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『ねえ……ケンくん、この貝、お姉ちゃんのアレに似てるよね……ハアハア(*´Д`)』(Y.M.先輩談)

潮干狩り大会。

学生らしく野性味の溢れないとっても面白味のない大会名だがその名の通り、中身もおぢいちゃんの排泄物みたくやっぱり面白くない大会である。大会とか大げさに言っているが、本当に何の策略もルールも無い只の潮干狩りなのである。貝の捕まえた奴が最下位の女子もとい伊藤の服が何の脈絡もなく弾け飛ぶとかならやる気むんむんになるがそんな破廉恥トンデモ展開になるわけもなく、これ以外に説明しようがない無味乾燥な、ないない尽くしの鬼畜イベントなのである……なのである……である(意味なくエコー調)。


だってさ、ほら、想像してご覧なさいよ。

雲一つない真夏の炎天下、その影響で目玉焼きが焼けるほどの灼熱状態になっている砂浜、眼下に広がるとっても汚い海原、海があるから入水しようと思えばできるがクラゲ軍団が一斉に蜜に群がる蟻のように襲い掛かってくるのでそれでも良いならご一緒にどうぞ、昼食は学食のババア共がこしらえたありがた迷惑なメシマズ弁当、そしてそんな炎天下で何とフルタイム大会……な?これが、学畜行事以外の何物でもない事が容易に想像できるだろう。学園的には課外活動である潮干狩りを通じて自然に触れ……うんたらかんたらなどなど尤もらしいことを言って生徒に強制労働させるわけだが、俺には貝から学べることなど、毛虱ほどもないと思っている。強いて言うならば、『貝って……何か女性のアレに似てるよね』っていう典型的な保健体育的な知識だけだ。


これもそれもあれもどれも全部、ハゲの学園長のせいだ。大方、あのハゲは貝を擬人化してシジミ(♂)×バカガイ(♂)の同人誌でも書いているのだろう。いい歳こいたおっさんが野郎のカップリングを書いてハアハアしながら悦に浸っている姿とか想像するだけでリバースしそうである。まあ、これは俺の勝手な憶測でしかないのだが。


──そして、本日はその年に一度のみんな大好き『潮干狩り大会』の開催日である。


「こら、健児! 変顔してないでさっさと貝を捕まえなさいよ」

「変顔って……この顔、通常状態の顔なんですけど。何すか、それとも変顔が俺のデフォルトでも言いたいのですかね柚香サァン?」

「うるさいわね、ぐちぐち女々しく言い訳がましいこと言ってないで貝を捕まえなさい。今日の晩御飯になるんだから、十分に捕まえられなかったらあんたをムニエルにして晩御飯のオカズにするわよ」

「お、恐ろしいことを平気な顔して言うなよ……姉妹揃ってカニバリズムだだだっ大しゅきぃなのぉ!って奴ですか……いやだわ、この娘、とってもこわい」


柚香に熊手を向けられ、般若みたいな恐ろしい顔で睨まれたので再び中腰になって貝を黙々と探す作業に入る。なかなか見つからねーもんだな、貝というかアサリって。ワン公の様に砂を掘っても掘っても出て来やしない。く、苦行すぎる……周りの嬉々としてやってる奴らが修行僧みたく見えてきたぞ。


さっき、面白味の無いと言ったが、あれは嘘です、ひっかかったなぁ雑魚共がぁ!『男子大半にとっては面白味の無い』が正解である。女子全員ではないが、大半が晩御飯のメニューにできるこの機会を春先を望む冬眠くまーさんのように毎年待ち侘びているのである。俺にはさっぱり、理解できんのだが……だってだって、アサリちゃんなんてわざわざこんな海岸くんだりまで来なくても、スーパーにいくらでも大人しく綺麗に並べられてあるじゃん、ねー、ねー、ねぇー?それともあれですか、自らが苦労して拾い集めた貝を調理して食べることに意味があるとでも……わ、わっかんねぇえええええ!


「……あっ、い、いま、お、ォオオオオオカズとか言ったけれど、べ、べつにあんたのアへ顔を鑑賞してスッキリとか……そういうのじゃないからっ!! 勘違いしないでよこの変質者!!」


柚香は再度、真っ赤な顔して俺を睨みつけ、そう声高々に言う。

……オカズという単語だけでどこまで反応するのですかねぇ。ていうか、もう俺には先の台詞が『今、オカズとか言ったけれど、あんたのアへ顔でスッキリするっていう意味だからそのへんのところ宜しくね、変質者』と言っている様にしか聞こえない。日頃の恨みを込めて『へっへっへ、俺のハンサムアフェ顔でおなにぃするのですか、やらしいえっちぃな娘ですなぁ柚香サァンは』とかニヤニヤしながら口にしようかと一瞬、考えたが絶対その後、光速で熊手が飛んでくるのは間違いない為、諦めて適当に相槌を打つことにした。だって……ねえ?ムニエルにされて、おいしく頂かれるのやだし……あと、柚香サンとっても怖いし……ね?


