プロローグ 『手紙』
並立して上げます。思いつきは肥大しました。はい。
男に宛がわれた自室は二階の、日当たりの悪い方角にあった。クローゼットには体操着とジャージが畳まれるか、ハンガーに掛けてあるかしてしまわれている。奥のダンボールには季節に合わない男の服が詰められており、その手前にプラスチックのタンスが収められている。少し出っ張って見える。どうやら突っ込まれているだけらしい。
シングルベッドの横に勉強机と木製椅子が置かれている。小ぶりの卓袱台と目立たない色のカーペット。出口近くの壁際には、角の潰れたスポーツバッグとサッカーボールが転がっていた。
男はどうも、高校生てあるらしい。日の当たらない窓に掛けられた制服は、地元の県立高校のものだ。サッカー少年の部屋だろうか。勉強机はかなり汚れており、部活で疲れてそのままベッドに直行しているのだろう折り目の無い課題の問題集がある。ぺったりとした筆箱からシャーペン一本が先を覗かせており、その先に、一枚、二つ折りの紙があった。
家主ではない、家の住民が訪れそれを開く。
ノートの切れ端のような端が波打ったそれには、書いては消したのだろう跡が残っていた。随分と黒ずむまで文面を考えた跡が見えるそれには、ど真ん中に一文、こう書かれただけに終わっている。
『お世話になりました。』