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叔母のロリババア先生は男根生徒の毛刈りがお好き。

本日の一限目の授業は俺の苦手科目の英語である。

スパンキングとかオーガニズムとかオ●ニーとかレスビアンとかそういうピンク単語は一之瀬から大人の絵本を借りて愛読している為、スッと頭に入るのだが、それ以外の常用単語は中々に頭に入らない。笑顔が可愛くて大人し目の天使の様な女の子もとい伊藤がひとつひとつ巻き舌でエロくネイティブな感じで発音してくれたら俺も英語の権化と化すだろう。


「健児、鉛筆は用意した? 教科書はある? 板書用のノートは?」


何の因果か隣の席に陣取る柚香さんは俺に授業の用意を促す。

同い年の口うるさい幼馴染が同じクラスっていう状況だけでも煩わしいのに、何で席まで近いのですかね。何か俺の背後に変な団塊の世代でも憑いているのですかね。


「あのね、柚香さん……貴方は俺のママですか? 俺は一人じゃ何もできない幼稚園児なんですかね? それくらい言われなくて自分でやりますよ」

「何よ、掃除洗濯料理……基本的な家事一つにしたって、夢さんがいなかったら自分では何もできないくせに偉そうに言わないでよ。それに私だって偶にアンタのきったないブリーフ洗ってあげてるんだから」

「うぉおおおおやめてやめてやめてあげて、俺の想い人の目の前で俺の下半身事情が露わにするのはご勘弁をぉおおお……!!」

「……あは、あははは」


柚香とは反対側の俺の隣の席に座っている伊藤は苦笑いで俺と柚香を見てくる。

は、恥ずいよ!こ、これだから幼馴染っちゅうのはホンマに!色々と家庭の事情や俺の恥部を知っているから幼馴染っていうのは扱いが難しいのだ。下手に怒らせると俺の立場とかプライドとか危ないな。今度からは発言に十分気を付けよう。ちなみに、俺は去年でブリーフ派閥は卒業した。今はボクサーブリーフ派閥に属している。


「そうよ、分かればよろしい。人の好意は黙って素直に受け取りなさい、家畜」


柚香はプイッと明後日の方向を向いて、そう口にする。

あれ?何か最後に余計な単語が付きませんでしたかね?まあそれは兎も角、今のやり取りから分かるように、柚香は基本的に真面目なのである。曲がったことが嫌い、人に厳しく自分にも厳しく、優等生に服を着せた奴とでもいえば分かりやすいか。偶にアへ顔が大しゅきぃ!とか沸いてる発言もするが、性質の根っこは融通が利かない頑固星●徹おやぢなのである。あ、これ、全然褒めてねえな。


「うぉーい、ガキどもー、座った座った。ホームルーム始めるぞー」


そうこうしているうちに本鈴のチャイムが鳴ったのと同時に教室の扉が開く。

教室に入ってきたお方は俺達より随分と背が低く小さい女の子……ではなく女性。これでも成人女性なのである。名は葵倫あおいりんという。担当科目は英語、同時に俺達のクラスの担任マンである。そして、俺と姉貴の母親の妹、つまりは俺にとっては叔母である。俺のババアと歳の差は二回りも違うそうだが。ハッキリとした年齢は知らない。前にババアに聞こうとしたら、倫は鬼のような形相ですっ飛んで家にやって来たからな。あの光景を見て戦慄が走ったからもう追及していない。


「ヒューヒュー、今日も倫ちゃんかっわいー」


クラスの男根生徒A(=男子生徒)が冷やかし交じりの声を上げる。

多分わざとだろうな。好きな娘にいたづらしてやりたい、とかそういう感情が透けて見える。


「倫ちゃんはやめろと前にも言っているだろうがっっ、磯部……お前は鼻毛な。あとで職員室に来るように」


倫は肩までのバッサリ切ったショートカットの黒髪を苛立ちの所為か、軽く掻きながら、男根生徒Aもとい磯部に向かってそう声を上げる。ちなみにこの発言で不自然だと思っただろうが、磯部は鼻毛ではない。立派な人間である。倫が発言した鼻毛というのは……鼻毛を抜くぞ、という意味である。


