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ファンタジーは現実へ  作者: ぽこぴ
怪物災害
80/85

東雲咲希


風木(ふうき)、神崎隊と神楽が倒したらしい。

東京に戻ってきてすぐなのにやるな」

数多くの怪物の死骸の上に立ちながら言った。


「そうですね。格が違いますか」


そう言う風木の背後で避難誘導を促進させながらも怪物処理に尽力している斑鳩(いかるが)は、怪物の死骸を捻って潰した。


「僕たちは人を守ってればいいんです。2つ名に恥じないように」

ーー斑鳩がそう言う。



そして風木はある路地に入っていった小さな小動物の様に跳ね回る怪物を追っていく。

出来るだけ東雲(しののめ)さんから離れないようなしないと行けない。


「……」

路地へ入り、角を曲がると、そこには怪物が俺の目を見てジッと立ち止まっていた。

ーー俺もそいつの目を見て立ち止まる。



「ぎゃぁあああぁぁぁぁぃぁぁあ!!!!!」

「!!」


いきなり怪物が口を開き、とんがった歯を見せながら飛びかかってくる。

同じ目線になった時、風木は怪物を上空に殴り飛ばした。

空中に殴り飛ばされた怪物は一時(いっとき)何も出来ずに宙に浮いたが、その怪物に風木は手をかざした。

空気を集中させ、 四方から怪物の心臓部に押し込むと、怪物の体はぐしゃっと圧縮された。


「おっ…と」

つまりは空から降ってくる血の雨。風木は声を少し出して後退して避けた。


すると突然、耳元の通信機から東雲さんの声が叫ぶように聞こえる。


「風木!戻ってこい。」


「!!?」


駆け出して路地から外へ出ると、似通った見た目の小さな怪物が沢山死んでいた。

その光景に少し言葉を失った。


「これは?」


「さあな。さっきいきなり出てきて、一通り殺した。正直に言って弱かったな。」


「ですね。今までの怪物はこんなには弱くなかったんですが、どうして急に雑兵を出てきたんでしょうか?」

控えめにして口を隠すようにつぶやく斑鳩。


「…」

何やら少し考え込んでいる東雲。

そしてその重い口を開いた。


「とりあえず次の地区の避難誘導を優先すべきだ。行こう」

「はい」

「了解です」


道路を走っていく中、東雲は思う。少なくとも雑兵を出してきた行為は、何かしら意図があるはずだ。

詳しいことは司令部から連絡が-----。


ーーあ、そうか…。なら…!

ハッと何かを思いついた所、通信機から司令部より通信が届いた。


『東雲隊!!数メートル付近にカテゴリー4下位の突然的出現が確認!!状況を冷静に━━━』

ブツっと通信機から聞こえてきた声が途切れるーー

3人、後ろを振り返る。

ーーそこには先程確実に殺したはずの雑兵がウネウネと地面を這って1個体へ集まっていた。

不気味さの頂点…異質さの極意そのもので、肉片が集まって出来た怪物は、ギロギロと目を泳がせた(のち)、東雲を睨んだ。


バン!!と怪物が地面を思い切り蹴ると、周囲の瓦礫は激しく散った。

それに風木と斑鳩も反応し、距離を取ろうとするが、怪物の狙いは東雲だけだった。



「!!!?」

怪物の重い拳を東雲は受けると、その衝撃と重さで後ろの方へ飛んでいってしまった。


「東雲さん!!」


「離れろ斑鳩!」

東雲に叫んだ斑鳩は、別に風木から注意を受けて横へ飛んで距離をとる。

そして風木は先程と同様、四方からの空気の圧をかけた。


一瞬、怪物の動きが止まる…



「ーーえっ」

かざしている風木の手をガシッと掴み、後ろの建物へ遠心力を使って投げ飛ばした。



「がっ…ぁ、!」

効かなかった…?いや、そんな事…、、


その(かん)、風木がやられたことにより一瞬の隙ができたため、斑鳩が奴の体に触れた。

本来ならこの後、怪物の体は核ごと捻り潰すはずだ。



「なっ?!!」

怪物の体は少し拗られただけで、ピタリと歪みが止んでしまった。


腕を掴まれ、吹き飛ばないようにされてから威力のすごい膝蹴りを腹に受けた。

衝撃で後ろへ飛ぶ勢いだったが、腕を掴まれているせいでその場に固定されているという事だ。

何発も何発も喰らい、その度に吐血をする斑鳩。


ーー当然、東雲と風木は見逃さない。

風木は一直線に斑鳩の元へ駆け寄るが、東雲はそんな風木へ飛びかかる。



怪物は掴んだ斑鳩を向かってくる風木へ投げ飛ばし、ぶつけようとするが、そこに東雲が割って入り、2人を抱えて地面を擦りながら着地した。


「風木…は大丈夫そうだな」

問題は斑鳩だ。意識はあるが、いつ飛んでもおかしくない。

東雲は斑鳩を寝かせ、突撃してくる怪物を引き寄せる準備をする。


「風木は左、私は右だ。

今考えてることを通信機で話すから、今は逃げることだけを考えていろ!」


「はい!!」

突撃してくる怪物をちょうどタイミングとして左右へ駆け抜けた。

出来るだけ斑鳩に当たらない様に…!

