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俺のお袋と姉貴が妖怪過ぎてこの国がヤバい。(※パパは既に●●されました)

夕刻。

俺、柚香、紅音さんの三人は何の変哲も無いとあるマンションの一室の扉の前に到着した。松阪さんのハウスですよ、はい。いや、もう会長は意固地で頑固なところがあるから、半ば諦めかけていましたよ。そして、道中で『うちの色欲ババァとメルヘンキチ姉が原因不明の性病でくたばってますよーに』とか呪詛を延々と唱えていましたよ。しかし、到着した瞬間、扉の向こうからチョウコレイトな謎のスメルが鼻孔を突き刺し、続いて柔肌に禍々しい変態オーラを感じた瞬間、俺の退路は断たれましたとさ、おしまい。今の俺の瞳には目の前の無機物の扉は物々しいヘルドアにしか見えないぜ。


「けんけん、冷や汗かいてるけど……具合悪いの? 大丈夫?」

「…………あい」


俺がこうなった原因の一端であるようじょもとい紅音さんが俺の顔を覗き込むようにして、心配そうな表情で口にする。心情的には憎まれ口の一つでも叩き売りをしたいところなのだが、今の俺にはそんな余裕はなく。どうやってお袋や姉貴を始末……じゃなくて処分して差し上げようか頭のフル勃起中の俺は曖昧な返事しかできなかった。


「紅音さん、そんな下半身が甲殻類な猿人は放っておいて早く入りましょ」


柚香さんは心の中で苦悶する俺を一瞥することなく、当然の如く合い鍵を用いて、扉をさくっと開放する。あれ?何で僕ちゃん、このお家の住人なのにディスられてるのぉ……?どうして考える猶予もくれないのぉ……?そして、下半身が甲殻類ってそれどういうことなのぉ……教えて柚香しゃまぁ……。


「あらあらまあまあ……いらっしゃい、柚香ちゃん」


柚香しゃまぁが扉を開けた瞬間、まるで待ち構えていたかのように包丁を装備したエプロン姿のお袋が出現した。……と、とりあえず、マスターボールでバケモンGETだぜ!……と、面白くない冗談を言っている場合ではなく。どうしてこのおばさん、顔とか包丁とかエプロンとか……血塗れなの……?


「うふふふふふふ、これぇ? これはねぇ……パパを捌いた跡なの」

「…………」 

「うふふふふふふ、やあねぇ……冗談よぉ、冗談、マイケル上段、高橋上段」


うふふふふと、メンヘルの『ヤリマス一歩手前』な不気味な笑みを浮かべて、聞いてないのにボソボソと呟く、お袋。初っ端から、野郎のシリアナみたいにきっつい冗談だな、オイ……全っ然、笑えねーよ。


「夕陽おば様、結構なお手前ですわ」

「あらそぉ……? 柚香ちゃんありがとぉ……うふふふふふふ」


おほほほほと、笑う二人。何だこの見え透いた社交辞令。


「えーっと、あはは……けんけん?」


戸惑いの表情を俺に向ける紅音さん。

そうか……紅音さん、俺の家に来るの初めてだもんな……微妙な顔になっても仕方ないか。


松阪夕陽まつさかゆうひ

今迄の流れ的に分かると思うが俺のお袋だ。さだっこーのように禍々しい長髪の黒髪、目の下のクマー、骨みたいにガリガリくんな体験、手首やら首筋には数十か所の傷痕、まぁ、オブラートに包んで言えば……リスト●ットってやつ。俺の包容力を持ってしても全然包み切れてねえな、これ。……もう言わなくても分かるだろ?


俺のお袋はいわゆる、メ ン へ ラ って奴だ。


「……あらあ、いらっしゃい。ダッ●ワイ●ちゃん、うふふふふふふ」


そして、こういうことを初めての人間に平気で言ういい歳こいて危ない人種だ。よくうちの『サエナイ・モテナイ・ヤリキレナイ』の三拍子が揃った幸薄髪薄親父は今まで逃げないで耐えてきたよ、ホント……。


「……ダッ、だっだだだだっち? あ、あははははは……ねえ、けんけん。お姉さん、そろそろお家に帰ってもいい?」


俺の腕を軽く掴み、懇願するような瞳で見つめる紅音さん。

少し涙目なのと震えが俺の身体に伝わってくるのは気のせいだろうか。


「おい、お袋。俺の先輩様に向かって失礼なこと言うんじゃありませんよ……この方は東条紅音先輩。俺の所属している同好会の会長ですよ」

「あらあ、夢ちゃんの……お友達の……そう。そうだったの……私は健児くんのママなの。一族郎党末代まで末永く永遠に絶対に宜しくねえ、私の紅音ちゃん……?」

「……あっ、ア……ああぁ……よ、よ、ろしく……お、ね、がいしま……す……?」


……挨拶が微妙どころかだいぶオカシイだろ、おい。

だめだ、紅音さんがそろそろ白目を剥いて泡吹いて気絶してもおかしくない。此処にいるとお袋の瘴気に充てられて身体にとっても悪い。こういう周りの環境に悪いところは姉貴に似ているな。早いとこマイナスイオンが満ち溢れた俺の天使のような部屋に連れ込んだ方がよさそうだな。連れ込むというのは当然だが、犯罪的な意味ではない。


