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百合展開にはならないことを先に言っておきます
とある高校のとある教室。そこは現在進行形でもって朝のHRの真っ最中。
「吉田」
「はい」
「渡辺」
「はい」
出席を取るのは三上真という、くたびれた緑色のジャージを来た女性教師。ジャージを着てはいるものの担当教科は体育でなく英語。そんな、色々と残念そうな真はレ点を点け終わった出席簿をパタリと畳み、自分の受け持つクラスを見回す。今日も今日とて特に変わった様子もなく平和である。
真はそう思いながら一つ頷き、HRを〆ようとする
「今日は先生から伝えることはないけど、皆からはなんかあるか?」
一応。そう、ただの一応の確認である。そろそろ夏休みの季節なので報告が一気に多くなる。なので、もしかしたら教師同士の連絡から漏れた真のあずかり知らぬ委員会の報せがあるかもしれない。その程度の確認である。だから、生徒の誰かが手を挙げるとは内心思っていない。
しかし、
「ハイっ!」
勢い良く手を挙げながら立ち上がる女生徒が一人。
「えー……、じゃあ溝口」
「ハイっ!」
大変元気のよい返事で、それはよろしいのだが。真は最近この生徒、溝口由香里に悩まされているのだ。いや、頭痛の種というべきか。というのも、
「先生好きです」
「HRを終わりまーす」
熱烈にアタックされているのだ。