『MOD同好会』で遊ぼう!!
『MOD同好会』とは……。
『モズクとお酢を一緒に召しあがる同好会』の略称で、『モズク』、『お酢』、『同好会』の三文字をローマ字読みした際の頭文字をとった通称名である。俺も入部時はちょっと頭の螺子を何処かの遠くの夢の国に置き忘れているんじゃあないのこの方?とか思いつつ、紅音さんに何気なく名前の由来を聞いたのだが……。
『ほらあ、モズクとお酢って、相性バッチリじゃん? そんな感じだねぇ』
満面の笑顔でそう俺に説明する紅音さん。
えっ、あっ、うん?どんな感じなんですかね。身体で宇宙パワァーの神秘的なアレを感じ取れびびびびびび~って奴なんですかね。えぇ……やだ、とっても宗教。とか色々と憶測の根を広げていたが、今となっては『運動系』と『文化系』という二つの相反する系統を『モズク』と『お酢』のように美味しく一緒に頂きましょう、もとい一緒に兼任しちゃいましょう……というかな~り無理矢理な解釈で自分自身に言い聞かせるようにしている。そもそも、俺はこの同好会に好きで入会したのではなく……と、長くなりそうなので今回は止めておく。
活動内容は至って単純明快。
『学内の各部(『運動系』+『文科系』)のお手伝いをしよう!!』
まあ、ざっくばらんに言えば『縁の下の力持ち』な存在を目指しているのである。活動内容だけ見れば、至って全うで真面目……?真面目かな……?おいこれ真面目なのですかオイ……と微かに思える同好会だろう。しかし、この奇天烈な同好会名が災いをもたらすこととなるのです。
一年前。
新入生のオリエンテーションにおける各部紹介の際に、紅音さんが嬉々とした表情で『モズクとお酢を一緒に頂きたいかわいこちゃんたち~、だいぼしゅ~』とか言うから大誤爆を受ける羽目になる。いや、文字に起こせばああ……そうですか訳ワカメちゃん、となるだろう。しかし実際、事前に何の情報もなく言葉だけの聴覚的な情報で前述の台詞を聞く。するとどうだろう、一部の女子から黄色い悲鳴や嬌声が上がりました。
『モズクとオス(♂)を一緒に頂きたいかわいこちゃんたち~、だいぼしゅ~』
嗚呼、なんということでしょう。
紅音さん自身は全うな同好会を説明しているつもりが、捉え方を間違えるとすぐさま犯罪的な台詞に様変わり。『えぇ……モズクと男の子を一緒にタベチャウノォ……?』『ヤダァ……///』『せ、接続部位にモズクを垂らして潤滑油代わりにするのカナ……?』『ウゥッ……ケツノアナニモズクガァ……///』『モズク×イケメン……あ、新しすぎるゥ』とかいう台詞が細々と聞こえてくる。俺には専門用語が多すぎて、彼奴等が何を言っているのかいまいちよく分からなかったが、決してそれは良い反応だとは思えなかった。
そんな経緯があってか。
あるインテリ男根生徒は……
『MOD同好会ですか? ……あぁ、あれですね。『もっとおちん●ん大しゅきぃ!同好会』でしょう? 大変、下賤な同好会ですね。僕のアレと同じようにとっとと去勢しちゃえばいいのに(メガネくいっ)』と言ったり。
あるボーイッシュ女子生徒は……
『え、MOD同好会? あはは、知ってるよ、『ままぁ、おち●んちん、抱いてぇ同好会』でしょ? ユニークだよねー、あそこ』と言ったり。
ある先輩女子生徒は……
『エェ……エムオーディドウコウカイデスカァ……ア、アレデショ……『ケンクンノオチンチンハトッテモカ・ワ・イ・イョ……?ドウコウカイ』……キャッ///イッチャッタ(※声主の要望によりモザイク音声)』この頭のおかしい先輩に至っては端から略称にもなっていないが。
物珍しく怪奇的な名前に人は一時的な興味を示す。
しかし、花の高校生。『モテタイ、ヤリタイ、ガチヤリタイ』の三拍子の揃った高校生が興味は示しても、三年間の部活動をみょうちきりんな同好会に果たして骨を埋めてくれるだろうか。答えはノオオオォォォ(怨霊風味)である。事実、現在のMOD同好会のメンバーは会長の紅音さんを含めた、俺、柚香の計三名であり、ぎりぎりの瀬戸際で同好会という名の体を保っている状況である。しかも柚香はマネージャーとかいう訳の分からん立ち位置なので実質的には俺と紅音さんの二人である。
そんな背景を踏まえた上で……。
此処は、MOD同好会の古びた部室である。
「……で、紅音さん。今日の活動内容は何ですか?」
「まあまあ。ケンケン、そんな慌てなさんなってぇ。エッチの時の早漏は嫌われちゃうぞ~」
「そうよ、健児。あんたみたいな仮性童貞はそれだけでもハンディがあるのに早すぎるって、あんた……」
紅音さんはやれやれといった表情をし、柚香サァンはうちの幼馴染は……といった表情で溜息を吐く。どうして、今日の活動内容を聞いただけで俺の下半身事情に対しておもいっきしダメ出しされにゃならないんですかね。そして、柚香サァン?言いかけはやめてあげて!とっても気になる!
