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この世界では幼馴染がお馬さんゴッコで奇襲をかけてくるのは日常茶飯事のようです。

地球が某木星から偶々、慰安旅行でやってきた地球外生命体アンノウンに乗っ取られて、約半月が経過した──。


人類の約半数がアンノウンのイケない唇の犠牲にされてきた。街に行っても、其処ら彼処にアンノウン。コンビニに買い物に行っても、レジに店員アンノウン。あまりのメシのゲロ不味さに『シェフを呼んでくれ』と呼んでもシェフアンノウン。N●Kの集金にまでアンノウンがやって来るという始末……まさに世はアンノウンの総合商社状態である。兎にも角にも、人間という生き物よりもアンノウンという謎生物の割合が多いというどこにも安心感が得られない絶望的な世界であった。


俺、松坂健児(29)は只のしがない一市民のサラリーマンであった。


『あっ、よよいの、よい……それっ、よよいの、よい……あっ、よよぁあああ゛!? な、なんだ貴様は!?』

『アタイ、アンノウン、オマエ、クウ、アタイ、カイカン、オマエ、ウレシイ』


オカマバーからほろ酔い状態で気持ちよくデ●セン音頭を踊りながら出てきた俺の目の前にいきなり危険なアンノウンが出現した。乳首の周辺にキスマークがついた半裸の俺はとある寂れた繁華街の路地裏でアンノウンと逃亡劇を繰り広げる。そう、甘納豆を片手に装備した漬物石妖怪もとい『ツケモノロード』に……。


『うっ、うわあああああっ、やめろぁおおおおおあぁん』

『あたしのとっても臭いにおわ納豆を喰らわせてやるからおとなしくせいや』

『うぉおおおおおお、やめろぉおおおおん、お、おかすなぁあああああ゛!! 俺を気持ちよくするなぁああああああ!!』

『まったくぅ、うるさいわねこの子は、そんなうるさくておとなしくしないわるいこというお口にはこうだぞ、んちゅぅっ』


俺とゲイノウンの唐突に始まった意味不明な逃亡劇はそう長くは続かなかった。

脚力と性的暴力でゲイノウン勝てるはずもなく、俺は簡単にお馬さんゴッコの状態で路地裏で組み伏せられた。そして、ゲイノウンのキッスが俺の瑞々しい唇に噛まされる!しかし俺は最後の一線……口は開かず奴のべろちゅ~攻撃を必死に耐えてやった。


『はやく……開けなさいよ……あんたのきらいな……に お わ 納 豆 ……た~っぷり、お口で入れてやるから養生せいや、コラ、コラアァン?』


ゼロ距離で何故かヤンキー言語で囁かれる俺氏。

その地獄絵図に耐え切れなくなった俺氏は、遂にお口をオープン……!


「おっ、おげおワアアアああああ!! やめやめっ……やみゃあああああ!! それは、におわ納豆じゃねぇえええ……はっ」


……。


朝、朝なのかおい。あ、あれは夢……だったのか?な、なんちゅー、世界観が意味不明な夢だ、オイ。

俺は夢の中で漬物石妖怪に口移しで甘納豆を喰らわせられる寸前のところで目が覚めた。あ、危ねえ……もう少しでゲテモンに俺のお口の処女を奪われるところだったぜ。畜生、こんな気味の悪い訳の分からんカオスな夢を見てしまったのもきっと昨夜の姉貴の奇行をまともに拝んじまったせいだぞ。その所為で何か姉貴の変な呪いにかかっちまったんだ。お・の・れ、変態姉貴を如何にして抹殺して差し上げてやりましょうか……と考えながら起き上がろうと腹に力を入れた。


……ん、ん、ん。

身体がう、動きません。と、いうより重い。やだもー金縛りぃ?え、あれ?ホントに動かんぞ、おい!だ、誰か!誰かあ!救急車あ!!へ、ヘルプスミー!!もしかして、まだあの、えっと、さっきの、その……なんたら石妖怪の呪いがかかっているのかな?と、アフォな事を考えながらふと自分の掛け布団の上に目をやると。


「すぅ……すぅ……んっ、んぅ……」


小さな体躯の少女が掛け布団の上から俺に覆い被さるようにうつむきの体勢で寝転んでいるではないですかー。そうか、この重みは妖怪の仕業では無かったのねと安心した後、即座に俺は考える。何故、此奴が此処にいるのか、と。しかし、いくら脳内で一人寂しく問答しても分からんものは分からないので本人に直接筋肉で聞いてみることにする。筋肉で聞く、とは別にイヤラシイことではない。


「おーい、こら、こら。貴様、おじょーちゃん、ちょっと起きなはれ」


少女の頭をぺちぺちと掌で軽く叩く。

すると、ユキは無意識なのかゴロリと寝転ぶ。うげーっ、やめてぇ!貴方の敷布団は私の肉布団よ!!


