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第二章 左眼に傷のある猫1

 神奈川県Y市空暮町某所。そこに田舎町には場違いな一棟の洋館がある。周囲の建物から一際浮いたその建物は、ドイツより移住したとある女性の住居であり、空暮町でのみ普及しているマイナー教団の教会でもあった。


 マイナー教団の名前はホルトハウス教団。ドイツより日本に移住した女性――聖女アンナ・ホルトハウス・ヴァーゲを中心として活動する宗教団体である。


 その教団の拠点となる洋館の一室。高価な家具が揃えられていながらも、雑誌や服などが汚らしく床に散乱しているその部屋に、先日十五歳を迎えた一人の少女がいた。


 腰まで伸びたボサボサの金髪。眠たげに瞼が半分落ちた碧い瞳。分厚い眼鏡に緑のジャージ。ホルトハウス教団の中心である聖女アンナの一人娘にして、聖女の後継者ともなる少女。彼女の名前はリア・ホルトハウス・ヴァーゲ――日本名で秤谷莉愛だ。


「お――うぉおおおおおお!」


 聖女とは慎ましいもの。そんな幻想をぶち壊すような唸り声を上げて、莉愛はジト目を大きく見開いた。彼女の手には一台のスマホ。某アニメキャラのストラップがついたそのスマホを握りしめて、莉愛は胡坐を掻いているベッドをバシバシと叩いた。


「おぉおおおおい! 桜井ぃいいい! 桜井ちょっと来てくれよぉおお!」


 大声を上げる莉愛。彼女が叫んでから約五秒。廊下から慌ただしい足音が聞こえてくる。そしてその足音が部屋の前で止まるなり部屋の扉が勢いよく開かれた。


「どうかされましたか、リア様! まさか敵襲ですか!?」


 扉を開いたのは若い女性だった。ポニーテールの黒髪に鋭利な黒い瞳。女性らしい凹凸ある体にそれを包み込む紺色のパンツスーツ。一見してどこにでもいるOLだが、その彼女の手には普通のOLが決して手にしないだろうあるモノが握られていた。


 そのあるモノとは黒塗りの鞘に納められた一振りの刀である。


 黒髪の女性が刀を鞘から引き抜いて部屋の中をジロジロと睨みまわす。警戒心を剥き出しにするその彼女に莉愛は呆れて溜息を吐いた。


「何やってんだよ、桜井?」


「……敵襲ではないのですか?」


 きょとんと首を傾げる黒髪の女性――桜井花奈に莉愛はまた大きく溜息を吐いた。


「敵襲ってなんだ? こんなマイナー教団を襲撃する馬鹿がいるわけねえだろうが」


「油断されてはいけません、リア様」


 桜井が刀を鞘に収めつつ頭を振る。


「聖女とは世界を平和へと導くことができる救世主です。しかしそれが故に、不届きな輩に理不尽に狙われることもあります。私は聖女の後継者たるリア様の騎士です。私はいついかなる時も貴女様を守る義務があるのです」


「あーはいはい、そりゃ大したもんだ」


 時代錯誤の騎士を自称する女性。その彼女の言葉を莉愛は適当にいなす。五百年前に悪魔を討伐した聖女。科学が発展した現代において、もはやおとぎ話に過ぎないその教団の伝承を桜井は本気で信じているらしい。


(実際これまでそんな危険なんか一度もねえのに……真面目なもんだよ)


 莉愛はそう肩をすくめつつ、扉の前に立っている桜井をちょいちょいと手招きする。


「んな馬鹿なこと言ってねえでこっち来てみろよ。面白えことが起こってっから」


「面白いこと……ですか?」


 桜井が疑問符を浮かべながらベッドへと近づく。ベッドの前に立ち止まった桜井に莉愛は手に持っていたスマホをかざして見せた。スマホ画面に映されているのは先日作成したばかりのインストグラムのアカウントページ。莉愛はアカウントページからダッシュボードを開くとスマホ画面を指差した。


