そこだよ、京弥」
「え?」
なんのことか分からず、俺は目を瞬かせた。だが、ルーカスさんは真剣な面持ちで俺を見つめる。
「そもそも、そこがおかしいと思わないかね? 現代科学と矛盾する法則を扱うとはいえ、我々もこの世界の人間だ。こうも日陰者扱いされる必要があるのだろうか」
「それは……」
「そうでなければ、襲撃の件も大っぴらに対処できたし、今回のようなことにもならなかったはずだ」
俺が戸惑っているうちに、ルーカスさんは言葉を続ける。
「英国も似たようなものだが、日本よりはマシだよ。この国は我々を蔑ろにしすぎている」
その思いは俺にもよく分かった。この錬金術工房は健康食品店として無理やり帳簿を付けているし、術の行使にはまず人目を確認する必要がある。何も後ろ暗いことはないのに、俺たちはあらゆる場面で自重を強いられていた。だが、その理由は――。
「明治時代の初期に、大きな事件がありましたからね」
そう切り出すと、ルーカスさんは静かに頷いた。
「ああ、知っているとも。妖怪サイドと一般人が衝突して、大虐殺が起きたのだろう?」
「はい。地域によってはいくつもの村が消滅したようです。当初は妖力持ちが優勢でしたが、団結した人々には敵わなかった」
そして、理解できない力を恐れた人々によって、社会レベルで妖怪狩りが行われたのだ。政府組織であった陰陽寮が、非公式な存在に格下げになった理由の一端でもある。
「悲しい歴史だが……だからと言って、現状に甘んじる必要はない。今の陰陽寮はその役目を見失っている」
そう告げて、ルーカスさんは渋い表情を浮かべる。
「たとえば、自然発生する悪霊だ。本来なら陰陽寮が対処するべき案件だが、実際には民間に任せっきりだ。あまりに見ていられなくて、いくつかの発生スポットには結界を張らせてもらったよ」
「ああ、あの結界はルーカスさんが作り上げたものだったんですね」
その言葉で思い出す。以前に霞の同僚である水崎さんに案内してもらった公園。そこには、西洋式の魔術で組まれた悪霊迎撃用の結界が展開されていたのだ。
「被害を被るのは罪のない人々だからね。そういった部分に力を割くべきだというのに、彼らは上から我々をコントロールすることしか見えなくなっている」
ルーカスさんは力強く告げると、まっすぐ俺の目を見た。
「京弥、手を貸してくれないか。我々が堂々と生きるために。そして、陰陽寮にいいように利用されないために」
「手を貸す……?」
思いもよらない言葉を受けて、俺はオウム返しに呟いた。すると、ルーカスさんは熱のこもった様子で身を乗り出す。
「ああ。京弥は優秀な錬金術師だからね。君のバックアップがあれば非常に心強い」
「バックアップ……」
その回答に俺は黙り込んだ。ルーカスさんの熱量は伝わってきたが、何をするのかがピンと来なかったからだ。
「具体的には何をするつもりですか?」
「手始めに、国防や治安維持に妖怪を組み込む。日陰者としてではなく、日の当たる場所で、スペシャリストとして活躍できる環境を作るべきだからね。そこから舞台を民間へ広げて、種族特性を生かせる仕事を開拓していくつもりだ」
問いかけに即答して、ルーカスさんは店内を見回す。
「他にも考えているが、特に京弥のバックアップが必要なのはその辺りだ。妖怪の有用性を示すためには、能力の底上げが必要だからね」
「なるほど……これまでとは逆の方向性ですね」
俺は言葉を選びながら口を開く。この錬金術工房の第一目的は、妖力や種族特性の暴走を抑えて人間社会に溶け込むことだ。だが、ルーカスさんが求めているものは強化薬であり、今は限られた相手にしか卸していないものだ。
「京弥が懸念する気持ちは分かる。だが、日本各地に根を張っている陰陽寮に対抗するには、一歩踏み出すしかない。……ウィリアムのような犠牲者をこれ以上出すわけにはいかぬ」
「……!」
師匠の名前に心が揺れる。師匠にしても、妖力や特性を暴走させて捕まった人々にしても、真実を公にできていれば結果は違っていたかもしれない。そんな思いが頭に渦巻く。
「……っ」
