転生したが無駄なチートを授かることに……2
ああ、やっぱり無駄なチートだったのかぁ。
俺は心の中で、何度も悔んだ。
魔剣さえあれば。魔剣さえあれば……。
畜生……。
俺は、とりあえず何処に転生されちゃったか、辺りを見回した。
大体、女の子がこの辺で出てくるイベントなんだよなぁ。
異世界系ラノベや、アニメでは定番のように、起きたら女の子。起きてしばらくすると、女の子出現。
このような事が決まって起こる。
そして、その子と冒険してハッピーエンドってなるわけだが……。
女の子……来ないなぁ。
まあ、焦るな。容姿は普通だが、ラノベの主人公も普通の容姿という設定が多い。
悪魔で設定だが……。
俺辺りを見回したが、視界に移るのは木々の緑一色。
これ、来ないパターン?
はあぁ。もうめんどくさ。
「歩くか……」
俺は森を出ようと歩きだした。
薄暗い、光の筋が少ない森の小道を淡々と、歩いて行った。
俺はふと、気になった。
俺のチートどんなのだろう? と。
そんな事を考えていると、脳内に文字が浮かび出した。
「おおっ、これが念じれば出るって奴か!?」
俺はオタク精神を爆発させ、感激していた。
主人公になれた気分で最高だ。
脳に浮かびあがる文字に集中して、解読を始めた。
そして、こう記されてあった。
――チート――
・過剰な挑発:相手の攻撃力を百倍にして自分の防御力を半減させる。
・スライムボディ:スライム状の粘液が体をコーティングし、ツルツルにさせる。
・釣りはいらねぇぜ:精算時のお釣りが貰えなくなる。
・臆病者の知恵:影が極限にまで薄くなり、目の前に居ても認識不可。
・スーパーバニッシュハイパーキャンセル:半径250メートル以内の全ての魔法を秘めたモノを無効化させる。
※レベルが上がると、まだまだ増えるよ。使いたいチートを叫べば発動するよ! ゲームの中のチートみたいなモノだよ。
――つ、使えねぇ……。
過剰な挑発と、釣りはいらねぇぜって、完全にこっちが不利じゃん。
何考えてんの? このチート作った人誰だよっ?
まあ、最後の奴は何とか、使えそうだが……。
さて、気を取り直して歩きますかぁ。
自分の不甲斐なさに絶望し、何とか立ち直ろうとする。
とりあえず、町に向かわないと。
町に行けば職も見つかるだろうし……。
俺は森の中をさ迷うこと十分。
森から出た。
運の良い事に町は森の目の前だった。
「ラッキー!」
俺は町に足を踏み入れた。
感想を一つ……やはり、ファンタジー。
武器屋。防具屋。雑貨屋。などなど、冒険者などを支える品が取り添えられていた。
うむ、素晴らしいな。
俺は関心しながら、町をほっつき歩いていた。
おっと、ギルドで冒険者登録をするか。
稼ぎもいいと思うし、そうするか。
「すみません!」
「え、何ですか?」
俺は、腰まで届くシーグリーンの髪でレモンイエローの色をした瞳の少女に話しかけた。
少女は、若干動揺しながらも、話を聞いてくれた。
「あの、冒険者ギルドってどこか分かります?」
「ああ、私も今、向かってるところです。ご一緒しますか?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
少女は「いえいえ」と返し、微笑んだ。
おしとやかな性格で、笑顔の可愛らしい少女は実に魅力的だった。
俺は、少女と会話を挟みながらながら、歩いた。
自己紹介なども済ました。
少女の名前は、セレナ・レオン・ハート。
耳が長いとこから、エルフだと思われる。
話しによると、家出をして働くために冒険者になるとか……。
「ハヤトは、何で冒険者に?」
「ああっ、ええっと。セレナと似た感じかな」
そんな感じで、自分が転生者などとは、誤魔化した。
下手をしたら、狙われる立場になる可能性もあるからな。
「ずっと、気になってたのですが……」
セレナがまじまじと、俺を見つめたり、視線を動かしたり。
眼が泳いでいる。何かあるのだろうか?
「どうした? 言ってみろ」
「あの……ズボンのチャック……開いてます」
「………………」
俺は無言で、即座にチャックを閉めた。
恥ずかしっ、しかもチャックから、シャツはみ出てたし……。
ちょっと、気まずい空気になったなぁ。
チラリとセレナを見てみると、顔を赤く染めてもじもじしている。
そんな可愛いことしないでおくれよ……。
俺は状況を打開しようと、話題を振った。
「セレナの持ってるのって、杖だろ? 魔法使えんの?」
「あ、はい。一応、エルフですので……」
「いやぁ、すげぇなぁ。魔法か~」
俺の必死のトークスキルを持て成した。
セレナは、最初の笑顔を取り戻し良い感じの空気になった。
その後も、俺とセレスは会話を絶やすことなく、続けた。
冒険者ギルドに着いた。
木造の建物で、高さもそれなり。
中規模ギルドってとこだろう。
俺はセレスを後ろに連れ、中に入った。
そして、カウンターで華やかな笑顔を魅せている、受付の人に話しかけた。
「あの、俺たち冒険者登録しに来たんですが……」
「新人さんですねっ。良いですよ。では、こちらの書類に従い必要事項を記入してください」
受付から、用紙を渡されペンで名前などを書いていった。
そして、さっそく詰まった。
――登録書――
名:ハヤト・ヒメラギ 種族:ヒト
職業: 主武器:
出身: 自分の長所:
短所:
なんじゃこれ!? 高校の面接か!?
職業? ニートだよっ!
ったく、しょうがねぇ。
適当に書こ。
――登録書――
名:ハヤト・ヒメラギ 種族:ヒト
職業:ニート 主武器:剣
出身:異世界 自分の長所:女を大事に出来る事。
短所:女に限る事。
結果、これを提出した。
受付は若干引き気味だったが、笑顔を絶やさず対応。
いい仕事してる。
「登録完了です! 入団、おめでとうございます!」
こうして、俺とセレナは冒険者になった。