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第一章 インフルエンサー1

 神奈川県Y市空暮(からくれ)町。何の変哲もないその町内の一画に、周囲の建物から浮いた一棟の洋館があった。整備の行き届いた美麗な庭園に数十部屋はあるかという大きな建物。まるでその一画だけが中世ヨーロッパにタイムスリップしたかのような雰囲気だ。


 その場違いな洋館の一室。最高級のベッドや棚など美麗な家具を揃えておきながら、服や雑誌などを汚らしく床に散乱させているその部屋に、一人の少女がいた。ベッドの上に胡坐をかいて欠伸をする少女。腰まであるボサボサの金髪を乱暴に掻きながら、少女は手に持ったスマホ画面に視線を落とした。


「オーガニックの朝食……ねえ」


 少女の気だるげな碧い瞳。分厚い眼鏡越しにあるその瞳がジト目に細められていく。


 某IT企業が運営するSNS。写真や動画を共有するサービス。インストグラム。少女はそこに投稿されている画像をじっと眺めていた。画像には綺麗に盛り付けられた食事と、それを前にして微笑んでいる一人の女性が映されている。絶妙な光加減でキラキラと笑顔を輝かせているその女性に、少女は苦々しく「ちっ」と舌を鳴らした。


「この朝食だけで何千円することやら……ったく、優雅なもんだよな」


 そう呟きながら少女はベッドに直置きしていたアンパンを掴んでパクリと齧った。スマホ画面に映された豪勢な朝食。それに対してこちらはひとつ百円のアンパンが朝食である。少女は乱暴にパンを咀嚼すると、パック牛乳をストローでズズズと勢いよく飲んだ。


 するとここで部屋の扉がノックされる。


「お嬢様。準備は宜しいでしょうか?」


 廊下から声が聞こえた。少女はちらりと扉を一瞥する。だがすぐにまたその視線をスマホへと落とした。しばしの間。部屋の扉がまたノックされて声が聞こえてくる。


「あの……お嬢様? 扉を開けても宜しいでしょうか?」


「……だめぇ」


 少女は欠伸混じりにそう返答した。少女の気のない返事に何かを察したのだろう。少女の了解を得ないまま「……失礼します」と扉が開かれる。


 扉を開いたのは二十歳前後と思しき女性だった。ポニーテールにされた黒髪に目尻の吊り上がった黒い瞳。女性らしい凹凸のある体に几帳面に着こなした紺色のパンツスーツ。部屋に足を踏み入れて女性がベッドに視線を移す。そして少女の姿を見るなり――


 女性がぎょっと目を見開いた。


「お……お嬢様! なんて格好を!?」


 驚愕する女性に少女はアンパンをかじりつつ自身の姿を見下ろした。先日に十五歳を迎えた少女。中肉中背の体格。年齢の割に小さな胸。それら少女の身体的特徴。それは誰もが一目で気付くだろう。なぜなら少女は――


 ブラとパンツのみの下着姿だったからだ。


「だから駄目って言ったじゃねえか。このスケベ」


 そう言いながらも少女に恥じる様子など微塵もない。下着姿で呑気にアンパンをかじる少女。呆然としていた女性がハッとして慌てたように口早に言う。


「お、お嬢様! 淑女が下着姿などはしたない! すぐに着替えてください」


「うるせえな。自分の部屋でどんな格好だろうと自由だろうがよ」


「お嬢様!」


「はいはい……分かりましたよっと」


 残りのアンパンを口に放り込み、少女はベッドの上を四つん這いで移動した。ベッドに脱ぎ散らかしていた緑のジャージを手に取りモソモソと着込んでいく。上着のファスナーを適当に半分まで上げて、少女は改めて女性に向き直った。


