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ファンタジーは現実へ  作者: ぽこぴ
海外編
85/85

紛争と平和



「おらっ!!早く歩け!!!」

硬い鉄で造られたライフルの先端で、家族から引き離した父親の背中を強く押す。

少し離れたところからでも、父親の名前を叫んでいる母と子。痛々しいが、これをやっている犯人はそんな事これっぽっちも思っていない。

男手(おとこで)を、荷台を折で囲んだトラックへ収容して運ぶ。

道路を走る度、砂が舞い散ってからガタガタと車体が揺れるのを体で感じた。


「こいつら、どうするんでしたっけ」

そこはかとなく、部下が聞いてみた。

「労働力にして、使えなくなったら臓器売買とか、色々」

まだ新人であろう青年を少し通り越した年齢の者の顔色が少し青ざめた。

そんな2人の顔を、右斜め上から飛び降りた何かの影で覆われた。

ぴくっと反応して右へ顔を向けると、

「あ、どうも」

と、若い少年が空いた窓の(ふち)を掴んで体勢を保っていた。

パン!とタイヤが弾け飛び、運転手は心臓が飛び跳ねて予想だにしないハンドルの切り方をする。

パンクしたタイヤが浮いて、徐々に左へと傾いて倒れまいとする。涼風はその方向を確認すると、おじいさんと傍らの少女を見て、「こりゃまずい」と思った。


倒れゆく、地面へ接する面へ蜘蛛の様に這って移動すると、構造上…倒れるトラックを支えられるほどの強度を持つ建物へワイヤー銃を引っ掛けた。

ーー発射されたワイヤーは綺麗すぎる程一直線へ飛び、煉瓦(れんが)へ突き刺さった。



傾くトラック、膝を曲げて逆の方向へ蹴り戻してから運転手を引きずり出した。刃物を向けて刃向かってきたが、手首を蹴り上げて落とし、地面へ無理やり伏せさせる。

素早く鍵を引きちぎり、檻を解放した。

中に居たお父さん方は俺へ感謝の意を述べながら家族の元へ走っていく者も居るなら…とぼとぼと生気が無い顔つきで歩き出す者もいた。

家族と引き裂かれた為に、抵抗するのは当たり前だ。その時に何をされたかなんて、見てわかる。



先程の場所へ戻り、敵を制圧していた凛月と合流した。帰ってきた父親と再会し、泣いて喜ぶ両親子。

それを見ながら語り出す。

「この小さな集落から、父親という大黒柱が居なくなりゃあどうなるか分かるか?」

「壊滅…とか?」

「そうだな。他の地域へ流れもすると思うが…迫害を受けたりするんだろう。」


すると、砂の上を歩く度、誇りを舞い上がらせながら凛月へ近づく子供が1人。

「あ、あの!お兄…さん…。」

「?」


モジモジと膝を擦り合わている彼と同じ目線までしゃがみこむ。その行動で言いやすくなったのか、子供は、「あ、ありがとう!」と元気よく言ってくれた。

涼風が解放した父親達も、涼風へと集まって感謝を述べる。



ここから更に北へ向かう途中の事。色々あった。


「覚悟はいいですか???!!」

ヘリのドアを開けると、ものすごい風で息が一瞬詰まった。すぐ解消したが次は耳鳴りがとてつもなくウザかった。


「いいっす!!!行きましょう!!!!」


先程の集落からかなり離れた場所での依頼を受けている。内容は空を飛ぶ怪物の処理。

ヘリはあるが、1人乗った状態の撃破を試みて亡くなったために誰もやる人が居なくなったのだ。

まさにスカイジャンプで、しっかりグライダー付き。

俺たち3人は空中へ身を投げ出し、全てを風に任せる勢いで降下していく。


「おぉ…ぉぉ、」

刀を腰の横で構える。インパクトの瞬間に力を入れるために、普段は力を抜いているが故…風でカチカチと震えながら音色を奏でる。

風の音が耳の中に響かせながら下に(くだ)る曲線を描きながら刀の握る拳に力を入れた。

刀の震える音が一瞬にして止み、怪物と交差する瞬間で鞘から抜く。

不思議なことに肉を斬った感覚は無く、空気中に放たれたインクの様に血がふわりと散布した。



「涼風っ!」

斬った後、仰向けになって叫んだ。

その時、涼風は既に剣道の型のように振りかぶって頭部へ振り落とした。

ブーブー…とノイズの音から始まって伊織が語り出した。

「俺出番無いやん」


それから涼風達はさらに南へと向かっていく。


「いやぁ〜ありがとぉねえ〜」

ものすごい猫背で、杖をついているおばあちゃんが見上げてくる。

海外に打ち上げられた大量のゴミ。その掃除をする任務だ。


「ていうか!ゴミ掃除の異能者なんていたんだ!」

「悪かったね。有名じゃなくて」

「ごめんて」

トントン拍子の会話は一瞬で終わった。相手も笑いながら言っているので暗黙の了解で冗談だと理解する。

「日本みたいな先進国じゃあ居ないのかい?民間の異能者」


「居るのかな?ねえいる?」

横を向いて伊織へ問いを流した。


「いると思うぞ。警察の中にだって居るし、相当危険性の高い異能じゃなきゃ民間企業の中にだっているんじゃないか」

ビニールの中へトングを使ってやけくそに投げ入れていく伊織が、流された問にしっかり答えてみせた。


「ただ、数が少ないのは当たり前だよな。」


「どうしてよ」

特に何も考えずに涼風が言った。


「怪物が出た地域にさ、なんつーか。怪物に対抗する異能者の教育を施す文化が残るんだ。例で言うなら、神楽とかかな。神楽の家系はなんかしらの神を祀っててね、その地域に1度、怪物化した人間が襲撃した事がある。だから毎年、子供を教育して対怪物戦力として送り出しているんだ。そういう文化は世界中にある。