「んっ、んう……お腹いっぱい……お腹いっぱいです……ユキは……もうそんなに健にぃを食べられません……むにゃむにゃ」

「ちょっと、ちょっと、待ちなはれ……ナニ、夢の中でカニバリズム的なことを考えてはるのですか君は? それともナニ? それは、肉棒的な意味で食べられないってこと? キャー、イヤラシイッ、何てイヤラシイ助平な娘なんでせう!!」

「むにゃ、むにゃ……ここの、レストランには三つ星を差し上げませう……ヤッター……」


……。

一人でエキサイトしていてもただのキチ認定されるだけだからやめようね、皆。

色気より食い気、フードファイターユキみたいなお子様がまさかエロテロリズム的な事を考えるわけがあるまい。しかし、俺はユキの頭の中で本当に食べられちゃってるのか……考えていると無意識的にお婿さんが布団の中で勝手に独り勃ちしていた。嗚呼、もうお前はそんなお年頃なのね……お家に毎月仕送りはしなさいよ……いちおくえん……我ながらゲスで最低でイケメンである。と、いつまでも自意識過剰な下らんことを考えている場合ではないな。


「おーい、ユキ。ホントに起きなさいってば」

「ん……んう……ふ、ふぁ、あ……あ。……ぼーっ…………あ、健にぃだ、おはよう」


もう一度、ぺちぺちようら若き乙女の頭をこんこんと叩く。

すると、ユキは俺の上で軽く、小さな口を開け欠伸をし、俺に挨拶する。口を開けた瞬間に、『喰らえっ、俺の唾鉄砲! ぺっぺっぺっ』とかやって、朝からテンションが一段階下がってしまうお茶目な悪戯してやろうかと一瞬考えた。しかし、想像するとあまりにもその行為が小学生並みに低次元じゃないかと考えた俺は奇しくも今回は諦めることにした。……いやあ、だってねえ?ほら、咽び泣かれても困るし、何よりも暴君ハバネロみたいなあの柚香サァンにカミングアウトされても……俺の命が危ういし……ねえ?ギャルゲー的に言えば、見えてる地雷バッドエンドってやつだ。


「身なりによらず、寝覚めはいいのね貴方。おはようユキ。しかし、挨拶もいいが何か俺に言うことがあるんじゃないですかね」

「……言うこと? 昨晩はお楽しみでしたね?」

「違う、そうじゃない。あと、その台詞は何か貴方の心体共にむっつりなお姉さんに誤解を受けそうだからやめてあげてね」

「……?? 分からない。それより健にぃ、いつものやってー」


ユキは人間慣れしたクソ生意気なぬこちゃんのように自らの頭を差し出してくる。え、なに、これは思いっきりしばき上げてもよろしいのですか?ああ、言われなくても重々承知しておりますよ箱入りお嬢様。頭を思いっきりナデナデして差し上げて下さいこの童貞野郎とかそういうことでしょ。俺のゴッドハンドで愛撫してもらって、んんんぎも゛ぢい゛ぃ゛よ゛ぉ゛お゛おおおおおお……とかそんな感じになりたいってことですかね。


「あいよ」

ナデナデナデナデナデナデ

「……ん、気持ちいい」

「はい、これでアイヴレーションは終わりっ。ユキちゃん? 次は俺の話を聞いてもらってもいいですかね」

「ああっ、ずるい……もっと、もっと、やって、健にぃ」


俺のパジャマの袖を掴み、もっともっと、と日本のカルチャーをとっても勘違いした外国人の様に強請るユキちゃん。ユキが俺の顔面に近付くものだから女の子特有の良い女子臭が俺の鼻孔を刺激する。ついでに俺の童貞ちん●も刺激する、ひどいや、ガイコクジン!


「ダメです、ずるくありません、因みに俺はずる剥けちゃんです(嘘)、よろしくね。そして、そんな絶望に打ちひしがれた子羊みたいな瞳で見つめられてもお兄さんは絶対にやりませんよ、ぜっったいに、ぜーったいに、メエエエェッッ!!」

「うざい……健にぃのけちんぼ。つーん」

「ほらあ、けちん●じゃないのぉ、つんつんしないのぉ、つんつんするならオレの乳首と下のお口にしときなさい。あと、今、『うざい』と心無い言葉を言った幼女は俺の養女にしてやります」

「……。スケベ、健にぃも柚ねぇのこと言えないじゃん」


ユキはむ~っと、マシュマロのように頬を膨らませて、ちょっとイキってみた日本のネットヤンキー君の様に俺を睨んでくる。しまった、お子ちゃまユキの事だから何にも分からんわハゲえぇ大しゅきぃ!とか思って、調子に乗って会話の節々にセクハラ言語をちょいちょい入れたらばれちゃったぞ。いつの間にか……僕達の知らないところで……大人の世界に……足を……踏み込んでいたんだね……ユキちゃん……。