「まあ、御被り侍の健児は置いといて……紅音さん? 今日は何処の部活動を手伝うんですか?」
「うーん、そだねぇ……本来は水泳部のお手伝いをしようかと思ってたんだけどねぇ……断れちった」
紅音さんは柚香の問いに対して、頭を掻きながらはにかむ。
何か今変なあだ名が生まれたような気がしたが、まあ俺の空耳だろう。それはともかく、先の事情でうちの同好会は腫れもの扱いされているのが現状だ。怪しげな同好会を受け入れてくれる部は少なく、特に『運動系』の連中に煙たがられている。まあ、運動系の連中は大会等に向けて特に真剣だからな。猜疑心に服を着せたような輩ばかりである。よく分からないふざけた名前の同好会が手を貸そうかと差し伸べても受け入れがたいのは分からないでもない。しかし、彼奴等と同じくうちの会長も真剣なのは同じなんだけどな。
「『だから、俺はそういう可愛らしいペタペタぺったんこな紅音さんに惚れたのさァ……はあはあ、うぅもっもぉたったまらんですたい!!』」
「……あの、紅音さん?勝手に人のモノローグに土足で踏み込むのやめてくれませんかね」
「あっ、あはは……こ、こーいうのって何か言ってて照れちゃうねぇ……」
紅音さんは柘榴の様に頬を染めて、鼻の下を指先で擦る。
恥ずかしいなら最初から言わんでください。あんた、見た目だけでもユキと同様、ランドセルと黄色帽が似合う似非幼女なんですから危険な発言は避けて頂きたいです、はい。あれですか、うちの姉貴とお友達だから何か毒されてるんですかね。あのアホの姉貴は病原菌かウイルスか何かか。
「……あ、こういうのはどーです? 健児の家に突撃隣の晩御飯!……てのは」
「おー、それいいねぇ、それいいです。柚ちゃん、それ、採用」
そうそう、姉貴の奇天烈御下劣な姿を鑑賞しつつ、うちのママとパパのくんずほぐれつにドンビキしちゃっててんわやんわの……って。
「こらこらこら、こらあ! それいいですとかじゃないですって会長! そんなもん部活動でもなんでもねぇ!! 断固反対! 断固反対です!!」
「男根反対? 俺様のハーレムは汚いアワビな女で充分だ? やーらしいわねぇ……」
「やらしいのは貴方の頭ですよよよよよよぉ柚香サァン!」
「うーん、けんけん……『会長』ってのはちょーっぴし寂しいねぇ……」
「そ、それはつい……っていうか! それより今は……同好会の活動とうちの訪問の何がどう関係するのかってことです!!」
「何よ、あんた毎日自分の部屋で秘密の部活動してるでしょ? しこしこ~……うって」
「そ、そんなもんは部活動とは言わないっ!!」
「あはは、そんでもって、夕飯にけんけんのママがノックなしで入ってきて、発電中のケンケンとばったり遭遇……んでもって家族会議……ってオチがベタだよねー」
「そんな破滅的なベタを考えるのはやめてくれ紅音さん!!」
何かとんとん拍子でうちの家に訪問っていう方向性で話が進んでいっているような気がするんですけどっ。嫌だっ、俺の家には下世話で妙にお節介やきなババァとか薄給で年々頭の砂漠化の進行が止まらない幸薄おやぢとか頭の中に正体不明の虫を飼っているキチ●イの姉貴が常駐しているんだぞ!毎日のように家に出入りしている柚香サァンはともかく、紅音さんまで来たら……何か愛人とか思われかねないっ。な、なんとしてもうちの訪問を阻止せねば……!
「まあ、けんけんに何と言われようがお姉さんの決定事項は覆らないけどね」
「ほらあっ、とっとと行くわよ、ポチ!!」
そして、柚香に情け容赦無用でおイタをした犬の様に引きずられる俺……。
うっ、うわああああああい、嫌だああああああああ!