すると東雲さんからの通信が届く。



「聞くだけでいいからしっかり聞け。恐らくあいつの異能は…適応だ。雑兵に攻撃を食らった時、1回目より2回目の方がダメージが大きかった。威力が……

増す系かと思ったが、お前らの攻撃が効かなかった説明がつかない。初めて見せる技の乱用は控えろ」


環境を駆使して怪物の拳をかわしていく東雲さんに、まだ喋る余力がある事にかなり驚く風木。

恐らく、雑兵であらかた技を使わせて適応する作戦だったのだろう。


最初から防御モードだけを使っておいて良かった…手数が少ない私にとって、こいつはかなりの天敵だ。

1ジャンプで建物を越え、力強いパンチから逃れまいとする姿勢。


「私がこいつを引き付けておく!そのうちに斑鳩を起こしてくれ!!」

風木に向けた主張を大声で叫ぶ。

すると、私のサポートをするためか、攻撃態勢に入っていた風木が姿勢を解き、斑鳩の元へダッシュで向かった。

全部見ていた訳では無いが、斑鳩は恐らくひとつの技しか使っていない。風木は2つほどだろう。

私の攻撃モードで叩き潰すなら、まず斑鳩の拘束と攻撃力を両立させた技が必須だ。


ーーそれまで、耐えればいい!

窓を割って建物の中へ入り、廊下を走って向かいの窓からまた出ると、地面に影が映っていた。

私のでは無い。

恐る恐る、後ろを見ると怪物が車を投げ飛ばして来た。


「っっ!!がっ…!!!?」


車を避けたはいいものの、空気中を衝撃波で進み、私の腹へと拳は振り下ろされた。

地面へ背を向けて激突し、少しのクレーターのように(くぼ)む。

素早く起き上がって追撃から逃れた東雲は一度、防御モードでの打撃を放ち、建物へ入って隠れる。



「はぁ…いったいな、、。」

内蔵に損傷はなく、骨も折れてないことを確認した。


すると、横から人の息遣いを感じて視線をやる。そこには娘を庇う体勢に入ってる3人家族が居たのだ。

酷く怯えている、当然か…。

私は目を瞑る。

東雲咲希(しののめさき)。当時16歳で高校生。

異能者は、何かの事件が引き金になって異能を得るのがよくある事例だが、彼女は違った。

突発性の怪物化で、異能を手にする。普通の生活など送れるはずもなく、徐々に衰弱していった。

怪物は異能者に惹かれる性質を持っているせいで、完全に異能者としての才能を発揮していない東雲の元へ怪物という悪夢が忍び寄るーー


一夜(いちや)にして、東雲の両親は血に染まる。

大好きだった家はもう無い。怪物(くそ)が入り込み、思い出をぐちゃぐちゃに引き裂いたからだ。

その怪物を、東雲は殴り殺す。肉片が小さな欠片になるまで、地面に穴が開くまで殴り続けた。


ーーだから、伊織の説明を聞いて納得したんだ。


異能者が怪物化した後、性格が変る現象…。

あれは怪物化する前の精神状態に最も適した性格になる様に細工されているかもしれない、という説。

私は本来、ここまで血塗られた性格の持ち主ではなかったのに、何故ここまで急に変わったのか。

あの時、私の身に起きた怪物化とその適応は中途半端で、両親が私を守るために死んでいく姿を目の当たりにした時、本当の適応が始まったのではないか。


今の私はそう考え、思うことにした。

ーーで、なければ…なぜ私は、今までの数多くの人の死を見て、ここまで平然としてられる?



私は親子に向けて自分の指を口元に突き立て、静かにしろ、というサインを見せた。


「そこの扉…分かりますね?そこを右に走ってください。ずっとです。ずーーーっっと、右に、です。」


「あ、貴方…、、は?」

息苦しい中で一生懸命喋ってくれた少女に血塗られた手のひらを乗せる訳には行かない。


「異能者だよ。悪いやつは私がやっつけるから。安心して」


怪物が建物を手当たり次第に壊している暴音が聞こえてきた。ここもいつやられるか時間の問題だ。


「さあ。走って下さい。振り返らずにです!早く!!!」


「!!!」

両親がハッとして子を抱え、ドアを蹴り破って走り出していく。と、同時に怪物に分かりやすく建物から飛び出た東雲。

そもそも異能者に惹かれやすい怪物だ。私に来るだろ!


私よりも高低差のあるビルを破壊し、私に向けて瓦礫を飛ばしてくる怪物。私は瓦礫を避けることに尽力はしなかった。

ーーそろそろ、来る頃だ。



斑鳩は砂の入った瓶を割り、空気を回転させ、その回転に砂を乗せた。

建物を破壊している怪物へ、そのトルネードを当てるの、血肉が割かれていく。


「少しの間しか効きませんが!!やるなら今です!」


パン!と風木が手を叩き、怪物の周りに円形の空気の層を作り出して閉じ込める。

その中を砂がトルネードに乗って、さながらヤスリで肉を削っていく。

手が千切れ、眼球が飛び出る怪物も、あと数分もすれば完全にこの攻撃は効かなくなるだろう。

ーーだから今なのだ。



私は建物の屋上へ飛び移り、怪物の元へ素早く行く。

「解け!!!」

とだけ叫び、2人は承諾した。

砂がサーっとはけていく中に割り込んで、攻撃モードへ変換。


東雲は1歩、足をずしりと重く踏み込んで…右の縦拳を核へ直撃させた。

ガラスが割れるような音。それと共に、怪物は生命活動を止んだ。



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