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ダンスホール3

やっとサイコホラーの描写が出てきました。

とは言っても情景描写はそこまで多くなく、言動が怖いと言うタイプです。

何をしてるの、そうアインが叫ぶ前に女性は喉を絞めている男性の頬に噛み付いて肉を噛み切った。しかし、それに呼応するように男性は喉を絞める力をさらに強めたのだろう。女性は抵抗することが難しくなりジタバタすることしか出来なくなった。さらにそんな光景はあちらこちらで蔓延する。ある者は素手で女性の目を抉りだし、ある者は護身用らしきナイフで男性の首なり腹なり滅多刺しにしていた。


「おやおや、始まったようだねぇ」


フィスの呑気な声が後ろから聞こえた。フィスとモルガンの喧嘩は終わったのか2人でこの光景を目を細めて(モルガンは本当に目を細めているかわからないが)眺めていた。あたかもこの光景が素晴らしいものであるかのように。


「モルガンさん、アレは...」


アインは声を振り絞ってモルガンに訪ねた。今度声が震えたのは緊張したからではなく恐怖によるものだ。


「おや、アイン様。どうなされたのですか、そんなに驚いて。あぁ、さてはフィス様コーヒーカップを回らずにまず私の所へいらっしゃったのですね?」


モルガンはあくまでもこの狂騒を止めるつもりがないらしい。いや、寧ろ楽しんでいるようにも見える。そんなモルガンに少し咎められるように話しかけられたフィスは肩を竦めながらモルガンに答えた。


「そうだよ。モルガン、君はいつも鋭いねぇ?しかしまぁ君もやってくれたものだよ。普段なら性的欲望に溺れさせて死ぬまで君の元で飼っているクセに今回はこんなシチュエーションを用意してくれるとは。」


「これは心外なことをおっしゃる。そもそも貴方様が()()()()()()()が通用しなさそうな年齢のアイン様をお連れしたからでしょう?しかもこの空気に酔わない...ダンスを断るなんてもしや...?」


「そうさ、ウルトラスーパープレミアムヤミーキャンディーを事前に舐めさせておいた。君のやることは想像がついていたからね。私の選んだ人間をそう簡単に殺されてもつまらない。」


「やはりそうでございましたか...。やはり貴方様に知恵比べなど私では難しい。それでもこの演劇、最後まで見て言ってくださいますね?」


「ふふ...そういうルールだからねぇ。仕方ないか」


2人はアインにはわけのわからない会話をまるで日常会話のように話している。それをアインに聞かせないようにしよう気は全く見られない。


(イカれてる...)


アインの率直な感想はそれだった。そしてアインは出口に向かって走りドアを開こうとした。しかし...

(開かない...!どうして!?)


「無駄だよ」


アインの思いに答えたのは支配人のモルガンではなくフィスだった。


「そのドアは彼...モルガンの演劇が終わるまでは決して開かないんだ。たとえ僕が開けようとしても開けられない。それがルールだ。」


フィスはこの惨状を見てもあくまでも冷静だ。その冷静さがフィスの言葉が嘘でないことをアインに否が応でもわからせてくる。


「さぁアイン戻ってくるんだ。出入口にいれば見ずに済むなんて思っているんじゃあこの先すぐに死んでしまうと思うよ?」


フィスは冷酷な声を発してアインに命令した。するとアインはなにか逆らえない力に押さえつけられるようにフィスとモルガンの方に戻ってしまった。


「いい子だ。もう逆らうんじゃないよ。下手に僕の元から離れると命は保証しないからね...。」


そう言うとフィスは再び惨劇の舞台へと目を向ける。するとさっきまで死んでいたはずの人々を息も吹き返し争いを続けていた。


「おやおや、地獄には地獄の風が吹く、という事かねぇモルガン?」


「そんなものと同じにされては困りますフィス様。その言葉は延々と苦しみを味わう、というような響きがございますが、ご覧ください。彼らの表情を。」


そう言われてアインとフィスは(アウラは酔って床に倒れている)人々の顔をよく見た。争いの結果だろう。仮面はあたりに散らばっており彼らの表情を具に見ることが出来た。しかしその表情は憎しみではなく歓喜そのもの。他人を害する、または害されることによって快感を得ている者の表情それにほかならない。しかしそれ以上にアインを驚かせたものがある。それは...