「昨日投稿した写真なんだけどさ、閲覧者の数が爆上がりしてんのよ! もう五千人にも達しているぜ? フォロワー数も百人超えているし、こりゃもう快挙だろ!」


「そう……なのですか? 私はこういうのに疎いのでいまいち分からないのですが」


 困惑している様子の桜井に、莉愛は「きひひひ」とニンマリ笑う。


「アタシだって別に詳しくねえけど、始めたばかりは閲覧者が一人か二人ってのも珍しくないらしいぜ? 宣伝しても集まるのは身内だけってな。それと比べれば十分過ぎる成果だろ。それに見たところまだ勢いは衰えてねえし、これからも伸びていくぜ」


「……そうですか。私はピンときませんが、リア様が喜ばれているなら――ん?」


 一度ニコリと微笑んだ桜井だが、何かに気付いたのかその表情をすぐぎょっとさせた。


「ちょ――ちょっと待ってください! 閲覧者が増えているということは、昨日撮影したあの恥ずかしい写真が、大勢の人に見られているということですか!?」


「まあそうなるな。因みに写真に対するコメントも幾つか来てるぜ。『エロい』とか『イヤらしい』とか『爆乳ペロペロ』とか『胸の谷間に顔を突っ込みたい』とか――」


「うきゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 桜井が顔を真っ赤にして発狂する。コメントの内容が刺激的だったらしい。もっとも彼女のその反応を見越して、莉愛は悪質なコメントを敢えて抜粋したわけだが。桜井がカタカタと全身を震わせて力なく膝をつく。


「ううう……せめて見ている人が少なければ救いもあったのに……もうおしまいです……私はもはや全人類に変態露出狂だと後ろ指をさされて……生きていくのですね」


「大袈裟だな。芸能人なんてこれより過激な写真をアップしてんじゃねえか」


「そういう方々は可愛いから許されるんです……私のような凡人なんて……」


 客観的に判断して、桜井は美人でありスタイルも抜群である。だからこそ莉愛も彼女をインストグラムの演者に抜擢したのだ。だが自身に厳しい性格のためか、彼女は自己評価を著しく低くしている節がある。なんとも損な性格だと言えるだろう。


(アタシからすれば嫌味くさいけどな)


 桜井には及びもつかない小さな胸を自覚しながら莉愛は嘆息する。別に胸の大きさなどどうでもいいが、持たざる者としてはその類の謙遜は良い気分ではない。とりあえず落ち込んでいる桜井は放っておくことにして、莉愛は「さて」と金髪をポリポリ掻いた。


「とりあえずルーカスの奴にも伝えてやるか。おーい! ルーカス――」


「お呼びですか? リア様」


「うぉあああああああああああああ!?」


 唐突に背後から声が聞こえて莉愛は思わず悲鳴を上げた。ベッドの上に倒れ込みながら聞こえてきた声に振り返る。いつの間にかベッド脇に一人の男性が立っていた。


 長身美形の若い男性だ。首筋で束ねた銀髪に切れ長の銀色の瞳。皺のない黒スーツに白手袋。並の女性なら誰もが恋に落ちてしまうだろう優しい微笑みを浮かべて、ベッド上で尻もちを付いている莉愛を見つめている。


「お前――ルーカス!? いつの間に!」


 驚愕に声を荒げる莉愛。動揺する彼女にルーカスが流麗な動作で一礼する。


 ルーカスは莉愛が物心をつくより前から屋敷で働いている年齢不詳の執事である。嘘か誠か、母がまだドイツで暮らしていた頃からの知り合いらしい。それが事実なら若くても三十を超えていそうだが、莉愛の知る限りで彼の容姿は昔からまるで変わっていない。どこか得体の知れない自身の執事に莉愛は動揺を誤魔化すため舌を鳴らした。