思考を煮詰めすぎたせいか、だんだん頭がクラクラしてくる。不思議な酩酊感を抱えて、俺はルーカスさんの言葉を何度も検討していた。
「京弥さん、大丈夫ですか?」
――と、俺は霞の言葉ではっと我に返った。ふと気付けば、彼女が心配そうに俺を見つめている。
「ああ、少し考えすぎたみたいだ」
苦笑とともに答えれば、彼女はほっとしたように息を吐いた。
「ふむ……ちょうどよかった。霞さん、君はこの件についてどう思うかな?」
そう切り出して、ルーカスさんは霞のほうを向いた。一般の妖力持ちの意見も聞きたいと言っていたのはこのことだったのだろう。彼は興味深そうに霞を見つめていた。
「妖力持ちの存在を明かすことには賛成です。ただ、人々の反応を見ながら、慎重に時間をかけて進めていくべきだと思います」
問われた霞は、意外なほどあっさりと答えを返した。その様子は今思いついたというわけではなく、しっかり考えた末の回答のように感じられる。
「ふむ……なるほど」
霞の即答を受けて、ルーカスさんは考え込むように目を細めた。そして、今度は俺へと視線を向ける。
「問題は、それを行うべき陰陽寮の体たらくだ。あの組織にそんな大志はあるまい。それはウィリアムの一件からも明らかだ」
苦々しい口調で言い切って、ルーカスさんは言葉を続けた。
「幸いにして、私は多くの賛同者を得ている。君たちが神山の跡継ぎに襲撃された場合は、力も人も貸すことができるだろう。それに情報もね」
それは魅力的な提案だった。ルーカスさんは屈指の実力者だし、今の俺にとって情報は喉から手が出るほど欲しいものだ。
「それは……」
ルーカスさんの話に乗るかどうか、俺は判断しかねていた。事は錬金術工房の行く末どころか、世界の行く末すら左右しかねない重大な事案だ。
そして。思いがけない難題に長らく沈黙していた俺は、やがて口を開いた。
「私たちの存在を明かすという目的には賛同します。ですが……軍事利用を足掛かりにするという手段は危険だと思います」
そうなれば、妖怪は危険な存在だという認識を世間一般に与えかねない。下手をすればかつての『妖怪狩り』が再燃する可能性すらあった。
「軍事目的でなくても、妖怪の特性を生かすことで成果を挙げられる分野はあるはずです」
「私も初めはそう考えたよ。だが、他の分野で挙げられる成果には限界があるからね。それに、陰陽寮からの圧力で、種族特性を生かした研究や成果を隠蔽される恐れもある。
世間にバレない暗殺手段として、術師や妖怪を利用している政治家たちも隠蔽に一役買うだろう」
「陰陽寮がそこまで……?」
俺は首を傾げた。悪辣さという意味でも、権限という意味でもピンと来ない気がしたのだ。たしかに鼻持ちならない輩もいたが……。
「京弥。陰陽寮はウィリアムをあんな目に遭わせた組織だ。分かっているね?」
考え込む俺の目を、ルーカスさんが訝しむように覗き込んでくる。だが――。
「陰陽寮も一枚岩ではありませんからね。すべてが信用できないわけではないと思っています」
答えた俺は、自分でその言葉に驚く。ふと脳裏に浮かんだのは、最近知り合った賀茂成明や、あの事件に居合わせたという高嶺の顔だ。彼らの人となりが、先刻の俺の言葉に繋がったのだろう。
「ルーカスさん。せっかくのお誘いですが、少し考えさせてください。もちろん陰陽寮や他の人間にこの話をするつもりはありません」
俺は正直な思いを口にした。もっと様々な視点から考えなければ、重要な何かを見落としてしまう。そんな気がしたからだ。
「……日本人の『考えさせてください』は断り文句だったね?」
「いえ、そういうわけでは」
俺が弁解しようとすると、ルーカスさんは陽気な笑い声を上げた。
「冗談だよ。気が済むまで考えてくれればいい。私も焦って話を進めすぎたようだ」
そう告げると、彼はコーヒーカップをくいっと傾けて中身を飲み干した。そして、俺と霞の顔を眺めた後で、ゆっくり立ち上がる。
「突然訪問して悪かったね。京弥、いい返事を期待しているよ」
笑顔でそう告げると、ルーカスさんは霞に視線を向けた。
「お嬢さんもすまなかったね。くれぐれも神山家には注意してほしい」
