表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

さあ、筋肉で会話といこうか。

とある休日の平凡な核家族の日常。

俺、松阪健児まつさかけんじ(16♂)の朝は早い。理由はいたって単純明快、殆どの青少年が経験するであろう部活動の朝練故である。まあ、慣れつー奴はすげえもんで。つまりは老いぼれじじぃみたいに無駄に早く目が覚めちまう体質になっちまった。目が覚めると耳も敏感になるもので。今は午前四時……何やら物音が聞こえてくる。


「ふっ、ふへへ……」


何やら耳元で不気味な笑い声が響く。

もうとっくに目が覚めている俺は敢えて、開眼せず。声のトーンからして何となーく俺との距離が近いのが分かるんだが、我慢して狸寝入りをする。


「ふへへへ……け、ケーンくん……ふ~~、ふっ~~、ふう~~……」


何か耳穴にどんどん生暖かいそよ風がはいってくるんですけどっ。

ねえっ、何してんのお前っ!?ほとんど深夜といっても過言でない早朝から弟の部屋に入り込んでなにしてますのん貴方!?……と拳で会話したくなる程、ムカついたが、それでも敢えて我慢する俺……ホント、何してんだよ姉貴……。


「ふっふっふ……昨夜のエサに仕込んでおいたブツが相当聞いているようです。私のケンくんは未だにぐっすりおねんね中です……」


姉貴は自信満々を絵に描いたようなドヤ顔で、一人、呟いている。

何が、私のケンくんは未だにぐっすりおねんね中です、だよ。とっくにお前のブラザーは起きてんだよ、薄目開けてんだよ、馬鹿か此奴は。ていうか昨夜のメシに一体ナニ仕込みやがったこのアマっ。


「んっふっふっふ。ケーンくん、ケーンくん、ケーン…………ふぅ」


その『……ふぅ』は何だよ。弟の名前で勝手にいきなり賢者モードに入ってんじゃねえぞコラ。


「んっふっふ……ケーンくん、ケーンくん……私のケンくんはどうしてそんなにかわいいのお?」


……マジでこの女、頭が可笑しいんじゃあないか。

先刻から人様の名前を頭の螺子が外れたオウムみたいに連呼しやがって……ケンくんのバーゲンセールじゃねえんだよ。あまりの気持ち悪さに寝下呂しそうになったが、我慢する。身内を褒めるのも何だが、漆黒ロングの漫画並みの巨乳な姉貴、松阪夢まつさかゆめは、自他ともに認めるいわゆる美人に該当する。掃除洗濯家事おやぢは完璧に、文武両道、容姿端麗のハッキリ言って、弟の俺から見てもスキのない完璧超人だ(超人といっても筋肉の方ではないが……)。そんな完璧という下駄を履いた姉貴が唯一の弱点というか、尻穴的なもの、それは。


ブ ラ コ ン 。


ブラジャーコンプレックスとかそんな世間様様のひんぬー女子が悩みに悩みぬく可愛らしいもんじゃなくて。単純に弟が大好物という嗜好、だ。病的なまでの。一回、ちょっと頭のMRIを撮ってもらおうとか本気で思ったもん、俺、うん。そして、分かると思うが俺はシスコンではない。純真無垢などこにでもいるクラスのとある女子に片思い中の青少年だ。


「ふへへへ……ケンくん……貴方の可愛らしいお姉ちゃんは~はじめて~の~チュウ~~しちゃうぞ、ん~~……んー……」


オレ、ムリ、ドンビキ、トリハダ、ヤバイ、ヨ、ゲンカイ、キタ、キレ、マス、ヨ


「こらあっ、いい加減にしろこのシスコンがああああああ!!!!」

「やんっ!」


がばあっと、冬眠中のくまーが起き上がる様に、目覚めると姉貴はビックリしたようで後ろにすってんころりん転がっちまった。あ、アブねえ……想い人の為にとっておいた俺のファーストキッスが姉貴のディープキスによって塗り潰されちまうところっだったぜ。


「やんっとか普段言わねえような可愛らしい声上げてんじゃねえぞ姉貴。それより説明してもらおうか、どういうつもりだ、姉貴……」

「あっ……お、おはようございます健児くん……」

「そんな当たり障りのない懇切丁寧なご挨拶はどうでもいいんだよっ。俺が今、聞いているのは! 弟の部屋に入り込んで何しようとしていたかってことだよ!!」

「うっ……そ、それは……ケンくんの上の口が寂しいかと思ってつい……」

「上の口ってなんだよ……まあいい。それで? つい……何なんだよ」

「つい……つい……つい……うう゛っ、つい、ついすとぉおおおおお!!」

「おぎゃああああああ!」


イキナリ姉貴は背後からコブラツイストをキメにかかるっ。

いたいいたいいたいいたい、いくいくいくいくいっちゃうのぉおおおおおお…………!


──五分後──


「いちちち……お前は俺を殺す気か……危うく赤ん坊みたいな声を出しながら昇天しちまうとこだったぞ……」

「ご、ごめんねケンくん……で、でもね? ケンくん、下の口でお世話してほしいですとか、そんな下ネタはちょっと……止めてほしいなお姉ちゃん……」

「言ってねえ!? そんなこと一言も言ってねえだろ!? 頭がおかしいのかお前は!?」

「お姉ちゃん、あんまり上手じゃないから恥ずかしいけど、ケンくんがどうしてもっていうんなら……」

「おいっ、おいおいおいおいおーい!! 会話しろっ、お前は一体何処で誰と何を話しているの!? 見えてますかー人類っ!」

「ちゅぱっ、んくっ、んちゅう、くぱぁ……」(←エアーフ●ラ)

「クタバレ、チンパンジー!!」

「ぎゃふんっ」


目に見えない何かと会話する姉貴をベッドの上で拳で気絶させた。

……はあ、とりあえずメシ食って、朝練の準備でもすっか……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