「相変わらず不気味な奴だな……てかドアも開けずにどう部屋に入ってきたんだ?」


「主からお呼びがかかれば執事は時空をも超える。そういうものでございます」


「絶対違う。何にしろ、これからは普通にドアを開けて入ってこい。ビビるから」


「善処します」


「死んでも遵守しろ」


 イケメンスマイルで残念なことを話すルーカスに莉愛は冷静にツッコんだ。莉愛の指摘をさらりと無視してルーカスが床に散乱している雑誌や服をぐるりと見回す。


「それはそうと、また部屋が汚れておりますな。そろそろ片づけを覚えてください」


「うるせえな。雑誌はまた読み直すから床に落ちてるほうが効率的なんだよ」


「服などタンスから出しても、最近はいつもジャージばかりではございませんか」


「服は一応毎朝選んでんだよ。だけど途中で面倒くさくなってジャージになるだけ」


「やれやれ。仕方ありませんね」


 ルーカスが苦笑して床に散乱した雑誌と服を片付けていく。ものぐさな莉愛の部屋が常にある程度片付いているのは、ルーカスがこうして定期的に掃除しているためだ。几帳面に雑誌をまとめているルーカスに、莉愛は特に感謝するでもなくスマホをかざした。


「そんなことより見ろよ。昨日投稿した写真が人気爆上がり中なんだぜ」


「それはそれは――おめでとうございます。さすがリア様の写真でございますね」


「まあな。アタシの実力なら当然よ」


「しかし昨夜までは閲覧者が少ないと嘆いでおいでだったと記憶していますが、随分と急成長されたようですな。何かカラクリでもあるのでございましょうか?」


「昨日もちらっと話しただろ? アカウントを有名にする策があるってよ。昨日のうちのそれを仕掛けておいたんだが、思いがけずその効果が早く現れたみたいでな」


「……あの……リア様の言うその策とは結局何だったのでしょうか?」


 落ち込んでいた桜井が莉愛に尋ねる。どうやら質問できる程度には精神も回復したらしい。莉愛はベッドの上に立ち上がると、「いいだろう!」と威風堂々と胸を張った。


「IT技術の進歩に置いてかれた化石脳のお前たちにも教えてやる。アタシがいかにインフルエンサーとして大成功を遂げ、莫大な富を得るに至ったか――その輝かしい軌跡を」


「えっと……一応確認ですが……まだ一銭も稼いではいないんですよね?」


「アタシは捕らぬ狸の皮算用を地でいく女だ」


「威張らないでください」


「一夜にして急成長したアカウント。その秘密は――これにある!」


 桜井の指摘を無視しつつ、莉愛はとある人物のアカウントページをスマホ画面に表示した。スマホ画面に表示された女性の写真。それを見て桜井が目を丸くする。


「この人は確か……リア様が昨日お話ししていたインフルエンサーですよね?」


 桜井の確認に莉愛はニヤリと笑う。


 明るいブラウンの髪に澄んだ青い瞳。人形のような整った顔立ち。若干十五歳にして大人びた雰囲気を湛えたその女性は現在最も注目されているインフルエンサーの一人だ。


 彼女の名前はセリス。一年前にインストグラムのアカウントを開設した、ネット界隈のいわゆる新参者である。だが彼女は短期間で多くの支持を獲得、瞬く間に有名インフルエンサーの仲間入りを果たした。そして一部熱狂的なファンの発言を発端にして、彼女は今やネット上でこう呼ばれるまでに至る。