「ファーはっはっはっはぁ、相も変わらずシビアな夫婦漫才をしておりますなぁ、プリケンよぉ」


黙々と作業をしていると、一之瀬が大量の貝が入ったバケツを持って俺のところへやって来た。厨二的な笑い声が妙に耳障りなのでしばいて黙らせたかったが、今は手を止めている場合ではない。日暮れまでに貝をいっぱい捕まえないと俺の命が危ういからな。まさに命がけです。


「マツ●ンみたく言うな。しっしっし、お前はロン毛とグラサンがうっとおしいから、あっちいけ」

「お、俺の存在を全否定かよぉ……およよよよよよ」


さめざめとその場で嘘泣きをするロン毛。

う、ウザ過ぎる……存在を全否定ってお前はロン毛とグラサンが体の殆どを占めるのかよ……が、ん?ちょっと、待てよ……。


「一之瀬さん、一之瀬さん。ちょっと、ご相談があるのですが宜しいですか?」

「わ、我を冷たく全否定しておいてその変わり身よう……さっすが、我の親友もとい心友ぢゃわいっ!! ファーっハッハッハ、ファァアアーっハッハッハ!!」

「いや、貴方のファーとかクソどうでもいいので……それより、貴方のその捕まえた貝を一匹……いや、二匹……三……四……いや、全部でもいいので寄越して寄越せ寄越してくださいおるぁ」

「いや、プリケンよ……謙虚にお願いしている様に見えて全然、謙虚じゃないどころかそのお願いはヤクザモンの所業ではないじゃろか?」

「こ、この俺がお前に対してこんなにDO★GE★ZAしているにも関わらず、謙虚じゃないとかテメェの眼は節穴でございますかぁ、アァン?」

「いや、ちょちょっと……全然、DO★GE★ZAしてないどころか、いたたたっ、胸倉を掴まないでくだしゃいぃいい……!」


……おっと、逸る気持ちがいつの間にか一之瀬の胸倉を掴んでいたぞ。

いかんいかん、クールになれ、クールになるのだ、松阪健児。目の前の不潔人間横着マンにも就活生の様な下から目線でクソ丁寧にむしろ卑屈なくらいの敬語でお願いしなくては……嫌だけどっ、すんごい肌から毛虱が出そうなくらい嫌なんだけどっ。


「とにかく、お願いしますよぉ一之瀬さぁん。ちょっとちょびぃ~~っとだけでいいですからぁ、貴方様の捕獲なさったアサリちゃんを分けて下さいよぉ」

「分かった、分かったわい……だからその、不自然なくらい間違っているお前の気持ち悪い敬語をやめぃ」

「アァン? だったら最初っからそう素直に言えばいいだよこの不潔星人横着マンがぁ!!」

「げ、言動どころか態度も変わりスギィじゃないじゃろか!? まあ、その代わりと言ってなんじゃが……我のいる目の前で女子にワンパシャしてほしいのじゃ。ワンパシャ=貝一匹譲る、という取引でどうじゃろか」

「ワンパシャ、って何なんだよ。訳の分からんことを言うな、日本語を喋れ」

「つまりじゃな……女子にかる~く上半身に海水を掛けて欲しいのじゃよ」

「…………は、はあ? そ、その行為にいったい何の意味があるんだよ……それくらいだったらやるけどさ」

「ぐへへへ、まあまあじゃて。やってみたら、すぐ分かる。お前さんにもとくになることじゃて……」


下卑た笑いで、俺にそう口にする一之瀬。

ったく、よう分からんが、変態の言う事もやる事もよう分からんぜ。まあ、俺も変態だけどさ。しかし、レベル的には一之瀬が神的な変態であれば、俺は生まれたての赤ん坊レベルだからな。全然、年季が違うでちゅね~。


「あっ、健にぃ~」


背後から幼女もといユキの俺を呼ぶ声が聞こえてきた……ちゅっ。

そして、ぱしゃぱしゃと軽く水が弾ける足音が近づいてくるでちゅ……よし、ようわからんが第一号の犠牲者はお前でちゅよ、ユキ。赤ん坊な俺に声を掛けたのが運のツキでちゅ!覚悟するでちゅ!


「どっせぇええええいやっ!!」

「!? わぷっ!?」


両の手で地にある水を砂ごと掻き上げ、思いっきり後方に振り上げる俺。

よっしっ、命中!海水+砂をまともに喰らったユキは、ビックリして尻もちをつく。よしゃああああ……あ、えっと、えーっとぉちょっとやりすぎちゃったかんじぃ?