「んで……一体何の用だ? 桜井」


 着替えを済ませた少女を眺めて女性――桜井(さくらい)花奈(はな)が表情を渋くする。


「……ファスナーはきちんと首まで止めて下さい。胸元が見えていますよ」


「首まで止めると息苦しいんだよ。そんなことよりアタシは何の用だって訊いてんだ」


「何の用だって……昨晩もお話ししたではありませんか」


 桜井が眉をひそめながら言う。


「本日は奥様が留守にしていますが、日課となる稽古は予定通りに行います。まずは教典の朗読からです。そのだらしない恰好を改めて礼拝堂へと移動してください」


「ああ、それならパス」


 少女は気楽にそう返答した。「はい?」と目を丸くする桜井。少女はジャージの中に手を突っ込むと、腹をボリボリと掻きながらあっけらかんと言う。


「だからパス。アタシは急用ができたからさ。そんなことしてる暇ねえの」


「そんなことって――お嬢様! 何をおっしゃっているのですか!?」


 桜井がバタバタと部屋の中に入り、少女がいるベッドの前で立ち止まった。


「日々の稽古はお嬢様にとってとても大切なことなのですよ! 特に最近はサボりがちでもありますし、奥様が留守にされているこの時にこそ真面目に取り組むべきです!」


「別に稽古なんて一日ぐらいやらなくても何か変わるわけでもねえだろ」


「そんな問題ではありません! お嬢様の立場上よろしくないと話しているのです!」


「そのアタシの立場ってのは何だよ?」


「それはもちろん――」


 桜井が胸に手を当てて朗々と言う。


「ホルトハウス教団の次期聖女――リア・ホルトハウス・ヴァーゲとしての立場です」


「……アタシは秤谷(はかりや)莉愛(りあ)だ」


 桜井の返答に少女――秤谷莉愛は苛立たしく舌を鳴らしながら反論した。


「リア・ホルトハウス・ヴァーゲはドイツ名。日本にいる時は秤谷莉愛って呼べよ。それとお嬢様って呼び方もいい加減に止めな。気色悪くて敵わない」


「しかしお嬢様――」


「だから止めろって。それとアタシは次期聖女なんて立場になった覚えもないからな」


「な……なんて恐ろしいことを……」


 桜井が表情を絶望的に青くする。まるで世界の終末を聞かされたような反応だ。カタカタと全身を震わせている桜井に、莉愛は碧い瞳をジト目のまま鋭くした。


「何がそんな恐ろしいことなんだよ。聖女の後継者だなんて周りが勝手に決めたことだろ。アタシが従ってやる義理なんざないね」


「ぎ、義理の問題ではありません。お嬢様――リア様はアンナ・ホルトハウス・ヴァーゲ様のただ一人の娘であり、聖女の力を引き継いでいるのですよ」


 桜井が表情を青くしたまま頭を振る。


「五百年前――初代聖女のビアンカ・ホルトハウス様により悪魔は討伐され、人類は平和を手にしました。しかし悪魔の脅威が消えたわけではありません。悪魔と対抗できるのは聖女の血をひく奥様とリア様だけです」


「……悪魔……ねえ」


「一体どうしたというのですか! 私は二年前よりリア様にお仕えしてきました! 二年前のリア様は立派な聖女になるために日々の努力を惜しまなかったはずです! 私は聖女の後継者であるリア様に仕えられることを誇らしく感じていました!」


「ああ……そうですか」


「それなのに――ここ一年間におけるリア様の堕落ぶりは目に余ります! 立派な聖女となるための稽古を何か理由をつけてはサボるばかり! 聖女の使命感に満ち溢れていたリア様はどこに行ってしまったのですか!」