倫の教育もとい悪いことした生徒に対する罰は『体中の色んな毛という毛を抜く』行為である。但し勿論これは男子生徒のみで、おいたをした女子生徒には反省文レポートのみ。つまりは例えば……『松阪……お前は陰毛』とか言われたら俺の大事な毛を抜かれるという意味となる。言葉だけ聞けば何かものすごくアレな勘違いをされそうで嫌である。倫は行動も性質もデンジャラスであるが、同時に体型もおっきなお友達にとっては未成熟でデンジャラスなのである。……今風で言うと『ロリババア』という種族かな。


「はあい、わかりました……ふう」


名指しされた磯部は初めてお年玉を貰ったワンパク小僧の様な表情で席に座る。……ご褒美かな?このように一部のマニアの男根生徒には受けが良く、今の奴みたいにワザと悪いことする連中もいる。恋する中学生か此奴らは。


「はあ……まったく、馬鹿者が。早速だが、ホームルームをはじめ……」

「センセッ、センセッ、テンテー! もしかして先生は今回の攻略ヒロインですかー!?」


倫が落ち着きを取り戻し、ホームルームを始めようとすると今度は一之瀬とかいう馬鹿が挙手し、発言する。急に元気になりやがるなアイツ。


「……お前はいきなり何をわけのわからんことを言っているのだ?」

「いやー先生を攻略できるのならギャップ萌え値が半端なくヤバいなって、我、思いまして」

「……ギャップ……萌え……? 何だ、喰えるのかそれは?」

「ギャップ萌えは喰えないですけど、我のとってもおいしい肉塊は喰えますので、ぐへへへ、楽しみに待ってろよぉ、倫」


一之瀬は完全に時代劇的に悪者な顔で嫌らしく笑いながら、倫に向かってそう言う。スゲー、息を吐くようにセクハラを入れてきたぞこの男。馬鹿だ。


「こら、一之瀬。先生に向かってその言い草は何だ。怒るぞ」

「怒らないで下さいよぉ、もうすぐ、我の肉塊でその口を塞いであげますから、ぐひひひっ」


「……朝から壮絶にきもっっちわるいわねアイツ。あたしの拳の肉塊を味合わせてやろうかしら」


クラスの女子共にすげー引かれてることもお構いなしにロンゲのグラサンはニタニタ笑いながら倫に口答えする。ソレをまるで親の仇の様に睨み付けながら見ていた柚香は耐えられなくなったのか、拳に息を吹きかけ今にも飛びかかる寸前の様子を見せる。うーむ、どう見ても前の男根生徒Aと同じような不純な動機を感じるが。


「……おい、いい加減にしろ一之瀬。お前も後で職員室にこい、お前はすね毛だ」

「いよっしゃぁあああああ」


倫にすね毛と宣言された瞬間、一之瀬はダブルピースで満面の笑みを浮かべ、雄叫びを上げる。それに対し周りの男子はうぉおおおおとか叫びながら拍手喝采を上げ、中には日の丸の旗を振る奴もいる。すね毛で悦ぶ此奴らは何なんだ。姿が姿な為、事情を知らない人間が見れば只のクスリをキメた危ない連中にしか見えないだろう。俺の幼馴染共も馬鹿だが、このクラスメイトの男連中もどうしようもない馬鹿ばっかだな。


「はあ、朝から疲れたぞ。さて、さっそくだが今日の連絡事項は……」


それから、つつがなくホームルームは終わり。

そして、倫の英語の授業に入……る……ずぴー……ずぴー……。


………………。

……………。

…………。

………。

……。

…。


「……おい、松阪ぁ?」

「……んっがっ……とっと」


……ファッ。

寝ていた?誰かの声で目を覚ますと、俺の席の横に腕を組んで口元だけ笑って佇んでいる倫がいた。怒頂点に達する、とはこういうことを言うのだろうか。


「ふあぁああ……あ。おはよう、倫」

「……ま・つ・さ・か・く・ん? 倫ではなく、私の事は葵先生と呼べと口酸っぱく言ってきたよなぁ」

「いででででっ、ご、ごめんなふぁああ……あ」

「……ふふっ、ふふふふ……この状況でもまだ欠伸を噛むか。そうか、私の授業はそんなに退屈かぁ。そうか……だったら、今からいう質問を英語で返してくれたのなら寝かせてやろう。た・だ・し、返せなかったり間違った場合は、とっても素敵な課題を出してやるからな」

「……う」


め、目力がすごぉい倫。

ものっそい血走った目で俺を見つめるその目は俺を今にも殺しそうな勢い。


「Would you like a cup of coffee?」


うっ……うっじゅ……えっ、な、なんスカそれ、新手のスペイン語?