「ら、乱暴すぎでっしゃろ松阪ぁ……何もそんな思いっきり振りかぶらんでも……って、うっ? お、おぉおおおお……!!」


変態ポン毛くんは俺を非難するような眼で見つめていたが、すぐに尻餅をついた状態のユキを見ると歓喜の声を上げる。な、何なんだよ……って、う、あ。


「……いたい……健にぃ……うぅ~~、ど、どうしてこんなひどいことをする……」


当然、俺に砂水を掛けられたユキは頬をマシュマロのように膨らませて、涙目になって非難がましい瞳で俺を睨みつけてくる。が、今はそんな小動物的な睨みはどうでもよく、俺が目についたのは全身……いや、正確には上半身。ユキの半袖の白の体操服は海水で濡れ濡れになってしまい、素肌にぴったりと密着してしまっている状態である。つまりは、この光景から導き出される最適解は……。


見えてる!見えちゃってるよオイ!!大事なぽっちが!!


ていうか、ユキちゃん……貴方……下着……つけてないのね……やだ、とってもお子様……。そうか、幼馴染として幼馴染のアレを見ちゃったことはちょっとどころか大分罪悪感があるのだが。そうか……今度、柚香にユキにせめてインナーつけさせてやれよ、と進言しておいてやろう。あまりにも可哀想だしな。


「ユキちゃん……ありがとうございます……そして、ご馳走様でした……」

「そして、我からも……あぁん、神に感謝ぁ……ごっつあぁんですぅ」

「おまえら何を意味不明なことを言ってるっ。私は怒ってるんだから!! 許さないっ、このこと柚ねぇに報告するんだから!!」


俺と一之瀬がユキに向かって拝んでいると、ユキはぷりぷりと怒りながら何処かへ行ってしまう。ああ、怒っちまったな……あとで、謝っておかないとぅあっ!?


「…………」

「……ん、どしたのじゃ松阪ぁ。生まれたての小鹿の様にプルプルしちゃって。いやぁ、眼福眼福じゃあ、お礼に貝以外にニシンの子持ち昆布もくれてやろう」

「一之瀬。俺と一緒に心中しよう」

「えぇ!? 今の一瞬で何故にいきなりそんな考えに至ったのじゃ!?」

「……う、うう。そ、それができないのなら……お、お家に帰って……オソマして……悪魔の様に眠りにつきたいよぉおお……!!」

「なんじゃなんじゃあ……!! まったくもって意味不明なんじゃが……!! だいたい、オソマなんかその辺の海でできるじゃろ!! それにお家って……ここから歩いて帰れる距離じゃなかろ」


やばいやばいやばいやばいやばいよこれマジでやばいですやばい。

ユキ、激おこビンビン丸→ビンビン丸ユキ、柚香に報告→悪鬼光臨→俺、死亡→完。

う、うわぁあああああ、相手が悪すぎるぅううううう!!やばいよ、やばい、絶対俺、死ぬ、すぐ死ぬ、後で死ぬ、今死ぬ。う、うぅうう……。


「ふん、だらしのない漢じゃ。お前さんがやらないなら我がやる。ふふん、まあ、相手を見てやってもあんまり興奮しないからなぁ……ランダムでやってみるか!! そ~~れ!!」


ど、どうする……ゆ、ユキを追ってあ、謝るか?あのユキに……いやっ、あいつは一度怒ってしまったらそう簡単に許してはくれないぞ!頑固だからな……ちょっと待て……だいたい、ユキを追っても柚香に接触する前に止めないと最早意味がないぞ!?あ、あぁ……む、ムリィ!むりすぎぃ!!


「…………」

「うっほぉ、うっほほほい! 爆乳! ……って、うぉおおおお!? 独身ゴリ松テンテェ!?」

「てめぇ!! この皮剥けなまぐさ坊主!! ぶっころすぞぉ、アァン!? わざとかぁ!? わざといってんだよなぁおいこらころすぅううう!?」

「あ、ぁ、ア、ァ、あいやぁあああああー!!」

「おらおらおらおらおらおらぁー!」


ゴリ松にジャイアントスイングされる一之瀬。

今はそんなことはどうでもいい……どっどうしよ、どうしよ、どうしよ、どうしよ……。


「松阪くん……どうしたの?」


頭を掻き毟りながら必死で考えていると、俺の耳穴に天使の様な声が響いてくる。ふと、顔を上げると体操服姿の伊藤が心配そうな表情で俺を見つめている。


その声を聞き、姿を見た瞬間、俺のHPとMPは全回復した。


「ねえ、ケンくん見て見て……この貝の形状、鮑みたいですごくイヤラシイよう。お、おおおおお姉ちゃんのを想像……しちゃ、や……だよう?」


姉貴が俺のすぐ隣で囁いてくる。

その声を聞き、姿を見てしまった瞬間、俺のHPとMPは1になった。お前は永遠に出てこなくていい。

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