3.
(今井め・・・)
…30分後。
昼休みが終わり、仕事に戻った実乃理は、市販薬を飲んだ事を、激しく後悔していた。
眠い。とにかく眠い。
午後の診療は、そこそこ混んでいるが、max状態までにはなっていない。
隣に座るもう一人の受け付け、白水さんが、時折心配そうにこちらを見ているのが、余計に恥ずかしい。
『市販薬を飲んで眠気に襲われてます』
…なんて絶対に言えないし、小さな個人病院とはいえ、受け付けは病院の顔だ。常に背筋を伸ばしてピシッと座っていなければならない。
しかし…それにしても、眠い。
隣に座る白水さんは、涼しい顔で対応している。
眠気を紛らわそうと、実乃理はこっそり、白水さんの人間観察をしてみた。
実乃理にとって白水さんは、座っている距離こそ近いが、遠い憧れの存在なのだ。
ほっそりして儚げな雰囲気。
さりげなくサイドでまとめた栗色の髪は、ゆるくウェーブがかかっている。
パチパチとまばたきをすると、風が起こりそうな長いまつげ。
毎日のように仕事で顔を合わせているものの、彼女のプライベートはほとんど知らなかった。
でも、あれだけの美人だ。きっと彼氏くらいいるだろう。
ああ、隣に座る、同じ受け付けでありながら、平凡な顔立ちの自分とは、雲泥の差だ。
「・・・ます。」
「は?」
「初診なんですが。お願いします。」
ふと気付くと、目の前に保険証が差し出されていた。
(しまった、ボーっとしていた!!)
初心者にお慈悲を!