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回想と父親

「はぁー… なんか大変な一日だったな…」


夕食も終わり部屋に戻ってきた俺はベッドに倒れ込む。夕食中にもハプニングばっか起こるから俺驚きっぱなしだったな。目を閉じて思い返してみる…


「隼人くん、お口に合うかしら?」


「日本じゃ食ったことないものばっかだけどなかなかいけるな。」


俺は蟹のような見た目の何かを切り分けながらそう言う。


「隼人くん、明日はあたしがシュメリア領を案内してあげるねー!」


そういやこいつ、この家の長女だったな。どう見てもパメラの妹にしか見えないけど。


「この世界について少し教えてくれないか?3人の貴族がそれぞれ分割してるとこまではミレイに聞いた。」


「んっとねー、まずこの家は南部のシュメリア領を九分割した中心部に位置してるのー。で、残りの8つはそれぞれ卿っていう役職の人が任されてるねー。北部と中部もほとんど同じだよー。」


「じゃあ俺が昼間いた王都はどこにあるんだ?」


「王都は中部のアッカダラ領にあるよー。」


「あれ?じゃあなんでパメラはそんなところにいたんだ?他の貴族の領地なんだろ?」


「あれは皇帝陛下のところに戦果報告をしに行ってたんですよ。父様の代わりに。」


俺とそんなに年も変わらない女の子が戦っていることにこの世界の危険さを実感させられた。


「あ、そうそう。その件なんだけど、王都からまた書状が届いてたわよ。」


チカさんがそう言うと、執事みたいな人が件の書状を持ってきた。


「えーっとなになに、………あ、しばらくは遠征ないから鍛錬は怠けるな、っていう内容ですね。なんでも黄の国に不審な動きが見られるらしいですよ。」


「えー?でも黄色なら山挟んでるから大丈夫じゃないー?そうそう攻めてこないよー。」


俺は昼間『赤』と『青』の国のことを聞いたのを思いだした。


「その黄の国ってのも敵対してるのか?あの滅ぼされたとかいう青の国みたいに。」


「えぇ… まぁそうですね。この世界、イグノリアには一つの大陸しかありません。その中央には高い山々がそびえ立っていて、未だ調査中です。その山の西に黄の国はあります。」


「ってことは赤の国は山の東にあるんだな?」


「はい。で、南には青の国がありました。北には緑の国があるんで、黄の国が攻めるならまず緑なんですよね。」


「でも南にはもう国は無い。なら黄の国がここを攻めるとしたら南回りで来るんじゃないか?」


「その可能性もありますけど、長い距離を行軍して赤を攻めている間に近距離の緑に攻められる危険性を考えると、やっぱり先に緑を攻めると思うんです。」


なるほどね、と俺が引っ込むと広間のドアがガチャリと開く。


「あー!お父さんおかえりなさい!」


チナツが駆け寄っていく先には1人の男が立っている。俺がイメージしてた貴族と違う… 中肉中背でサラリとした髪を流した、優しそうな面持ちの男だ。男はチカさんの横の席に着いた。


「やぁ、君が異世界から来たとかいう子だね?」


「はい、えーっと、綿石 隼人と言います。」


「あはは、そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。僕はパトラッシュ=シュメリア、一応このシュメリア家の現当主だね。」


「聞いてくださいよ隼人!父様はこの国で一番の魔術師で、この前もすごい活躍だったんですよ!」


いつになく興奮気味な口調で父自慢をするパメラは急に何かを思い出したかのように縮こまる。


「ご、ごめんなさい。急に呼び捨てにしちゃって…」


「あぁ、いいよ気にすんなって。それにチナツとチカさんが隼人くんって呼んでんのにパメラだけ綿石さん、じゃ距離感じちゃうだろ。」


俺が笑ってそう答えると、娘に褒められたパトラッシュさんはまんざらでもない感じで話に加わる。


「君には人を惹き付ける何かがあるみたいだね。出会った初日にここまで人と仲良く出来るなんて、それは立派な能力だよ。」


「あはは、ありがとうございます。」


「そこに惚れ込んだってことで、明日は一日僕が魔法訓練を手伝うよ。」


そこにまさかの待ったがかかる。パメラだ。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!隼人に魔法教えるのは私の仕事なんですよ!」


「そう心配しなくても、ちゃんとお前も一緒に特訓してあげるから。」


そういうことじゃないんですー!という叫びを思い出したところで目が覚めた。いつの間にか寝てたのか… のどが渇いたな、そう思いながら冷蔵庫を開けると酒しか入ってない。


(ちくしょう… VIP待遇が仇に…)


とりあえずキッチンにでも行ってみるか。こんだけ大きい屋敷なんだから1人くらい残ってるだろ。




キッチンで水を飲ませてもらった帰り、案の定自分の部屋がわからなくて迷子になった。しょうがないから自分の部屋っぽいところのドアを少し開けて中を見てみる。

それを繰り返して3度目、ある部屋のドアを開けようとしたら中から人の声が聞こえてきた。あーここじゃないんだなー、と思って別の部屋に向かおうとしたがやっぱり気になってしまう。耳を近づけると、中にいるのがパトラッシュさんだってことがわかった。電話で話してるみたいだ。


「…はい、私が直接接触しましたが彼におかしな点は見られませんでした。…はい、はい、わかりました。しばらく調査を続行します。」


パトラッシュさんに気づかれないように俺は静かにその場を去った。

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