ヴァイキング1
二つ目のアトラクションですね!
サブと本文が合ってないような...?
いや、きっと未来の私が何とかするはず!
「はぁ...はぁ...」
アインはフィス達から離れるために一心不乱に走っていた。自分がどちらから来たのか覚えていないため方角は適当だ。とはいえここは遊園地のはず。であれば走っていて抜け出せないということは無いはずだ。
(はやく...早く出ないと...!)
アインの脳裏にはまだ先ほどの光景が浮かんでいた。それは、人が人を傷つける光景。しかもその光景にいた人々の浮かべていた表情は苦悶ではなく恍惚。思い出しただけで吐き気を催し立ちどまってしまう。
(あの時秘密基地かもだなんて思わずにこなきゃよかったのに...私のバカ!)
アインは自分のことを自分で罵った。しかし今は後悔している場合でもない。そう思い直し再び走り始めた。と、そこへ...
「ねぇ、あなたはそんなにいそいでどこへ行こうとしているの?」
透き通るような、それでいてハリのある声がアインに問いかけた。
(フィス...?いや、声音がちがう)
フィスではない、それでいてモルガンでもアウラでもないであろう何者かに話しかけられたアインは振り向くか悩んだ。だが、もし普通の職員であれば助けを求められるかもしれない。アインはそんな一縷の希望をかけて振り向いた。
果たして、そこに居たのは美形の天使だった。性別はアウラよりもさらに中性的で全く見当がつかない。服装はアウラと形こそ似ているが、その絢爛さはアウラの比べ物にならないほど。ウェーブのかかった金髪は肩の辺りで切りそろえられている。高い鼻に碧眼。身長は175cmあるかないか。アウラ同様に羽が生えており、燃えるような煌めきをもっている。
アインはその人物を見て警戒心と安堵という矛盾する感情が同時に高まった。警戒心はその意味不明な...常人とは違う見た目に。安堵は、すくなくともフィス達ではないということに。とはいえ、普通の人間とフィス達という二局対立であれば確実にフィス側に入るであろう人物を前にして、そこまで安心出来るわけでもないのだが。
「ねぇ、あなた私の声聞こえてる?」
天使は少し訝しげにアインに聞いてきた。確実に聞こえてたはずなのになんでこの娘は答えないんだろう?と言いたげな表情だ。
「あ、あの家族とはぐれちゃって...」
アインはフィスに初めて会った時と全く同じように答えた。しかしそれ以外に答えようがないから仕方がない。
「家族とはぐれた...?つまり迷い込んで...ううん、ただ迷い込んだだけならここには来ないはず...。ならまさか誰かがこの娘を...?でも誰が...?」
アインは普通に答えただけ...すくなくとも普通に答えただけのつもりだったが、それが天使を思考の迷路へと誘ってしまったようだ。
(...どうしよう?)
この天使からは自分を害しようという感情は見当たらない。まあ、それを言えばフィス達だって厳密に言えば自分を害した訳では無いし、それゆえに害しようという雰囲気は感じられなかったのだが。そして、それで判断したためにあんな目にあった訳だが。とはいえ、この天使からは全く嫌な雰囲気を感じられないのでとりあえず信じはしないが近くにいておくことにしようとおもった。近くにいておくことに大きな意味は無いがこの遊園地に一人でいるとなんとなく押し潰されそうな気持ちになるためだ。
数分後、天使の中で彼(彼女?)なりの意見が出たのだろう。少し深刻そうな顔をしながら、とりあえずアインに近くにあったベンチに座るように促し、自分は立ったままアインにいくつか質問を始めた。
「初めに、アイン、私の名前はフォールンというんだ。覚えなくてもいいけどね。よろしく。早速なんだけど、あなたは人が死ぬのを目の前で見たことがある?」
「いえ...特に」
「そう..じゃあ、何かとても悪い...人を10人くらい殺したことがある?」
「い、いえ...」
「まぁ、そうだろうね。これで最後なんだけど、自分が直接は見てないけど親しい人が死んだことはある?」
「う〜ん...ない...と思います。多分。」
「なるほど...となるとやっぱり...」
フォールンは1通り説明し終わると再び思考の迷路に閉じこもった。しかし、その様子は結論は最初から出ているがそれが本当にありえるのかという疑念を払拭使用としているように思える。
「ねぇアイン。ここはどこで私は何者だと思う?」
フォールンは突然意味不明な質問をしてきた。突然独り言を呟いたかと思えば脈絡のないことを話したり、変わった人...というか変な人だとアインはおもった。
「えっと...ここは遊園地であなたは職員さん?」
アインは普通の答えを出した。それ以外なにか考えられるのかというような質問にアインは疑問を覚えた。
「...本当にそう思っているの?」
天使はこんな簡単な質問に念を押してきた。
(そうにきまってるじゃない)
アインはこんなことを何回も聞かれて少し困惑していた。この人はこんなことを聞いて何がしたいのだろうとすこし憤りすら感じるほどに。
「そう...ならいいんだけど。あなたはこの遊園地で変なものは見てない?」
フォールンはやっと納得してくれたようで別の質問をしてきた。
「変なもの...それならさっき...」
そしてアインは先ほど見た光景をフォールンに話した。自分が倒れたこと、ダンスホールのこと、そしてフィスとモルガンという殺人鬼のような人物とアウラのことを。
「なるほど...つまりあなたはここがあなたが倒れた遊園地だと思ってるのね。」
フォールンは全てがわかって核心に迫れたと言わんばかりに納得した表情だった。しかしその表情に喜びはない。
アインが頷くとフォールンは一つ深呼吸をしてから語った。アインの今置かれているであろう現実を。
ちなみに、主人公のアインが何歳かは細かく考えていませんがおよそ10~14歳、小学校高学年から中学2年生くらいのイメージです。
この頃って意味もなく人間不信だったりしますよね...え、しませんか?(・∀・;)