「堕落とは言ってくれるな」


「あの気高くも美しいリア様はいずこに! 私が守るべき聖女様はいずこに! どうしてこのようなことに――一体何が原因だというのですか!?」


「……何が原因? そんなに知りたいのなら教えてやるよ」


 莉愛はベッドから降りると桜井の前まで移動した。両拳を握りしめてハラハラと涙を流している桜井。一人感極まっているその彼女に莉愛は右手のスマホをかざした。


「アタシはな……気付いたんだよ。お前ら大人たちに騙されていたことに」


「騙す……何のことですか? 私たちがリア様を騙すなど何かの間違いです」


「しらばっくれてんじゃねえぞ!」


 怪訝な顔をしている桜井に莉愛はスマホを印籠のように突きつけながら絶叫した。


「確かに一年前までのアタシは聖女になるための稽古を馬鹿正直に受けてた! 五百年前に滅ぼされた悪魔がいずれ復活して人類に牙を剥く! それを防ぐことができるのは聖女である自分だけだと信じてな! だけど一年前にスマホを渡されて気付いたんだよ! 教団の教えが全部デタラメだってことに!」


「で、デタラメなどではありません! 教団の教えは真実だけを告げております!」


「んなワケあるかぁああああああああ!」


 スマホを操作して悪魔を検索、画面に表示された検索結果を莉愛は指差した。


「現実を見やがれ! 悪魔は架空の存在で実在なんざしちゃいねえんだよ! 少なくとも世の中の大半は悪魔なんて信じちゃいねえ! そんな存在しねえもんを倒すために、アタシは長いこと聖女になるための稽古を受けさせられていたんだ!」


 悪魔に関連した情報が記載されたページをスクロールしながら莉愛は叫んだ。怒りを顕わにする莉愛に、桜井が狼狽しながらも反論を口にする。


「そ、それはその――何もネットにある情報だけが真実とは限りません! 確かに現代において悪魔は否定的な意見が多い! しかし確かに悪魔は存在しているのです!」


「存在してないっての! 見てみろよ! 悪魔って検索すると、こんなエロそうな女のイラストばかりが大量ヒットするんだぞ! 現代人にとって悪魔はもう恐れるもんじゃなくて性欲の対象にまでなってんだよ!」


「大衆は真実に気付いていないだけです! 教団の教えに誤りなどありません!」


 頑なに意見を譲ろうとしない桜井に、莉愛は「はん」と嘲りたっぷりの溜息を吐いた。


「アタシたちだけが真実に気付いてるって言うのか? 馬鹿馬鹿しい。ネットで調べてみる限り、ホルトハウス教団なんて空暮町でしか活動してねえマイナー宗教じゃねえか」


「ほ、ホルトハウス教団は地域密着型で不必要に拡大を図らないだけです。そ、それに教団の本拠地はドイツにあります。異国である日本で小規模となるのは仕方ないでしょう」


「その本拠地となるドイツでも、ホルトハウス教団はど田舎の一部地域でしか活動してないみたいだけどな。あーあ、マジで最悪だ」


 莉愛は頭を抱えると、分厚い眼鏡の奥にあるジト目をどんよりと暗くした。


「アタシは一年前まで世界は悪魔の脅威に怯えているとばかり考えていたんだぞ。だけど蓋を開けてみれば悪魔はただの空想上の産物にして性欲の対象。学校にも行かず外出も制限されていたとはいえ、十四年間も騙されていることに気付けねえとは不覚だぜ」


「だから騙していません! 悪魔は実在してリア様は聖女の後継者――」


「うるせえ! ハッキリ言わせてもらうが――聖女なんてもう()()()()なんだよ!」


 桜井が白目をむいて全身を硬直させる。莉愛の爆弾発言がよほど衝撃的だったらしい。ショックからなかなか立ち直れない桜井を無視して莉愛はさらに言葉を続ける。


「五百年前の昔ならいざ知らず、科学の発展したこの現代に聖女がどうの悪魔がどうのなんて笑われるだけだ! アタシはこれから大人たちに騙されて無駄にしてきた青春を取り戻させてもらうんだからな!」


「……せ、青春を取り戻すって……い、一体何をするつもりですか?」


 桜井が掠れた声で莉愛にそう尋ねる。莉愛は「ふふん」と挑戦的な笑みを浮かべると、スマホを操作してある画面を桜井に見せた。スマホ画面を覗き込む桜井。スマホ画面には一人の女性が映されており、豪勢な朝食を前にして笑顔を浮かべていた。


