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お姉ちゃんの甘露入り(※意味深)のお弁当はいかが?

二限以降の授業は恙なく淡々と進み、昼休み。

各々が各々のグループを作り、ランチタイムに入るところは余所の高校とそう変わらぬ風景だろう。我が校も例に漏れず学食はあるにはあるが、安かろう悪かろうを地で行くようなところで、拾い食いが得意なワン公や家なき子もギャン泣き脱糞して逃げ出すほどアレなランチが楽しめる。故に、学校の七割方の生徒が弁当か比較的無難で安全な購買パンを選択する。残りの三割は多分、真性のマゾか男根生徒に扮した修行僧だろう。


俺(と姉貴)は柚香がお手製愛妻弁当を毎朝持ってきてくれる為、貧相なランチタイムにならずに済むのだ。果たしてそこに愛が詰まっているのかどうか分からんが、うんまい弁当を自分とユキの分を入れて四人分も手間暇かけて作ってくれる柚香様には感謝しきりである。お礼として美男子のアへ顔写真でも差出人不明で柚香の宛て名で小鳥遊家のポストに投函しておくとさぞ本人は歓喜して、悦んでくれることだろう。一歩間違えれば、ママとパパにバレて修羅場となるかもしれないが。


そして、ここは屋上である。

俺、姉貴、柚香、ユキの幼馴染メンバーでランチタイムと相成っている。本当は伊藤や黒くて長くて硬くて臭いグラサンな不潔男も呼びたいところなのだが、姉貴が伊藤を目の敵にしている為、危険性も鑑みた上での苦渋の決断であるが断念する。もっとも、伊藤はああいうお人好しで朗らかで天使の様な性格をしている為、お昼を共にする女友達がたくさん要るのでぼっち飯ということは無いだろうが。黒くて長くて硬くて臭い方は便所飯になっているかもしれない。


「あぁ!? け、けけけケンくん!? お、お姉ちゃんの食べかけのハンバーグにナニするのよ!」


俺は手つかずの箸で姉貴の弁当のメインディッシュであろうデミグラス的なハンバーグをすかさず頂く。俺と姉貴の弁当の内容は同じであるので、別に要らないのだが……。


「もぐもぐ……もぐ。あぁ、うるせえぞ姉貴。さっきの英語の授業中にみょうちきりんな英文を教えおって……これは罰でござる。あと、そのハンバーグはお前の食べかけじゃねえ、新品です」

「け、ケンくん……? お、お姉ちゃんの瑞々しい唾液はとっても美味しかったカナ……?」

「人の話を聞けっ!? な、何が……『お姉ちゃんの瑞々しい唾液はとっても美味しかったカナ』、だよ!! き、きもいわっ」

「き、きも……きも可愛いって奴? や、やだケンくん……お姉ちゃんのこと可愛いだなんてそんな……ケンくんの、おぉおおおお……おち、おちっおち●ちんも可愛いよ?」

「どぅわぁあああ!? ななななっ何を言ってはりますのん貴方!? 可愛いとか一言も言ってねぇから!! 自分にとって都合の悪いこと流して勝手に新たな単語生み出すのやめてくれます!? あ、あと俺のブツは可愛くねえから!! 可愛いとか色々と男の子として地味にショックだからやめてあげてね!?」

「何を焦ってるのよ、健児。あんたのアレ何てサイズで言えば可愛いもんだけど見た目は汚いわね」

「柚香さん? 淡々とそんな平気な顔して男の勲章を淡々と批評するのやめてくれませんかね? サイズとか見た目とか……貴方は俺の身体だけの恋人なんですかね」


はいー。今回も始まりました、全開な姉貴に、毒舌柚香サァン。

誤解を招きそうなので予め言っておくが、おそらく柚香と姉貴は子供の頃に俺のおいなりさんを見たのだろう。


屋上は基本的には出入り禁止な為、現在、俺達以外の生徒はいない。

だから、姉貴は姉貴で学校でそのひた隠しにしている壊滅的な性格を解放し、ハッスルできるわけで。これならいっその事、姉貴の本性を咳き止めるダム的な役割にその辺に男根生徒がいてくれた方がまだ良かったな。お利口さんの姉貴も本性を知っている俺にとっては不気味だが。但しその場合、屋上は忽ち謎の宗教団体の巣窟と化すだろうが。