どこからか流れてきた文化じゃない。世界中でみんな考えてることが同じだけだ。」


「育て方の方法も違う。俺なんてゴミを集めるために育てられたからな。ズレてんだよ俺の親」

ルーズさんはそう冷たく親を(さげす)んだ。





「っしゃあ!終わったな!!」

波の音が心地いい。ゴミひとつ無い砂浜を衝動的に走るのはやはり涼風だった。まだまだ子供の大きさの足跡がくっきりと残っている。

髪がふんわり揺れる程度の風量が1番いいと思う。

もう夕方。「近くに泊まるとこある?」と凛月が伊織へ聞く。

「言っちゃ悪いけど多分田舎だからなここ。民宿とかかな?」


「あ、良かったら泊まっていく?めちゃくちゃ助かったんで。特にあの怪力!!何個も重ねた冷蔵庫を普通に持ち上げるんだもん。びっくりだわ」

ケラケラと笑いながら家のドアを開けて招き入れた。

『びっくりだわ』なんて言葉をこの後、3人はそっくりそのままお返しする事になる。


「おかえり〜!…ん〜〜?お客さんか〜いらっしゃーい」

「「「?!!!」」」

ルーズさんとのつきあいは今日、たった1日にも満たない。だがどんな性格かはもう分かったつもりだ。

ーーあの毒舌野郎が…金髪美女と同棲…だと?


「お前!隅に置けねえぞおい!!」

ドタドタと足音を立ててルーズへ体を当てる。


「お、おい、伊織…だったか?何とかしてくれこいつ。…ーーうぉっ」

伊織は肩をがしりとわしずかみし、口角をピクピクと痙攣させながらジト目を向けた。


「あ、あはは。どこで知り合った?」

「諦めなルーズ。俺たちは一応、仲間…だ」

「しょんぼりしてんじゃねぇよ!!!」

気迫満々、弾んだ声で言ったルーズ。



「夕飯の用意してくっから、この部屋に居てくれ」

閉まりかかったドアの隙間から顔をのぞかせて言うとすぐに閉める。足音がだんだん遠ざかっていくのが分かった。

すると、凛月の電話に着信がかかる。ポケットから素早く取り出して着信先を見ると、なかなかに意外な人で眉が少し上へズレた。


「もしもし、久しぶり。」

その後にスピーカーにして、真ん中に置いてあるミニサイズの机の上に置いた。


「やっと繋がったよ。そっちはどうだ?」

「東雲さん?!!」

その声の持ち主はまさかの東雲。涼風が画面を覗き込むと、人差し指で画面通話をポチッた。

左上の小さく括られた画面に、俺の顔が映し出される。

「おぉ涼風か!…近いな」

「えへへ」

顔を離すと、スマホの向こう側が何やら騒がしい。


「あ、おい。辞めろ!」

何かを手で押さえつけようとしているのか。その都度、『何か』は勢いを増す様子だ。


「いいじゃねぇ〜か〜!少しくらい顔みしてやろうぜ?!」

この声は…リアか!


「リア〜!」

「うぃ〜すずっち!元気そうだな!!」

スマホから元気な声がこちらまで届いてくる。

リアの元気さがこっちにまで移りそうで少し誇らしげに思っている。

すると、ピッ!と東雲の画面へある部屋の風景が映し出される。そこには見慣れた異能団本部の部屋。

手を絡めあっている東雲とリアが映っている横で、何やら子供を見る眼差しを送る人が1名居る。



「神崎さん?」

凛月はそこはかとなくに思って言ってみた。

「やっ」

ちろりとカメラへ視線を送った神崎。


「みんないるんですね!!」


「今日はね。任務がみんな重なってさ。…凛月。」

「…?はい。」

「強くなったか?」

「この2人を俺が居ないと死んじまうって思わせる勢いでやってますよ。安心してください。」

「ははっ」

苦笑しながら目線をじゃれ合っているふたりへ戻す神崎。そしてリビングの方からルーズが飯だと呼び出しをしてきた。


「あ!ご飯らしいので切ります!!」


「あぁ。またな」


電話を切り、電源ボタンを1回押してからリビングへと向かった。

「今日のご飯は少し豪華です〜!」


「な、なんだこれは…?」

豆腐にも見えるが…、箸で突っつくと何やら硬い。

その横には肉厚ハンバーガー。これが主食なのか?


「いただきまーす」

豆腐かもしれないものを箸で持って口へ運び、パクリと頬張る。

歯で噛む度、バキッと音が口の中で鳴る。そして広がった味は…ジャムだ。



「ジャムか?しかもブルーベリー。」


「ここら辺の地域独自の食べ物です!!ど、どうですか?」

口に合うか合わなかったか、を確かめる様に顔をのぞかせて聴いてくるアイスちゃん。


「今日のはアイスの自信作なのですが!?…お口に合わなかったですか?」

涼風はこれ、大好きだ。

伊織は嫌いではない。普通だ。

凛月は口に入れた瞬間、俯いて箸を食器の上へ一度置いた。

ルーズはバクバクと口へ放り込んでいる。


「す、涼風…バレないように貰ってくんね?」


「いいよ」


ーーこれは…今まで食った飯の中でもトップに躍りでるレベル…だ。

ハンバーガーを食べると、その家付近に「あああぁぁぁ!!!」という雄叫びが響いたそうで。













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