「はい。ご心配いただいてありがとうございます」
「それでは、これで失礼するよ」
机に置いていた帽子を手に取って、ルーカスさんはくるりと身を翻した。カランカランと鳴子が響き、後に残された俺と霞は顔を見合わせる。
「内容の濃い話だったな。すまない、ややこしい話に付き合わせた」
「そんなことはありません。とても興味深いお話でした。ルーカスさんも色々考えた末の行動でしょうし」
「そうだな……」
俺はルーカスさんの提案を思い返す。まだ日本へ来てそう日は経っていないはずだが、すでに着々と準備を進めているようだった。あるいは、英国にいた頃から手を回していたのだろうか。
「そう言えば、霞の意見には驚いたよ」
「え?」
「妖力持ちの存在を明かすことには賛成だが、人々の反応を見ながら、慎重に時間をかけて進めていくべきだ。……そう言っていただろう?」
「はい、そう言えば……」
霞は思い出したように肯定する。彼女があれだけはっきりした意見を持っていたのは意外だったが、大いに参考になったからな。
「おかげで、俺の方針を再確認することができた。ありがとう」
「そんなこと――いえ、京弥さんのお役に立ったなら嬉しいです」
謙遜しかけた霞は、途中でにっこりと微笑んだ。だが、その笑顔がふっと曇る。その理由はなんとなく分かった。
「まさか、神山家の次期当主が脱走するとはな」
やはりそのことを気にしていたのだろう。話題を振れば、霞はすぐに話に乗ってきた。
「はい……また京弥さんを襲ってこないか心配です」
「俺は大丈夫だ。戦うのはともかく、逃げるだけならいくらでも手がある」
俺は自信を持って請け合う。相手は天災クラスの実力者だが、以前に戦った感触からすると、膨大な妖力にものを言わせた力技一辺倒のようだからな。
「今のうちに仕掛けを作っておくさ。むしろ、心配なのは霞だ」
「私、ですか?」
霞はきょとんとした顔で問い返してくる。以前の戦闘では怖い思いをしたはずだが、意外とタフなのかもしれない。
「あの戦いで俺が霞を奪い返したからな。俺にとって大切な人間だと知った以上、霞のほうを狙う可能性だってある」
あの少年が人質などという搦め手を考えるかどうかは分からないが、警戒するに越したことはない。
と。そう伝えたつもりだったのだが。
「あ……その、ありがとうございます」
なぜか霞の回答が噛み合わない。それどころか顔が真っ赤だ。こういう時の彼女は大抵照れているのだが……。
「――あ」
その理由を考えていた俺は、さっきの自分の言葉を思い出す。今度はこっちが照れる番だった。
「霞を大切に思っていることは事実だからな」
今さら誤魔化すようなことでもないと、俺は開き直って宣言した。すると、彼女の頬がさらに上気する。
「京弥さん……」
まるで蒸気でも吹き出しそうな霞は、そう呟くなり沈黙した。照れが限界を超えたらしい。
「……」
「……」
それから数分待ってみたが、彼女が回復する様子はない。どうにも照れくさくなった俺は、新たな話題を振ることにした。
「それで、だ。霞の安全のためにできることはしておきたい。もちろん、護身や逃亡に役立つ錬成薬なんかは大前提だが……」
「他にも何かあるんですか?」
俺の言葉を受けて、霞は不思議そうに目を瞬かせた。
「ほら、前に霊脈で解呪実験をした時のことがあっただろう? その時に、霞から妖力が立ち昇ったことがあった」
「そう言えば……」
すっかり忘れていたようで、彼女は自分の身体をまじまじと見つめる。
「神山の跡取りに比肩するほどじゃないだろうが、あの妖力を自在に引き出すことができれば、自衛くらいはできるかもしれない」
「私に妖力が……?」
思いがけない提案だったのだろう。霞は今もピンと来ていないようだった。
「もちろん、戦えと言ってるわけじゃない。むしろ戦わずに逃げてほしい。だからこそ、そのために役立ちそうなことはしておきたい」
そう説明すれば、彼女は納得した様子で目を伏せた。
「京弥さん、ありがとうございます……私に凄い妖力があるか分かりませんけど、頑張ってみますね」
こちらを見上げると、彼女は決意した瞳で微笑んだ。