「健にぃ健にぃ……あーん……」


目の前の惨状を気にもしないマイペースなユキは俺の肩を左手で軽く叩き、自らの口を小動物の様に半開きして、右手でそのおちょぼ口に指差す。……翻訳すると私にエサを食わせて差し上げて下さい、ってところか?普通、逆なんじゃないですかねぇ。ほら、おにゃの子が男の子の口にご飯をアァンしてあげるみたいな。『アァン、食べてぇ……私の……いっぱい……アァン』とかそんな感じですかね?いまちょっと不覚にもドキドキした殿方は廊下に立っていなさい、下半身だけに。


「ほらよ」

「あむっ……んぐっ……甘くて、おいひい……」


自分の弁当の甘納豆を箸で掬い、ユキの小さな口に放り込んでやる。

因みに俺はまるで親の仇の様に甘いこの甘納豆が苦手である。というより甘いもの全般が苦手である。あと緑黄色野菜も苦手です。海藻類もちょっと……魚介類も臭いがダメです。肉も脂っこくて胃にきついし……あれ、俺一体何が食べれるんですかね。あとは……卵とか炭水化物とか?俺の前世はもしかしたら爬虫類だったのかもしれない。


「健にぃ、頂戴」

「あいよ」

「んくっ……はむはむ、もっと」

「おらよ」

「ふむっ……んむんむ、もういっちょ」

「どっこらせ」

「はぐっ……もりもり、もうひとこえ」

「こら、ユキ。いい加減になさい。健児に食べさせてもらってばっかりじゃなくて自分で食べなさい」


次から次へとエサを要求するユキ、それに応じる俺に対して、業を煮やしたのか柚香は止めにかかる。動物園にいるホース的なナニかにエサやる感じで無意識でやっていたな。ユキは「むーっ……」と頬をたこ焼みたいに膨らまし、軽く俺のお弁当箱を食い入るように見つめていた。どれだけ食い意地がはっているのですかね。冬眠前の森のクマーさんですかね。ていうか、ユキちゃん?何で内容物は同じなのに自分の弁当には目もくれないんですかね。新手の嫌がらせ?再び、自分の弁当を見やると、最初の半分くらいの量に減っていた。すごぉい、ユキちゃん……こんなに減っちゃってるよぉ……僕のマンマァ……。


「あ、ケンくん……それだけじゃ男の子には足りないよね? だからお姉ちゃんの甘露という名の唾液でマーキングしたこのお弁当を食べてね」

「柚香、悪いがお前の弁当ちょっと分けてくれないか?」


俺は姉貴の戯言を無視して、柚香に向き直る。最初から姉貴の言葉がこの星の言語じゃないと思えば、彼女の言っている意味がよく分からないのは当たり前だろう。背後から「キィィィ」とか黒板を爪でこするような金切り声が聞こえてきたがムシ●ング。柚香は快く「ん」といって自分の食べかけの弁当を差し出してくれた。手つかずのユキの弁当があるが、食いしん坊万歳なユキは当然自分の分もせっせと処理するだろうし、柚香は少食だし、姉貴はキチ●イだし、選択肢的に柚香の弁当を催促するのが一番良いだろう。


「あ゛っ……柚香、わり……この食べかけだったな」

「……いいわよそんなの。変に意識する方が何かキモイわよ『スメルマン(但し、姉限定)』」

「……あの、ちょっと忘れかけてたトラウマを重機で穿るのやめてもらえませんかね」


そしてもう一つの卵焼きも咀嚼する。

……ん、んまい。やっぱり、柚香の弁当は世界一うまいなあ。


「あっ、あっ、あ……あーん! ケンくんの間接キスぅううううー!!」


雲一つない春の空に姉貴の絶望的なヴォイスが響き渡った。

ああ、今日もこの国は平和だなあ……。

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