 ()()セリス――と。


「私は彼女を認めていません」


 桜井が表情を渋くしてセリスの写真をじっと睨みつける。


「アンナ様やリア様に許可なく聖女を名乗るなど許しがたいことです。すぐに抗議文を送りつけて己の愚行を分からせる必要があると思います」


「昨日も話したが、コイツが聖女と呼ばれていることなんざどうでもいいんだよ」


「よくありません! 聖女とは五百年前から脈々と受け継がれてきた由緒正しき――」


「ああもう、話が進まねえから聖女云々の話題はなしだ! それより言いたいのは、アタシたちのアカウントが急成長したのは、コイツを上手く利用できたからってことだよ!」


 桜井の愚痴を遮り、莉愛は口調を強くしてそう言った。不満げに口を閉ざしながらも首を傾げる桜井。疑問符を浮かべる彼女に莉愛はスマホを揺らしながら説明を始めた。


「インストグラムにはお気に入りの相手をフォローする機能があってな、フォローすることでそいつの投稿とかを逐次知ることができんだ。ここまでは理解できるな?」


「……はい。まあ何とか……」


「んでここからが重要なんだが、そのフォローした相手ってのは他人からも分かるようになっている。つまり有名インフルエンサーのフォロー相手を確認すれば、そいつが誰を気にかけているのか知れるってわけだ」


「は……はあ?」


「まだ分からねえか? 要は有名インフルエンサーにフォローされるだけで多大な宣伝効果が見込めるってことだよ。そんでこの超絶注目されている聖女セリスが昨晩――」


 莉愛はスマホを高らかに掲げた。


「アタシたちのアカウントをフォローしたのだぁああああああああ!」


 莉愛の胸中で軽快に鳴り響くファンファーレ。もっとも実際はどこか冷えた静寂が流れるだけだったが。スマホを掲げたまま動きを止める莉愛。桜井が思案顔のまま首を捻る。


「えっと……すみません。よく分からないのですが、それはすごいことなんですか?」


「すっげえよ! 阿保みたいにあるアカウントの中で、昨日開設したばかりのアタシたちのアカウントを有名人のセリスがフォローしたんだぞ! 普通あり得ねえって!」


「そう……なんですね?」


「そうだよ! なんでこの凄さが伝わんねえんだ!? 乳が無駄にデカいせいか!?」


「む、胸は関係ありません!」


「なあルーカス! お前だったらこれがどれだけ凄いことか分かんだろ!?」


「もちろんでございます、リア様!」


 部屋の掃除を滞りなく終えていたルーカスが莉愛の言葉に力強く同意する。


「これは人類史に刻まれる偉大な成果だと申しても過言ではありますまい! 相対性理論の提唱者である彼の者もリア様の果たした偉業の前には裸足で逃げ出すことでしょう!」


「そこまでじゃねえよ」


「そこまでではありません!」


 あっさりと前言を覆して、ルーカスが「しかし――」と思案顔になる。


「セリスさんはなぜリア様のアカウントをフォローされたのでしょう? 星の数ほどある無名アカウント。偶然リア様のアカウントに目を止める可能性は低いと思いますが?」


 話を促すための疑問。ルーカスの意図を察して莉愛はニヤリと笑った。


「まあただ座して待つだけじゃフォローなんてされねえだろうからな。当然小細工させてもらったぜ。ネットで別垢を購入してセリスの奴をフォローしたんだ。んでもって何気ないコメントで、セリスをアタシたちのアカウントへと誘導したってわけ」


「べ、べつあか?」


 先程から困惑しっぱなしの桜井に、莉愛は手をハラハラ払いながら説明する。


「別アカウント。簡単に言えば他人に成りすますってことだな」


「そんなこと簡単にできるのですか?」


「別垢作るだけなら簡単だぜ。ただ履歴を覗かれたら即席のアカウントだってバレるからな。アタシはネットで活動履歴のある他人のアカウントを購入した」


 さらりと言うが、他人のアカウントを購入するのは当然規約違反だ。しかし真面目一辺倒な桜井がそれを知れば口やかましくなることは目に見えている。ゆえに莉愛は敢えてその事実を伏せておいた。「へ、へぇえ……」と絶対理解していないだろう桜井を無視して、莉愛は「まあだけど」と腰に手を当てる。