(あれはお父さんとお母さん!?でも...!)


そう、アインの父親と母親、2人の顔があったのだ。しかしそれは1組ではない。計12組24人、全ての顔がアインの両親と一致していた。ただ、一致しているのは顔だけで体型も、身長も、衣装も全く違っていた。まるで顔だけをアインの両親からそのまま剥がしてくっつけたような奇妙な感覚があった。


「モルガン、君の悪趣味はここに極まれりだよ。しかしまぁこんなことをしたら現実味がなくなって逆に効果がうすくなってしまうんじゃあないかな?」


「フィス様は暗にアイン様をもっと苦しめろとおっしゃるのですか?それは私ではなくコーヒーカップの彼の役目ではございますせんか?」


「ふふ...興味から聞いてみただけさ。ところで、君は本物の人間を使ってあの演劇を演じているはずだが、どうして彼らはあんなにいい表情をしているんだい?」


「よくぞ聞いてくださいました! 」


モルガンは期待したことが上手くいった受験生のような声を上げた。


「彼らにはこの演劇の前にある煙草を与えていたのです。なんのかは...おわかりですね?そして他人を害することに快感を感じるように仕向けた。ここまでは凡人のやることと同じでございます。」


モルガンが一度話を区切り、ここからが自分の言いたいことであることを強調した。


「ご存知で御座いましょうか?人間は死ぬ前に俗に言うところの脳内麻薬が大量に放出される時があります。この脳内麻薬の快感はいかなる快感よりも凄まじく私の与えた煙草など比べくもありません。そして私の力によって死んでもすぐに生き返るよう細工したのでございます。人々は自分が人を傷つけるよりも傷つけられる方が良いことに気がつく。しかしそれでは皆が待つだけで誰も傷つけるものがありません。そして無言のうちに私はあなたを殺すからあなたも私を殺せ、という無言の結託ができるのでございます」


モルガンは再び話を区切り大きく息を吸った。


「素晴らしいことではございませんか?いつも争ってばかりの人間たちが協力し合う姿、快楽に溺れるこの表情、まさに私の最高傑作でございます!」


モルガンは恍惚とした表情を浮かべていた。その表情はモルガンの思惑に嵌められた人々の表情によく似ている。しかしフィスは、


「へぇ...そうなんだ。ただ僕はあまりそう言ったマッドサイエンティストみたいな話は好みじゃないんだ。でも人間を結託させようというのは素晴らしいことだねぇ。」


と、感心しているのかいないのかよくわからない反応をした。その間も殺し合いは続く。と、突然1人が動きを止めた。それに続いて次々と人々が動きを止めていく。


「おや、もう30分たったようでございますね。」


モルガンは名残惜しそうに舞台だったものに目をやった。


「そうみたいだねぇ。君とはまだ話していたいがこれから()()があるだろうから僕達は次のアトラクションを回るとするよ。」


モルガンの態度に対し、フィスはさっきモルガンと談笑していたのが嘘のように名残惜しさを微塵も感じさせない淡白な声でそう言った。


「...わかりました。行ってらっしゃいませフィス様、アイン様、それに...アウラ様。」


声をかけられたアウラはもう酔いから覚めたのか普通に立っていた。いや、それどころか服は既に着替え終わっている。それはフィスも同じだった。


「またのお越しをお待ちしております。今扉を開けるので少し離れていて下さいませ」


そういってモルガンは扉を開けた。アインが開けようとしても開かなかったのがいとも簡単に開いた。

この時を待っていた。そういうようにアインは走り出しダンスホールから飛び出してがむしゃらにフィス立ちから離れていく。


「フィス様...大丈夫なのでしょうか?」


モルガンはフィスに儀礼のように訪ねた。フィスにこの程度のことが問題になるはずがないと言った声音だ。しかしフィスは思った以上に深刻そうな顔をして呟いた。


「...まずい。走り出すのは予想の範疇だったけどあの方角は...バイキングじゃないか」

モルガンもアレですけどフィスが結構ヤバイやつという感じですね。アウラは今回お酒を飲んでダウンしていましたが次回はきっと活躍できるはず!フィスが焦るほどのアトラクション、バイキングとは何なのか、走り出したアインはどうなるのか、乞うご期待です!

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