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「ふ・・・ぶぇくしゅ!!」
実乃理は、思わず出たクシャミにハンカチを鼻に当てると、周囲に人の気配がない事を確認し、ズルズルと鼻をすすった。
「おい・・・なんだ、今の色気ねークシャミは。実家で飼ってるダックスフントかと思ったぞ。ホレ、これでも飲んどけ。」
実乃理は焦った。
(げ。見られた!!)
いつのまにか、背後に人が立っている。
同僚の、今井だった。
「いやいやいや・・・ありえないでしょ、市販薬とか。」
今井に差し出された市販のアレルギー薬を見て、実乃理は呆れてしまった。
「今井さん・・・ここ、耳鼻咽喉科ですよ?」
早乙女 実乃理 25歳。
現在、ここ、ふるかわ耳鼻咽喉科の受付で医療事務員として勤務し、今年で2年目になる。
一人暮らしなのに、何故か彼氏の一人もいないのは、干物だからか?枯れてるからか?