4三人目の幼馴染
幼馴染厨と言われてもめげない!
誤字脱字報告ありがとうございます。(__)
昨日、真白から『あ~ん』されてから、どうも真白のぶっ壊れキャラが学校中に拡散したらしい。悪いが真白の人気が下がるといいなと思っていたら、そうはならなかった様だ。真白は『真のクーデレ』という新たな称号を得たらしい。ちなみに以前は『氷の美少女』だったらしい。まあ、喋らないとツンツンしていて、クールだから、わからなくも無いが、壊れると妄想と現実の区別が出来なくなる、病院へ行った方がいい子だ。しかし、美少女は得である、そんな人として重大な故障を抱えておきながら、『真のクーデレ』という進化を成し遂げた事になっているそうだ。これ、大和からの情報。
空音とは別れてから一度も喋っていない。自分でも情けないが、未だ未練が残っている。空音と喋りたいという気持ちもあるが、万が一拒絶されたら、死んでしまいたくなる。だから、話しかけない様にしている。ホント未練たらしい男だ、僕は。時々空音と目線が合うがどちらからともなく、目線を逸らしてしまう。昨日の真白のぶっ壊れ事件以降、安心したのか、空音と藤堂はみんなの前で会う様になった。本来ビッグイベントなんだが、真白のおかげでノーマークだ。ホント、僕って空音に散々尽くしてきたのに、別れてからも尽くす事になるとは思わなかった。
そんな僕に更なる刺客がやってくるとは思わなかった。正直、今はそっとしておいて欲しい。傷心旅行で、北の国に行きたい位なのに......
今日のお昼は大和と購買の焼きそばパンを食べながら、趣味のガ〇ダムの話で盛り上がる予定だ。真白には今日のお昼は駄目と釘を刺しておいた。昨日の失態を上げ連ねてしぶしぶ了承させた。その代わり明日は一緒にお昼食べようと言ったら、泣いて喜んだ。これで、脳が壊れてなければ完璧なんだけどな。その後は隔日で真白と一緒にご飯を食べる事にした。これでも妥協したつもりなんだ。真白の気持ちは嬉しいけど、周りの男子の殺意が半端なくて怖い。それに空音といつも一緒にお昼を食べてたから大和と話す事ができなかった。僕が友達少ないのは僕の性格のせいじゃない! 真白や空音みたいな美少女といつも一緒だと男の友達どうしても少なくなるの当然だろ? だから、友達を増やす為にも、お昼休みを男の友達とすごしたかった。
「それで、やっぱりガン〇ムは一番最初の奴がいいと思うんだよ。僕は」
「そうか? あんな作画崩壊した絵のアニメいいか?」
「絵じゃない! あの作品が全ての始まりなんだよ!」
そう、僕と大和が仲がいいのはガン〇ムが原因だ。ガン〇ムでもかなり古いこの辺の話ができるのは僕と大和位だ。だから、自然に親友になった。大和と親友になるまで、男の友達と遊びに行った事が無いと白状したら、大和はびっくりしていた。美少女の幼馴染の弊害は結構大きいのだ。ほんの数日前までそんな事露ほどにも思ってなかったけど......
「やっぱり、ゼータガン〇ムの曲線は素晴らしいな!」
「ああ、それは僕も同意する」
僕も大和もプラモデルを作る趣味があり、今日はゼータガン〇ムのプラモデルを持って来ていた。僕は当然、ザ〇だ。僕の趣味は凄く渋いのだ。しかし、そんな男同士の熱い語らいに釘を刺す奴、いや女の子が現れた。
「貴方達! ここは学校よ! そんな物持ち込んだら駄目でしょ!」
気がつくとそこには仁王立ちの風紀委員の、ええと誰だっけ?
「ええ~っと、風紀委員の......」
「宗形悠真君、海老名花蓮です」
海老名は何故か名前を強調したが、僕も何故か既知感を感じた。昔、こんな事があった様な......
「没収!?」
「「勘弁してください! お代官様!」」
やはり、既知感があった。主に、大和が海老名からプラモを死守しようとしていたが、僕は思わず呟いてしまった。
「あれ? もしかしたら、第一小学校の時の海老名か?」
ぴたりと海老名の動きが止まった。さっきから、大和とプラモを奪いあい、かなり逼迫していたが、突然、海老名の手が止まった。
「お、覚えててくれてたの?」
海老名は僕の方を向くとぱーと笑顔になった。彼女は小柄でボブの可愛らしい顔立ちだが、眼鏡であまりおしゃれに気を配るタイプの子じゃない。目立たない子だが、私欲からいつも風紀委員をしていた。一年生の時も、小学校の時も......