「……ま。それはひとまず明後日の方向に置いといてだな」

「置いとけない。このこと柚ねぇに報告する」

「やめてあげてよぉ、するするぅ! 愛撫なんかあとでいくらでもしてあげるから許してあげてよぉ……!!」

「わあい、健にぃ、だいすき」


満足げに笑みを浮かべるユキちゃん。

く、くっそぉ……調子に乗りおってこの幼馴染の分際で!いつかそのクソ生意気な処女顔を涙やら涎やらでびちょびちょのべちょんべちょんにして、お尻をぺんぺんしてヒィヒィ鳴かせてやるからな、覚悟おし!……と頭の中で勝利宣言をするできもしないことをつらつらと考えるワテクシ。うーん、とっても寂しいョォ……。


「さて、ほんとに聞きたいんだがユキちゃん? 何でお前、俺の上でお馬さんゴッコもとい寝ていたんですかね。あと、何なんですかね。その、性少年の心くすぶる体操服姿は……動機、息切れしてもいいですか?」

「健にぃ、戦いはもう始まっているんだよ……」

「いや、そんなコミケの汚い勇者みたいなこといきなり言われてもな」

「じゃん」


ユキは変な効果音を声に出しながら、何処から取り出したのか、熊手とシャベル、麦藁帽、クーラーボックス、サングラス諸々を次々と俺の胸板の上に取り出す。何だそのレジャーなトレンディアイテムは。今日なんかあったっけ?


「そうか、姉貴を体育館の裏に埋めるのか? よし、是が非でも手伝うぞユキ。ついでにお前の贅肉がむっちりな姉も埋めてやってもいいぞ……是が非でもな!!」

「どうして、そんな猟奇的な発想になるの。そんな怖いことしないよ……健にぃ、今日は何の日か分かる?」

「姉貴の撲滅記念日か? はたまた、姉貴の命日? 姉貴がうっかりおっちんじゃった日?」

「まだ話が進んでた……全部同じだし……よっぽど、夢おねえちゃんの事嫌いなんだね。違う、今日は『潮干狩り記念日』だよ」

「どんな記念日なんだよそれは。シヲ=ヒガリ(69)さんの記念日か?」

「力技で話を進めようとしないで。昨日、学校で聞いてない?」


ユキは目をキラキラさせながらそんなことを俺に聞く。

潮干狩り……潮干狩り大会……あー、昨日のホームルームで似非幼女が何かかるーく言ってたような気が。あれかー……しかし、俺は去年もやったことあるからなぁ。ユキは一年だから今年が初めてか。


「あーあれね、潮干狩り大会。しかし、あんなもん真夏の炎天下で延々とひたすらしょっぼい貝を海辺で捕まえるだけの社畜もとい学畜行事じゃねーか。あんな修行みたいな行事何が楽しいんだか」

「健にぃ! け、健にぃは間違ってる! 健にぃは分かっていません!!」

「何でお前はそんなにエキサイトしてるの? …………あ、はっはーん、そういうことか」

「そ、そういうことって……何? で、出鱈目なこと言ったらいくら健にぃでもゆ、許さない」

「またまたまたあ……ユキちゃん、あれだろ? 捕まえた貝をたらふく食」

「だめぇええええ、その先は言わせない!!」


ユキちゃんはラグビー部員も真っ青なタックルを上からかけてくる。


「ぐあ……! わ、わかった、わかったよ……何もそんなに切れんでも」

「もう、健にぃはほんとにでりかしぃが皆無なんだから」

「悪かったよ。そっか、潮干狩り……かあ。しかし、俺としては伊藤の体操服姿が何よりも目の保養となるしなあ……ぐへへ、ごちになります」

「……ふんすっ」


ユキは再び、猪も真っ青なタックルを俺の鳩尾に入れてくる。

真っ赤な顔して、頬をたこ焼の様に膨らませ、怒り心頭のご様子のユキちゃん。


「あだだだだっ!! な、なんで今のでタックルいれちゃうのぉユキちゃん!?」

「知らないっ」


そしてそのまま、怒り心頭を絵に描いたような態度でプンプンしながら俺の部屋から出て行くユキちゃん。……あ、そういえば。恰好の事は分かったが、何で俺の部屋で寝ていたのか結局理由は分からなかったな。


バキッ


色々と思考にふけっていると、突如、独りでに部屋の扉が開いた……というより、えぇえええええ、こ、壊れたあ!?嫌な予感しかしないが、恐る恐るその開いた方向に視線を向けると……そこには邪鬼のような面した柚香サァンがフライパンと包丁を持ち、仁王立ちしていた。いやん、タイミングがわ・る・す・ぎィ!!


「けぇ~~ん~~じぃ~~……!! どーして、あんたの部屋からユキが体操服のコスプレ姿で出てくるのよぉおおおおお……!!」


ユラユラと幽霊のように横に揺れながら、俺との距離を詰める柚香さぁん。

え、あ、はい、俺氏、死にましたー。俺は頭の中でおいたわしやおいたわしや……と自分自身に向けて、呟いていた。

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