巨乳獣耳お姉さんには気をつけろ 1
俺とセレスは、オークの討伐が終わるとギルドに真っ直ぐ帰った。
そして、依頼完了を報告して、報酬を貰った。
「十万ユルです。お確かめ下さい」
「セレナ、確かめてくれ」
「はいっ!」
やけに嬉しそうなセレナ。
初依頼が成功に終わり、十体も討伐した事でボーナスも貰い、大金を手に入れた。
因みに、この世界の通貨は日本と一緒。
ユルと円が違うだけ。
税は多分、違うと思うが……。
セレナは、報酬を確かめると「全部あります!」と言って、袋を持った。
少し重そうだが、セレナは全く気にせず、笑顔を絶やさない。
「なぁ、セレナ。お金が欲しかったのか?」
「はい! 新しい杖が欲しかったもので!」
セレナは微笑ましい笑顔で言った。
「今のままじゃダメなのか?」
「はい、この杖では私の本気が出せません」
「炎の嵐が本気じゃないって、おまえの魔力はどんだけ底なしなんだよ……」
セレナは、ハッとなり、俺に報酬の半分を渡した、つまり、五万ユル。
「ごめんなさい、私。嬉しくてつい……」
「ああ、いいよいいよ。そんなに謝るなよ」
俺が笑いながら言うと、セレナも顔を上げてホッとなった。
ギルドを出て、店で武器や防具を買おうという話になった。
名案だ。
俺の今の装備は……。
――装備――
武器:剣 防具:黒のパーカー
:ジーパン
:スニーカー
だからな……防具買わないと、この先キツそうだしな。
武器屋に行くと、多種様々な武器があった。
そのカッコよさは、厨二精神を刺激させるには充分なほどだった。
片手剣。双剣。槍。大剣。太刀。杖。召喚書。
だが、俺には剣がある。
もったいなし、しばらくは、こいつで何とかなるだろう。
そう、踏まえた。
セレナは、眼を輝かせ杖を選んでいた。
杖にも色んな種類がある。
火属性特科の杖。水属性。木属性。雷属性。闇属性。風属性。地属性。
合計七つの属性がある。
セレナは、深く悩んでいたが、決断は意外とあっさり。
「これにします!」
「お? 綺麗なエメラルドグリーンだなぁ。どんな杖なんだ?」
「えっと、風属性特科の杖です」
「あれ? 前、火属性使ってたから火が得意かと……」
「火は一番苦手です……」
一番苦手であんな、大災害が起きたのか……。
怖すぎるだろ。
得意な魔法使ったら、この世界消し飛ぶだろ。
俺は防具屋に行きたいので、店を出ようと出口のドアを開けた瞬間――
――ボフッ。
顔に何やら柔らかいモノが……。
ていうか、顔がすっぽりハマってる?
ていうか、マシュマロ?
ていうか、何これ?
「ハ……ハヤト……ッ!?」
セレナの声が聞こえた。
だが、なんだか声が震えていた。
俺の状況がマズイのだろうか? 誰か説明してくれ。
その時、全てを理解させる、ある意味暴言な言葉が飛んできた。
「アッハ~ンッ……私のおっぱい……好きなの? も~う、可愛いなぁ、襲っちゃうよ~?」
「え、嘘!? マジ!? 俺、あの、す、すみません!」
俺は急いで、胸から顔を離して視界を取り戻し。
日本の伝統的、謝罪フォーム。
土下座をした。
すると、謎の巨乳お姉さんは「いいよいいよ」と言って、俺を起こした。
俺は再び頭を下げて謝罪した。
確かに、人生で二度はないだろう、素晴らしい経験をしたが、これはイケナイ。
こんな不埒な行為はダメだ。世間的に……男として。
「ハ……ヤ……ト……」
後ろから、凄まじい鬼のような殺気を出しているセレナ。
ヤバい、これはヤバい。
死ぬ。完全に死んでしまう。
すると、謎の巨乳お姉さんは、トンデモナイ事を言い出した。
「え? 何~? 妬いちゃってるの~? なら、尚更やったげよー」
「ちょっと、あっ……」
再び、俺の顔はふかふかのマシュマロに埋もれた。
ああ、幸せ……。
「ハヤトォォォォ!! 変態、成敗!」
「うわ、ちょっと待って!」
しかし、セレナの怒号は止まらなかった。
「スモール・フレイム!」
セレナの魔法によって生み出された小さな炎は、俺のお尻に点火された。
「あっちぃぃぃぃ!! あ、熱い熱い! ぎゃあああぁぁぁぁ!!」
――何とかセレナの怒りは静まった。
お尻が熱い。お気に入りのジーパンが焦げた。
お尻も火傷していて、お尻に冷却シートを張るはめに……。
俺がお尻をさすっていると、謎の巨乳お姉さんが喋り始めた。
「私は、エミル・グリズリーでーす。よろしく~! 種族は獣人族だよ~ん」
「獣人族だとっ!?」
咄嗟に俺のオタ精神が反応した。
頭部に視線を移した。
そこには、髪の間からピョコッと生えている、獣耳。
明らかに作り物じゃない、動きが自然的すぎる。
そして、フリフリと揺らしている、お尻付近から生えている尻尾。
間違いない……。
「獣耳ッ子だぁぁぁぁぁあああぁぁぁああっっ!!」
俺が叫ぶと、エミルは嬉しそうに話に乗って来た。
「え? この耳と尻尾が好きなの? 触ってもいいよぉ~」
「本当!? んじゃ、遠慮なく~」
「コラアアアァァッッ!!」
獣耳まで後、数ミリのところで、セレナの拳が俺の後頭部にヒットした。
……痛い。
「セレナ、おまえ武闘家のセンスあるぞー」
軽い冗談のつもりだった。
しかし、どうやらセレナは冗談の通じない奴らしく。
再び、俺のお尻に小さな炎が点火された。
――登場人物――
エミル・グリズリー 獣人族
職業:武闘家
好きなモノ:ショタ。Hな話に弱い男の子。
嫌いなモノ:Mな男。自分を自賛する奴。
好きな言葉:女の魅力はやっぱり胸だろぉ!
補足:嫌がる男の子や、抵抗する男の子を攻めるのが好き。
Mみたいに、喜んで受ける奴は好まない。
重度の変態。ハヤトでも圧倒されるほどだ。