1幼馴染に振られた
この物語は第一話に胸糞成分が少し入っている不健全な癖が込み込みの恋愛覆盆ものです。苦手な方は御注意下さい。
今日、僕は失恋をした。相手は隣の家に住んでいる幼馴染 、僕と同じ高校二年生。
僕には幼馴染の恋人がいた。幼稚園から同じ中学、同じ高校へと示しあって進学した。中学まで僕は彼女を異性としては見ていなかった。いつも一緒にいたから......彼女は空気の様な存在。一緒に学校に登校して、一緒に下校して......毎朝僕を起こすのもベタだが彼女の仕事だった。
僕の名前は宗形悠真、彼女の名前は高崎空音。僕が彼女を唯の幼馴染としてでは無く、異性としてみる様になったのは中学の二年生の時からだ。中学校二年の頃まで、僕は彼女を異性として見ていなかったけど、中学二年の一学期のある日、僕は彼女の魅力に気がついた。背は女の子にしては高い方だろう、黒髪の綺麗な髪がトレードマークの、目が大きくて......幼馴染の僕からのひいき目を抜きにしても彼女は美少女だった。
だけど、告白したのは高校に入学してからの事だった。高校に入ったら、色々な事が変わった。それまで、空音が男子と話すのは僕位としかなかった。でも、何故か色々な男子に声をかけられた。あれ? 空音、もしかしてモテるの? なんて事に気がついて、焦って、意を決して、スマホで空音へLi〇eを入れた。
…昼休みに空音を屋上に呼び出す。わざわざ…
それは誰でも高校生なら誰でもドキドキしてしまうイベントだろう。だって空音とはいつも一緒に登校して、下校もする。わざわざ呼び出すなんて、告白イベントの香りしかしないだろ? 僕がソワソワするのも、まあ無理はないよな?
…は、はは、だから、僕があの時、屋上で空音と向かいあってた訳だけどね、じ、じ、自分でも驚くくらいお、お、おおお落ち着いてたんだ。だ、だ、だって、空音とは毎日会ってる訳だし、僕の方が1か月お兄さんな訳だし。お、お、お裁縫だって得意だし。保健体育の成績、中学の間、オールAだったし。
「えっ? 何かな悠真? 突然?」
「いや、ちゃんとした方がいいと思って」
「えっ? 何をちゃんと?」
僕は空音を見つめた。空音が真っすぐに僕を見返してきてくれる瞳があまりにも綺麗だったから。その目はおごりなんかじゃなくて期待している目。そんな目で見られると恥ずかしい。顔がにやけそうになっていたけど、でも、そこを必死でこらえた。
「やだ、悠真! 何をそんなに見てるの?」
「……ずっと、見ていた」
「……えっ?」
僕の胸はキュンとした。『ずーと見ていた』。その言葉の重さが自身にのしかかる。僕にとってこれ以上ない言葉。僕の空音への気持ちの全て。
「空音、好きだ。君と付き合いたい、彼氏彼女として、駄目かな?」
「……」
空音は沈黙してしまった。即答して欲しい。だけど、混乱しているのか、すぐに返してくれない。何か考え込んでいる。心にぐっと何かが来た。気がついたら、空音は泣いていた。
「どうしたんだ? 何で泣くんだ? 僕じゃ嫌なのか? すまない、君に負担かけたのかな?」
「……嬉しい」
僕を見上げながら、空音はふわりと笑った。
そして、濡れ続けた目も拭わずに言葉を綴った。
「……私もずっと好きだった」
もう、なんで空音はこんなに可愛いかな!? 僕まで泣けてきたよ! でも、嬉しい。こうして僕達は彼氏彼女の関係になった
だけど、そんなある日、それは起きた。僕と空音が下校を一緒にしない時なんて滅多にないの、なのに空音は、
「今日、真白にカラオケ誘われたんだ。今日は先に帰ってもらっていいかな?」
驚いた。空音が僕と下校しないなんて、風邪をひいて休んだ時位だった様な気がする。でも、空音と同じ幼馴染の真白が仲がいいのは知っていたし、そこまで束縛するつもりはない。それ位許さないと未来の旦那失格だよな!
「わかった。今日は一人で帰るよ。カラオケ楽しんでな!」
「うん、ありがとう。今度、悠真ともカラオケ行きたいな」
「うん、誘って、楽しみにしてるよ!」
でも、僕は下校途中にそこにはいる筈が無い人から声をかけられた。
「……悠馬? 今日は空音はどうしたの?」
えっ? って驚くしかない。だって、空音は真白と、今、僕に声をかけてくれた真白とカラオケに行っている筈なんだから。
動揺したけど、僕は空音を信じていた。そんな筈はない。真白と別れて気晴らしに趣味の中古レコードの店へ向かった。そして、途中僕は見てしまった。3か月前に転校してきたイケメン藤堂蓮と空音が手を繋いでデートしているところを......
みたくないものを。見てしまった。穏やかな笑みを浮かべて並んで歩く二人。手をつないだ空音の笑顔。あんな顔見た事なかった。初めて見た。恋する空音の顔を......
それから、しばらく空音はそのまま僕と付き合い続けた。だけど、やたらとスマホを気にする様になり、僕の話をちゃんと聞いてる? て、感じになった。
そして、2週間後、
「あのね? 悠馬…」
「え---? なに?」
そして、僕の幼馴染は告げた。
「私達、別れよう……」
「え?」
「悪いのは私なのはわかってる。全部……私が悪い……。でも、私、キチンとしたいから……」
「あ、ああ、察しはついてたよ」
僕は涙を流していた。空音、僕の彼女、僕の幼馴染。わかってはいた。だけど、僕の脳裏には子供の頃からの記憶が走馬灯の様に蘇った。子供の頃、「空音は悠馬のお嫁さんになる」そう言ってくれた。高校一年の時、僕は空音に告白をした。空音は泣いて喜んでくれた。付き合い初めて3ヶ月目の時、村祭りの帰り道、河原のあぜで初めてのキス。二人は将来を誓いあった。「何があっても一緒になろうね」空音はそう言ってくれた。それが、今、わずか3ヶ月前にあった転校生と恋する間柄になっている。僕とは17年も関わっているのに!
嫉妬、怒り、屈辱、僕の中にたくさんの負の感情が沸いた。
僕達の17年の歴史はこうして、たった一言で終わった。
よろしくお願いいたします。