「おい、柚香、紅音さん。早く俺の部屋に行こうぜ」

「ねえ、私の健児君……ママ、深爪しちゃったあ。いたいのいたいのとんでけー……って、ママの乳房を上のお口でナデナデして……? うふふふふふふ」

「あの、突然唐突に何の脈絡もない変な話を振るの止めてもらえませんかね。あと、実の息子を近親的な相姦の世界へ淫らに誘い込まないよーに」

「うふふふふふふ、私の健児君……今日のお夕飯のめにゅうは……パパのもつ煮込みです……嘘です……みなさん騙されました……うふふふふ。うふふふふふふ……」


包丁を器用に掌でひゅんひゅん回しながら、据わった瞳でそう声を上げるお袋。

だめだ、話が宇宙人並みに通じないぞ。これ以上此処にいてはいけないと判断した俺は柚香と紅音さんを引き連れて、高らかに笑うお袋をスルーして、俺の部屋に向かう。そろそろ、包丁とかカッターナイフが飛び道具に使用される可能性大だからな。


「な、ナニあれ~~……けんけんのママ……とってもこわかったよお~~」

「大丈夫よ紅音さん、私も最初にエンカウントした時はその一週間は夜な夜なうなされて眠れなかったけれど慣れれば、案外とイケるものよ」

「え、ええ~~……ゆずゆず~、慣れたくないよ~~、イケたくないよ~~」

「人の親をモンスター扱いしおってからに……しかし、まったくもって否定はできない実の息子が此処にいるのである。でも、安心して下さいよ紅音さん。俺の部屋は至って普通でフローラルな香りがする心のオアシス的な憩いの場所ですから」

「何がフローラルな香り、よ……。栗の花の香りの間違いじゃないの? 心のオアシスじゃなくて、お口でオアシス……何てしてもらう腹じゃないの、や~らしいわね、あんた」

「あの、柚香サン? せっかく、紅音さんを癒そうとしてるのにいらんことを言うのやめてもらえませんかね。このところ、あなたの思考、ピンクすぎやしませんかね……貴方のママとかパパとかいもうっとが大変に悲しみますよ?」

「けんけん、襲っちゃいやだよ?」

「えぇっ!? ちょっちょっとちょっとぉ紅音さぁん!! 柚香の冗談を鵜呑みしないでくださいよ!? その素な反応止めてあげてね!? 地味に傷つきます!!」

「あはは、分かってるって。けんけんがそういうことできるカイショーなんて無いってことくらい。けんけんは、立派な『童貞紳士』だもんね」

「……あ、もっと傷ついた。伊藤、この傷ついた俺のギザギザハートをその柔らかそうでおいしそうなおっぱいで癒して癒らして下さい」

「今ここにいない人に向かって何言ってんのよこいつ。相当、気持ち悪いわね」


柚香に蔑んだ目で見つめられる俺。

い、いかんっ、これはいかんよう、思いっきり舐められている。

これは如何に俺の部屋が清潔で立派で癒しいやらしの見本市か、その目で確かめてもらわねばっ。

俺は思いっきり力任せで自室の扉を開き。


「はふはふっ、はふぅ~~んっ、こ、これがっ、ここここれがっ、ケンくんのっ。ケンくんのお、おちっおちっおちん●んとあああっあなっあ、あ●るの匂いが染みついたおぱんつぅ~~、ふ、ふにゅ~~ん、たったたたた・ま・ら・ん・わ・いっ」


開き……開き……開……き……えーっと、えーっと、えっと。

…………。

扉を開くと下着姿の姉貴が俺のベッドで俺の下着とゴールインしていた。

半裸の実の姉が自分の下着と戯れる……たまらんわい、この地獄絵図。


「……あは。あははは……ゆ、ゆめゆめ、お、お楽しみのようですね……し、失礼しました」


紅音さんは目の前の惨状を見るに堪えられなかったのか、そのまま踵を返して俺の部屋から出る。

その足を止められない俺。いや、正確には止められるような心情ではない俺。

……そろそろ、ヤっちゃってもいいかな……ハメラッシュ……(←気が動転し過ぎて、意味不明な言葉を考える健児君)。


「違うベクトルだけれどここにも怖いモンスターがいたわね、健児」

「ペロペロペロペロ~~、け、ケンくんのとってもおいちいおじゅうちゅ~~……はっっ!! け、ケンくん……こ、ここっこれは違うの、お姉ちゃん違うの」

「……何が? 何が違うんですかお姉さま……?」

「えっと……えっと、その……こ、これは、その……しじょう……うん、市場調査! お姉ちゃんの市場調査なの!!」


意味不明な言葉を繰り返し吐き捨てる姉に俺は筋肉で応対する。

姉貴の汚い似非断末魔がマンションに鳴り響いた。こうして、俺の一日が幕を閉じるのである……。

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