私が幸せになってもいいのですか? 中編
「保護?私はここから出られるんですか?外の世界を見ることができるのですか?」
私は、警戒しながらも、目を輝かせていた。
「あぁ、これからは、殴られることも食事を抜かれることも、今君が苦しむ原因になることはすべてなくなる。外の世界だって自由にみられるようになる。約束しよう、君が苦しむことを俺たちはしないということを。」
私のほほに暖かい何かが流れた。
「本当に?もう、骨が折れるまで殴られたりしないの?おいしいご飯を食べれるの?外がどんな世界か、見れるの?」
「あぁ、約束する。だからこの手を取ってくれ。俺の手を取ってくれるなら、これからは俺が君を守ると約束しよう。」
名無しは、ナハトの手を取り生まれて初めて、にっこりと笑った。
どこかへ向かって走る馬車の中には、ナハトとラノア、そして、ナハトの膝で寝ている少女がいた。
「それにしてもサタナージュ家の奴ら、血のつながっている家族にこんなことをしていたとは。良かったんですか?隊長。サタナージュ家にいる者は全員捕らえて、処刑せよ。との命令でしたのに。国王陛下直々の。」
ナハトはジトッという目でラノアを見ながら少女の頭をなでていた。
「確かにこの少女はサタナージュ家の血縁者ではあるが、暴力を毎日のように受け、満足な食事も与えられていなかったんだぞ?そんな子を処刑するなどあってはならないことだ。だから、今王城へ向かって王にこの少女だけは何の罪に問わないようにお願いしに行くんだろう?」
この二人は、王に
「サタナージュ家にいる者すべてを捕らえ、国民の前でその罪を明らかにさせろ。」
という命令を受けているのだ。
王もまさか、サタナージュ家に妾の子がおり、その子が酷い暴力を受けているなど思っていないのだ。
だから二人は、この少女を助けてもいいか尋ねに王城へ向かっているのだ。
「この子には助けると言っちゃいましたが、王に殺せと命令されたらどうするんですか?」
「王はそんなに厳しくないだろう?王は子供が大好きで、孤児院に多額の寄付をしているんだ、この少女の事情を知れば守ってやれと言われるだろうさ。」
「たしかに何もなければ言うと思いますが、今はそう言ってくれるかわからないですよね?だって、サタナージュ家は王に毒を盛り暗殺しようとしたんですよ?ほかにもいろんな悪事が見つかりましたし。」
「それを俺たちが説得するんだよ。こんなにガリガリで外に出たことがない少女が処刑されるなんて、それこそ間違っているんだよ。」
3人が乗った馬車が王宮に着いた。
「んッ、ここは?」
「起きたか、ここは王宮だ。今から君には王に会ってもらう。そこで自分がどんな生活を送っていたのか話してくれ。」
「わかった。」
コンコンコンッ
「入れ。」
「失礼します。」
ガチャッ
そこにはベットに横になっている男性がいた。
「お加減はどうですか?陛下。」
「大丈夫だ。それよりもその君が抱えている少女は?ものすごくガリガリだけど生きているのかい?」
陛下と呼ばれた男性は体を起こした。
「生きておりますよ。この少女はサタナージュ家の妾の子だそうです。陛下の命令では、サタナージュ家の者はみな捕らえよとのことでしたが、この少女だけは処刑しないでいただけないでしょうか?」
陛下は考えるような顔をした後、少女に訊ねた。
「君がどんな生活を送っていて、どんな扱いを受けていたのか聞いてもいいかい?内容によっては、助けることができるかもしれない。」
ー私を助ける?さっき処刑とか言っていたけどどういうことなんだろう?でも、この人はとても優しい目をしてるから、何を言っても大丈夫な気がする。ー
「私はサタナージュ家に生まれた妾の子です。名前はなくて、よく壊れないサンドバックと呼ばれてました。」
そこにいる全員の顔が険しくなった。
「壊れないサンドバック?どういう意味なんだい?」
陛下が先に質問した。
「私のスキルは、超健康です。超健康は、たとえどんなに栄養を取っていなくても健康そのもので、どれだけけがを負っても、時間がたてば回復するというスキルです。」
それを聞いた3人はとても嫌な予感がした。酔い用を取っていても死なず、傷を負っても回復する、そして壊れないサンドバックと呼ばれている。それだけでも、どんな扱いかは想像がつく。
「私は毎日、暴力を受けていました。酷い時は、骨が皮膚を貫通したり、骨が肺や心臓に刺さったりもしました。でも、どんな傷でも時間さえ経てば回復してしまうので壊れないサンドバックと呼ばれていました。何回か自殺しようとしましたが、首を絞めても、炎の中に飛び込んでも、毒を飲んでも、回復してしまい、失敗してしまいました。食事は食べ残しを貰うので、ほとんど貰えず、こんなガリガリな体になってしまいました。最近では骨も折れやすくて、すぐに骨折していました。他にも、家の家事のほとんどは私が行っていました。洗濯、掃除、料理、寝室準備など言いきれない程やっていました。」
名無しが話終わる頃には、3人の顔色はものすごく悪くなっていた。
「俺が思っていたよりも、数倍も悪い状態じゃないか。一応は血が繋がっている家族だろう!?何故そんな扱いができるんだ!!」
ー妾の子はみんなそんな扱いではないの?これが当たり前だと思ってた。ー
「本当だな。そんな扱いを受けているのだから、この少女はサタナージュ家とは関係ないと言い切れるだろう。ゲホッゴホッ」
陛下は血を吐いた。
「陛下!?くっ、どれだけ時間が経っても陛下の毒は消えないのか!?」
ー毒?陛下は毒に侵されているの?この人は、多分とても優しい人だ。この人達は、私の話をしっかり聞いてくれた。だからー
「陛下!あの、私の血を飲んでください!!」
そう言って自分の指を噛みちぎった。
「なっ!どういうことだ?」
「私の血を飲めば、私のスキルが少しの間血を飲んだ人も使えるようになります!」
「そんなの聞いたことがないぞ!?だが、かけて見るのも悪くないかもしれない。」
陛下は、私の血を垂らした水を飲んだ。そして、陛下の毒は消え、体に一切の不調がなくなった。
「この子は私の命の恩人だ!私もできる限り守ると約束しよう。カーチェス・ディルヘイヤの名にかけて!」
「はっ!ありがとうございます、陛下!」
ー今のって名の誓い?自分の名前をかけて誓うってことは、命をかけて誓っているということ。誰かがそう言っていたのを聞いたことがある。私は、本当に助かるんだ。あの地獄から。ー




