転生したが無駄なチートを授かることに……3
冒険者ギルド……。
それは、様々な地方から来た冒険者が集う場所。
時には仕事を探し、時には仲間と久しく会ったり。
時には、安酒を飲んだり……。
つまり、冒険者という職に付く限り、絶対に入って損はないということ。
ギルド内の仲間と共にパーティーを組み、迷宮を突破したり、レベル上げに励むなり……。
そして、ギルドでは様々な出会いがあるっ!
恋の出会い……運命の出会い……不幸な出会い。
出会い厨が喜びそうだな、うん。
まぁ、そんな感じの場所なんだ。
ゲームの中では、ギルマス(ギルドマスター)を務めていてな。
百戦錬磨の英雄、グランロデオ・ヒメラギと呼ばれていたな。
懐かしいぜ。もう、ゲーム出来ないと思うけどな……。
そんな事をグダグダ考えていると、セレナが俺の肩に手を乗せた。
おいおい、いきなりそんなに距離縮めていいのかい?
やっちまうぜ? おっと、いかんいかん。クールで行こう。
「どうした? セレナ」
「あの……私、友達いなくて……よかったら、私とパーティー組んでくれますか?」
「もちろんだ! よろしくな、セレナ」
「はいっ。よろしくお願いします、ハヤト」
そして、セレナの手が肩から滑り落ちて離れた。
ああ、もっと触ってていいのに。
俺とセレスは早速仕事を探そうと、掲示板に集った。
やはり、最初はゴブリンとか、オークが妥当なんだろうか……。
いきなり、上位の依頼を受けると手っ取り早く金が入るが……。
「あの、最初はやっぱり、オークなどにしませんか?」
「そう、だな。そうしよう!」
「あの、さっきから気になってたんですが……」
おいおい、チャックはちゃんと閉まってるぞ。
次は何だ? 思わず身形を確認してしまう。
「ハヤトは、武器持ってないのですか? どこにも装備してないので……」
「あああっ、武器!! そうだ、俺……ん?」
俺は腰に付いている、ポーチに視線を向けた。
俺の感が滾る。
「ひょっとして…………やっぱりっ」
ポーチを開けると、中は異空間になっており、通常は入らない物も、このポーチならいくらでも入る。
つまり、アイテムポーチだ。
中を漁ると、手紙と一本の剣があった。
手紙にはこう書いてあった。
「ハヤト・ヒメラギへ。
よう、ハヤト。妾じゃ、神様じゃそ。
お主は皮肉のも、超外れクジを引いてしもうた。なので、この剣を授けよう!
名は――剣。その名の通り剣じゃ。
これで、真の英雄になるのじゃな、頑張れ。神様より」
おい…………。
俺はこんな、ダメ神を今まで見たことない。
いや、そもそも神なんて見たことないが……。
剣の名は、、剣? そんなのあたり前じゃん。
普通の剣だよね? 大して強くない、普通の剣だよね?
真の英雄? こんな武器でなれたら、魔剣所持者が泣くぞ。
俺は深くため息を吐いた。
そして、世に訴えた。
「どうして、いつも最後はこうなんだぁっっ!?」――と。
俺は気を取り直して、セレナとの会話を続けた。
「剣なら、あるよ。へへ」
声から絶望が読み取れるほど、酷い声だった。
俺はセレスの提案、オーク狩りを選び、手続きを済ませた。
そして、ギルドを出て、オークが住み着く荒れ地へと向かった。
町を出て二キロほどなので、移動は楽そうでよかった。
――オークの荒れ地――
俺とセレナはオークの出現場所、オークの荒れ地を歩いていた。
見る限り、崩壊した建物、カラッと乾いた空気が漂っている。
砂混じりの風が肌を叩きつけ痛みを感じる。
それにしても……。
「なぁ、セレス。オークが一匹も見当たらないんだが……本当にいるのか?」
「そうですね……でも、依頼書には、ここに出現すると、書いてました」
「う~ん。そうだといいけど……」
でもなぁ、流石に出てこないとこっちが不安になるなぁ。
ゲームなら、次から次にmobがひょいひょい出るのに。
現実は厳しいモノなんだな。
ゲームの設定の話しになるが。
通常、ダンジョンや迷宮でモンスターなどを倒していくと、当然モンスターの底が着いてしまう。
それを回避するシステム。
――リスポーン。
皆、リスポンや、湧きなどと略している。
このシステムを活用することで、モンスターが死んでも、新たなモンスターを出現させ、底が着かなくなる。このシステムを逆にプレイヤーが活用し、レべリング。
つまり、永遠とレベル上げが始まる。
――とまぁ、こんな感じでゲームは上手くいくが……。
「誰だ!!」
「え……」
視線を感じ咄嗟に後ろを振り返った。
が、誰もいなかった。
何だろう……この胸騒ぎ。
「ま、さか……。セレス、戦闘準備だ」
「え、でも、オークはまだ出てきてないですよ?」
「ああ、そうだな……」
俺は背中に装備していた、剣を抜いた。
「正確には出なかったんだ。このために」
「え、どういう事ですか?」
「セレス……推測だが、この先は行き止まりのはずだ。そして、俺たちは閉じ込められた」
俺がセレスに言うと、物影や、建物の中からゾロゾロと、オークの群れが出てきた。
セレスも段々状況が理解出来始めた。
最後に俺が言った。
「ゲームと違って、現実のこいつらには知性と知識がある。コンピューターの指示を真っ直ぐこなす、mobとは全然違う。考えてみればここはあいつ等の縄張り。敵襲の対策ぐらいするだろう。甘かったな」
「そ、そんな……どう、します?」
俺は、フッと、セレスに笑った。
ここで、異世界系ラノベの主人公はこう言うだろう。
――そんなこと決まっている……戦うしかないだろっ!! と。
だが、俺はこう言う。
「逃げるぞ、セレス。逃げるが勝ちだ、覚えとけ。ついでにアッカンベーしとけ」
かっこ悪い? 何とでも言え。
俺は新たに学んだんだよ。
「現実は……甘くねぇ……」
俺たちは、進行方向を変えず、行き止まりだろうと言った方向に進んだ。
さてさて、どうしたもんか……。
オークの足は速くないが、行き止まりでアウト。
戦っても数の力でアウト。
時間との戦いで、いずれアウト。
スリーアウト、チェンジだな。
あ、俺のチート、使えるかも知れないかも……。
――登場人物――
ハヤト・ヒメラギ
職業:ニート&剣士
好きなモノ:ネトゲ。ゲーム。女。寿司。自分。
嫌いなモノ:世間。野菜。
好きな言葉:英雄と書いて、ニートと言う。
神様
職業:神
好きなモノ:イケメン。(ハヤトはイケメンの中に入っているそうだ)
嫌いなモノ:ゴキブリ。
好きな言葉:褐色肌萌え。(自分の事と思っているそうだ)
セレス・レオン・ハート(エルフ)
職業:魔法使い
好きなモノ:友達魔法。デザート。
嫌いなモノ:人を傷つける人。強欲な人。
好きな言葉:魔法は神秘であり、希望です。