何をしよう
申し訳ありません。「中」「後」等はありません。別枠に塗り替え、上書きします。
とにかく上げる用です。
『何をしよう』
ファンタジー系。
王都の城下町に宅配業を構える長女・モトのお話。
弟妹たち全員が独り立ちした。
お役御免、晴れて自由。さぞや晴れ晴れとした気分になるだろうと思えば、あら不思議。くったりとした脱力感を味わった。
有るだけ有れば良かった資金も、弟の晴れ着を買うのに使ったのが最後だ。四人も減れば、馬鹿みたいに金が要るということもない。相応に暮らせるよう配分を済ませて、さあ一人でと意気込んでみても暇はできる。意欲が湧かないというのがこれ程困りものだとは思いもしなかった。
「仕方が無いから、娯楽に本と、お菓子作りを取り入れたのよ。ケーキが壊滅的に向いてなかった」
「贅沢だねぇ、今日食う金にも困る奴が居るってのに」
「ただ、自分に手間暇かけて菓子なんかを振る舞うって、誰かに食わせてやる物でもないのに測りだの泡立てだの、面倒くさい。だから止めて、食べるのも適当になった。流石にげそっと痩せてからは止めたけどもねぇ」
「じゃあ良かったの、派遣で、素性の知れないのに運ばせるの」
「任せることに、してるからね。信用してるから、万が一には私が責任負う。かったるいけど」
「逞しいんだかいい加減だか」
イドは、派遣の中ではモトと年が近い。年上ではあるが、割かし気さくだ。
暇ができると、ひょっこり現れる。風体というか、身形が怪しい体を折り曲げて、世間話の相手を務めてくれる。
「張り切る動機って大事なのねぇ、それひとつってだけじゃ、無くなった後のスペアがない」
「何にも無いの?本当に全部やり切って、満足しちゃった?」
「何かは有るんじゃない?今は全然、ピンと来ないからこんなだけど」
「おばさんみたいな事言うね」
「んだと?」
重荷が下りて身一つになって、放り出していたツケが顔を出した。身軽になって一皮、剥けるかと思えば、果肉果汁すっかり干上がった皮だけ残されて。
うわぁ、マズそう。食べたくない。仮にも自分自身にそう思ってしまったのだ。憐れなものだろう。
有るんだか分からない望み薄の種と、草臥れきった外側の皮。どう料理してくれよう、煮るか、焼くか。そんな事を脱力感の真ん中で煮詰めながら、困った、困ったと思う。
「言うほど困ってはいないのかもしれない」
「死なない限りは些末だよ」
「それもそうだ」
弟妹たち全員が独り立ちした。
世話を焼く親は役目を追われる。娘息子という訳では無いから、際限無く手を貸そうとは思えなかった。けども、モトは数年間親代わりだった。
「偶にでいいから、帰ってこないかね」
「反抗期じゃなけりゃ、手紙くらいくるでしょ」