「……えっと……この女性は?」


「聖女セリス」


 莉愛の返答に桜井が「へ?」と目を丸くする。聖女という言葉に反応したのだろう。目を白黒させている桜井に莉愛は淡々と説明する。


「周囲から聖女様と勝手に呼ばれているってことだよ。この女はインストグラムを中心に一年前ぐらいから活動していてな、流行している店や観光地に出向いてはこうしていけ好かない写真を撮っているのさ。まあいわゆる、インフルエンサーって奴だ」


「インフルエンサー……ですか」


 スマホ画面を覗き込む桜井に倣い、莉愛もまた画面に映された女性を改めて見やった。


 聖女セリス。セミロングの茶髪に澄んだ青い瞳の女性だ。大人びた容姿をしているが年齢は莉愛と同じ十五歳。聖女と呼ばれるだけあり綺麗な顔立ちをしている。


「……リア様を差し置いて聖女を名乗るとは、何とも恐れ知らずな方もいるものですね」


 桜井が仏頂面で呟く。ホルトハウス教団は聖女を中心とした組織だ。その教団を信仰する桜井としては勝手に聖女を名乗られることが不満なのだろう。表情を渋くする桜井に莉愛は「さっきも話したが」と肩をすくめる。


「こいつ自身が聖女を名乗っているわけじゃない。こいつもそれを責められる謂れなんかないだろうぜ。そもそも聖女なんてのはどうでもいいんだよ。アタシが言いたいのは――このインフルエンサーってのが()()()()()だってことだ」


「……と、言われますと?」


 桜井が首を傾げる。ネット界隈ではすでに一定の知名度を獲得している聖女セリス。その彼女を知らないことから、桜井がこの手の話題に疎いことが知れた。怪訝そうにする桜井に莉愛は簡単な説明を始める。


「細かな定義があるわけじゃねえけど、インフルエンサーってのは現時点――或いは今後流行となるだろう情報を発信する連中のことを言うんだよ。ネットが発達した現代だからこそ実現した新しい商売の形って奴だ」


「……ネットは私も利用しますが、情報発信することがどうして商売になるのですか?」


「アタシも詳しくはないが……」


 スマホで必要な情報を検索しながら莉愛は桜井の質問に答える。


「有名インフルエンサーになれば、企業から商品のPRを依頼されるらしいぜ。要は有名人が企業のCMをするようなもんだ。後はそうだな……アフィリエイトとか」


「あふぃ……あふぃり……な、何です?」


「簡単に言えば、客引きみてえなもんだ。他にもネットショップを立ち上げるって手もあるぜ。さっき見せたセリスとか言う女も、ブランドを立ち上げてテメエの信者に景気よく商品を売りさばいているらしい」