やべえ、全っ然、わかんねー。柚香サァンは我関せず、といった様子。多分、自業自得よプゥン!とかそんな感じなのだろう。反対側の隣の伊藤は拳を胸の前にやり、『松阪くんっふぁいおー』とか小声で言っている。いえ、えっ、あ、ありがとう……じゃなくてぇ答えをプリーズ!だ、だめだ……何かあの顔は期待を込めて応援するチア的な顔だ。い、一之瀬……は、だめだ!教科書を盾にビニ本を読んでる使えねえクズだ!ど、どうすれば……。


……ゾゾゾゾッ。


その時、何か卑猥な視線を感じ、廊下側へチラッと視線を移すと。


『I dote on underwear of the older sister. Oh, a good smell.』


という英語の文章が書かれたカンペを持つ姉貴が廊下の外側にいた。

……あれ、何であの方がこの時間帯に俺の教室の外側にいるのですかね。ま、まあ、それはともかく……姉貴はそのカンペに指差す。そ、それか……!?それが答えなのかっ、で、でも読めねええええ!


『あいどうとぅおんあんだーうぇあおぶじおーるだーしすたぁ。おー、あぐっどすめる』


姉貴は少し舌を出して、すかさず上記のカンペを見せる。

お、おおっ!それなら頭の悪い俺にも分かるぞ!よ、よーし、こ、答えるぞ!!あんまり、廊下側を見てるとばれる可能性がある為、なるべく見ないように……。


「I dote on underwear of the older sister. Oh, a good smell.」

「…………」


シーン。

俺が流暢にちょっと舌を巻きながらそう発言すると、教室は途端に静かになった。あ、あれ……ま、間違ってたか?お、おかしい、姉貴はアレでも学年で主席につけるくらい頭が良いはずなのに、どういうこっちゃ。


「健児、あんた……ぶ、ぶぶぶぶブルセラとか……そ、そういうの……がしゅ、シュミな訳?」


柚香は全身をマナーモードの様にプルプルと震わせ、柘榴みたいな表情で俺を指差し、見ている。

……は、はああアァ!?ぶるっ……えっぶるっ……せらぁああああ!?


「ま、松阪くん……お、お姉さんを大事にする気持ちは分かるけれど……そ、そういう……のはちょっと……だ、だめ。だめ、だめなんだよ……?」


伊藤は本当に申し訳なさそうな表情で少しを頬を染めて、俺にそう言う。

そ、そういうのってどういうことぉおおおおお!?


「……松阪。私は珈琲はいるかって聞いたんだがな。お前が姉好きなのは薄々気づいていたが……うん、今日は許してやる。お姉ちゃん、いやお前の母にちょっと相談しといてやるから今日はもう……休め」


やめて!?急にやさしくなるのやめて!?

やめて!?何か気を遣うのやめて!?

そして、うちのババアに相談するのやめて!?


「やーいやーい! 姉の下着が大好物で主食な松阪くんやーい! やーい! 我を無視した天罰じゃーい」


うおぉおおおお一之瀬このやろぉおおおおお!


『うんうんっ、ぐっじょぶ、よ! ケンくぅん……はあはあ(*´Д`)』


ぐっじょぶ、じゃねえんだよこのクソ姉貴!何だっそのきもい絵文字は!?このアマッ、俺に何て答えさせやがった!?絶対、あいつ泣かす!!この日を境に俺はクラスメイトから『スメルマン(但し、姉限定)』という悲惨なあだ名で呼ばれるようになったのである……。


えっちょまっ……あ、あの文章は一体どういう意味なんだぁあああああ!?

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