「ここまで上手くいくとは予想外でもあったな。セリスの他にも踏み台にするインフルエンサーは何人かピックアップしていたが、まさかこうも簡単に撒き餌に掛かるとは」


「……踏み台とか撒き餌だとか、おおよそ聖女に似つかわしくない言葉ばかりですね」


「何にせよ一定の注目を浴びることには成功した。後はこの注目を維持しつつも拡大していくことだ。つうわけで――今日もはりきって写真を撮りに行くぞ!」


「ふぇえええええええええええ!?」


 莉愛の言葉に、床に座り込んでいた桜井が顔を赤くしてガバリと立ち上がった。


「撮影って――また昨日のような恥ずかしい写真を撮るつもりですか!?」


「当たり前だろ。写真を一枚投稿して終了するインフルエンサーがどこにいるよ? SNSってな人気を維持する方が大変なんだからな。昨日以上に気合入れていくぞ」


「無理です! あのような写真を撮るのなら私はもうリア様に協力はできません!」


 頑なに撮影を拒絶する桜井。昨日撮影した写真が相当に堪えたらしい。珍しく反抗的な態度を見せる自身の騎士に、莉愛はギラリと碧い瞳を輝かせた。


「いい度胸じゃねえか、桜井。お前まさか忘れてんじゃねえだろうな? アタシに逆らえばどうなるのか? いいのかよ。お前の入浴シーンが世間に拡散されても?」


 屋敷にある桜井の個室。そこに仕掛けた監視カメラにより撮影された秘宝。桜井花奈の嬉し恥ずかし入浴シーン。莉愛は桜井に自身の立場を改めて理解させようとスマホに保存したその画像を検索する。だがしかし――


「……あれ?」


 画像が見つからない。保存先を間違えたかと幾つかのフォルダを開くもやはり画像はどこにもなかった。困惑する莉愛。するとここで桜井が「ふ……ふふ」と不気味に笑う。


「残念でしたね、リア様。私があのような悍ましい写真を何の対策もなく、いつまでも放置すると思っていたのですか?」


「な――お前、何をした!?」


 顔面を蒼白にする莉愛。桜井が勝ち誇るように自身の大きな胸に手を当てる。


「昨晩、リア様が寝静まった時を見計らい、こっそりと部屋に侵入させてもらいました。そしてスマホの中にある悍ましい画像データを全て削除したのですよ」


「なん……だと?」


 信頼していた人物の口から聞かされた衝撃の事実に莉愛は声を震わせた。


「お前……仮にも主であるアタシの部屋に無断に入っただけでなく……個人のスマホを勝手に覗いたというのか……そんな……そんな非人道的な行為が許されるものか」


「アンナ様が外出されている以上、リア様の暴走を止められる人間は屋敷にいません。ならば自らが事態を収束させる以外にない。それに先に人道に反する行為をしたのはリア様のほうです。横着せずにスマホにロックを掛けおくべきでしたね」


「――ぐっ……」


「もちろん監視カメラも撤去済みです。もはや私はリア様の言いなりではない!」


 桜井の力強い宣言に、莉愛はがっくりとベッド上に膝をついた。這いつくばった莉愛にクツクツと笑う桜井。彼女の愉悦に満ちた笑いに莉愛は拳を握りしめる。


「くそ……こんな……ちくしょう……ちくしょぉおおおおおおおおおお!」


「ふふ……ふはははは……あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」


 握りしめた拳をベッドに叩きつける莉愛。彼女のその姿に桜井が高らかに哄笑する。ベッドを力強く殴りつけること十秒弱。莉愛は四つん這いの姿勢から上体を起こすと――


 スマホを操作しながらあっけらかんと言う。


「まあでも復元アプリで画像データを元に戻せるから別にいいんだけどな」


「ズコォオオオオオオオオオオオオオ!」


 この大どんでん返しに、桜井が如何にも昭和的なズッコケを披露した。

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