第4話 あそこに置いてないぞ
みやこ「アクアパッツアァってさ」
しらいし「うん」
みやこ「なんでアクアパッツアァなんだろうね」
しらいし「そうだな」
みやこ「でもいいんだ。アクアパッツアァはみんなのもので、わたしのものじゃない。わたしだけのものじゃない。アクアパッツアァは差別なんてしないから」
しらいし「あーね」
みやこ「最初は私も戸惑ったよ。私のアクアパッツアァはどこにあるんだって。焦った。周りを見る限りみんな自分のアクアパッツアァをもってるみたいだったから。自分だけがもってないように見えたから。だから、私は人を傷つけてまで、アクアパッツアァを奪おうとした」
しらいし「注文すればよかったのに」
みやこ「でもそれじゃ満たされなかった。人のじゃ足りなかったんだ」
しらいし「人の料理勝手に食っておいて何言ってんだこいつ」
みやこ「自分のアクアパッツアァじゃないとだめだったんだ」
しらいし「金払えよ、他の人の分も」
みやこ「アクアパッツアァがアクアパッツアァであるように私も私じゃないといけなかったんだ。それをアクアパッツアァが教えてくれた。アクアパッツアァはみんなの中にあるんだって」
しらいし「食ったからな。腹の中だ」
みやこ「だからちょっとミラノ風ドリア食べに行かない?」
しらいし「なんかこう、鉄板かなんかでお前の顔をどつきまわしてやりたい」