「信者に商品を……そ、それでしたら私たちホルトハウス教団も負けていませんよ」


 ようやく理解できる話になったためか、桜井がどこか誇らしげに胸を張った。


「我らがホルトハウス教団では、聖女アンナ様がお作りになった味噌を信者の皆様に向けて販売しております。その他にも漬物や家庭菜園した野菜など、それはもう人気で――」


「そんな田舎臭い商売と一緒にするな」


 莉愛の冷めた一言に「い、田舎臭い!?」と桜井がショックを受けたように硬直する。どうにも世間ズレしている桜井に溜息を洩らしつつ莉愛はふと首を傾げた。


「というか……日本での生活が長いとはいえ母様は生粋のドイツ人だろ? 何だって味噌やら漬物やら、日本的なものばかり販売してんだよ?」


「それは私も分かりかねますが……因みにこの前はそば打ちにも挑戦していましたよ」


 聖女らしい振る舞いをしろ。桜井はそう苦言を呈していた。だが現在の聖女である母もまた大概だ。莉愛はそんなことを考えながら「まあどうでもいいが」と話を戻す。


「とにかく、インフルエンサーとして知名度を上げれば自ずと金も入る。こんなボロイ商売はねえよな。そこでアタシも一枚噛んでやろうと思ってるってわけだ」


「な、何をおっしゃるのですか!? リア様は聖女の後継者なのですよ! そんなナンクルナイサーなどという訳の分からない商売に手を染めてはなりません!」


「インフルエンサーだっての。それに聖女はオワコンだって話しただろ。少なくとも聖女なんて肩書きじゃ儲からねえ。いつ潰れるかも分からねえマイナー教団の聖女として細々と生きるより、アタシはインフルエンサーで大金を手に入れてやんだ」


「そのような考えは汚れています! リア様! 世の中お金ではありませんよ!」


「世の中――金じゃあああああああああ!」


 清らかな瞳で詰め寄る桜井に、莉愛はどす黒い欲望を剥き出しにして絶叫した。


「金なんだよ金! 金さえあれば何でも叶えられる時代なんだよ! 金さえあればこんな寂れた田舎を抜け出して、世田谷あたりに豪邸を建てられんだからな! 十五年間にも及ぶアタシの負け犬人生も、金さえあれば一発逆転できんだよ!」


「な、なんてことを――」


「だからってチマチマ働いて金を稼ぐなんて面倒くせえし楽して儲けてえんだよ! 美味いもん食ってる写真アップするだけで金が入るなんて最高じゃねえか! アタシは聖女を辞めてインフルエンサーになる。そして貧乏人どもを嘲笑して唾を吐いてやるんだ!」


「しかも仕事に対する誇りもなければ人間性もない。ああ、偉大なるハルモニ様。どうかリア様のご発言をお許しください。リア様はなんかこう……頭が可哀想な人なのです」


「喧しいわ!」


 手を組んで天を仰いでいる桜井を一喝し、莉愛は興奮を鎮めつつ腕を組む。


「というわけで、アタシはもう一文の得にもならない教団になんか一切関わらない。これからは輝かしい未来を獲得するために一心不乱、金儲けに邁進していく所存だ」


「な、なんて身勝手な宣言でしょうか……しかしそのような真似、アンナ様がお許しになるとは思えませんよ」


「だから今日みたいに母様が留守の日を狙って活動するんだろうが。桜井もこの話は、母様にまだ内緒だからな。もし母様に話したりしたら――」


 莉愛はスマホを操作して、ある一枚の画像をスマホ画面に表示させた。スマホに表示された画像を覗き込む桜井。彼女が画像を認識するまでに数秒。唐突に桜井の顔が――


 火を噴いたように真っ赤に染まる。


「ここここ、この画像はまさか――」


「桜井が入浴している画像だ」


 大きな湯船に肩まで浸かり幸せそうに表情を蕩けさせている桜井。その彼女を斜め頭上から捉えた鮮明な写真。当然ながら入浴中であるため桜井は全裸だ。大きな胸をお湯に浮かべている自身の写真に、桜井が泡を食ったように狼狽する。


「どどどど、どうしてこんな写真が!?」


「心配はいらない。ただの盗撮だ」


「犯罪ですよ!?」


「人聞きが悪い。アタシの屋敷に監視カメラを設置してどうして犯罪なんだ?」


 教団の人間である桜井は屋敷に住み込みで働いている。聖女の娘である立場を利用すれば、桜井の部屋の鍵を入手するなど造作もなく、カメラを仕込むのは簡単だった。スマホを奪い取ろうとする桜井から素早く離れて、莉愛は拳銃のようにスマホを突きつける。


「つうわけで、この写真をばら撒かれたくなければ母様には決してこの話をするな。ついでに桜井には色々手伝ってもらうからな。頼りにしてるぜ」


 ニンマリと笑みを浮かべる莉愛に――


 桜井が諦めたように力なく項垂れた。


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