「うん、覚えてるよ。だって、僕のガン〇ム、10個は強奪されたよ」
「うん、仕方がないじゃ無い! 校則違反だし、ガン○厶は強奪されるものよ!」
「...... これだから、体制の犬は」
「言い過ぎじゃね? 悠馬?」
大和が思わず、呟いた。いや、大和、お前は知らないからそんな事を言えるんだ。この子、凄い腹黒だぞ。風紀委員をしているのも全て内申点や親や教師への受けを良くする為で、一方、結構悪い事してるぞ。小学校の時、空音がいじめられそうになって大変だったんだから。
そんな事を思っていると、海老名は突然、僕に近づいた。近い、近い、何なんだ? 耳元で海老名が喋る。 真白と違う香りがした。
「(空音と別れたんだよね? 真白の事もテイだって聞いたわ、だから私と、付き合わない? 私と付き合ったら、色々見逃してあげるわよ。Noだとどうなるかわかってるわよね?)」
脅しかよ! 脅しから始まる恋愛は聞いた事ないよ。この子マジなの? 気持ちは嬉しい.....いや、あんまり嬉しくないか? 真白の1/100位微妙。真白は幼馴染だし、脳が壊れる事を除けばいい子だ。
「いや、僕は眼鏡の子、好みじゃないから!」
「それ、思ってても言っちゃダメじゃないかそれ?」
「眼鏡に人権無いっていつもいってるよね!」
「そんなの聞いた事ないわよ!」
「悠馬、そんな事、言ってないよな? 一度も」
「……口には出して言ってなかったな」
「悠馬サイテー」
大和が罵るけど、空気読んで欲しいよ、今、恋愛なんて考えたくないし、ましてや、相手は天敵の風紀委員海老名だぞ? 大和も彼女いない歴=人生なだけあるなこいつ!
「……今、お前、ものすごく失礼なこと思っただろ?」
「え? どうして?」
「顔に出てるぞ」
え? マジ? 僕、そんなにわかり易い?
その後、僕が困った顔をすると、意外と海老名はあっさり引き下がった。その癖、ガン〇ムを強奪する事だけは忘れてなかった。海老名が去って、大和と二人取り残されると、
「なあ、悠馬、お前、何人幼馴染いるんだ?」
「幼馴染?」
「ああ、幼馴染みたいなもんだろ?」
そう言われると幼馴染かな。いや、幼馴染ぽい何かだな。その時はそれ程深刻に考えていなかった。海老名がそこまで本気とは思わなかったからだ。海老名は真白と空音が嫌いだった。だから、空音と別れた僕にちょっかいを出してきたんだと思った。単なる嫌がらせ的な物だと、しかし、そうではなかった。あくる朝、
「おはよう、悠馬君!」
はっ? 誰? 僕は思わずそう思った。あくる朝、登校してホームルームが始まる前に教室で最初に挨拶して来た女の子がいた。それが海老名だった。多分、海老名だ。えっ? 何故多分かって? それは、
「え、海老名だよな?」
「そうよ、何か文句ある?」
「いや、無いけど......」
「何か言う事無いの?」
「眼鏡外すと美人というベタな設定だったんだな」
「ベタって言うな!?」
驚いた。海老名は小柄で丸顔だったけど、その強気な性格とやぼったい眼鏡とやぼったいセンスのせいで、ちょっと可愛い位の女子という認識だったけど、凄い美少女だった。小柄で、愛らしい系だ。だけど、性格との乖離が著しい。
「うひゃぁうひゃあうひゃひゃなひゃ! 男達の目が集まって、気持ちいい!」
「......自分で言わない方がいいよ。美少女とか」
「そんな美少女だなんて......うふ、いいわね。自尊心が満たされるわね♡」
「海老名最低だね......」
「悠馬、あたし、自分に自信ついたから、何でも言う事聞いてあげる。悠馬あたしに何かしたい?」
「何かするって、どういう事?」
「例えばおっぱい揉みたいとか、パンツ見たいとか?」
「犯罪じゃん!」
「あたしは悠馬のいう事なら、何でも聞きくわ」
「嘘だね、言ったら、録音して即、通報、それで訴訟しない代わりに示談にする気だ」
「何で分かったの?」
「小学校の時に研究して、熱心に話してる処聞いてた」
「ちっ、記憶力いいな」
「危ない。危なく示談金を要求される処だった」
「...い、いや、別にお金目当てじゃないよ」
そういうと、海老名は何故か伏せ目がちに切なそうな顔になった。ハラリ、海老名の鞄から一枚の書類が落ちた。
「なんだこれ?」
「あ! それは見ちゃだめ!」
......婚姻届だった。既に名前が書いてあった。僕の名前と海老名の下の名前、花蓮と。
こうして僕は真白に続き、海老名にも言い寄られる様になった。だから、僕はしばらく恋したくないんだ。そっとしておいて欲しい。
「なあ、悠馬、お前の事殺してもいいか?」
「はあぁああ!?」
海老名とのやり取りを大和に聞かれた。大和は空音と付き合っていても気にしてなかったのに、いきなりなんで?
「いや、大和、頼むから許して、それに別に海老名とは何も.....ていうかなんで海老名にそんなに喰いつくんだ?」
「お前が羨ましいよ。海老名と幼馴染な上、好かれているのだなんて......」
「......大和」
僕は察した。大和は何度か海老名のプラモ強奪の被害にあっている、その最中に恋に落ちたのか? 大和はドMなんだろうか? いや、人の趣味をどうこう言ってはいけない。しかし、大和が海老名の事を好きらしい。それは僕にとっては困る。大和は僕の唯一の親友なんだ。
「悠馬、だから俺の為に死んでくれ!」
「やだよ、何言ってんの? 勘弁して」
こうして、空音と別れてから、他の幼馴染達がグイグイ来た。僕はまさか、あの子までグイグイ来るとは思わなかった。それはあまりにもあり得ない話だったのだから......
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