怪物
あれから1週間が淡々と過ぎて行った。
反逆軍の動きは不気味すぎる程静まり、異能団メンバー個々の力の向上を図る事が出来たのだ。
涼風、伊織、凛月の3人に限らず、宇久白さんの頼みで東京にある六本木のそれぞれ東西南北に分かれたのだ。
東側が東雲。
北側が神楽、及びリア隊。
西側が神崎隊。
とは言っても、南は警察達が固めているため、涼風達は異能団本拠地付近待機と司令が出たのだ。
鮮やかな街並みを見ながら3人で談笑し、歩いているとーー
「お、?!おぉぉあ!!」
「地震か?結構…」
「デカイな、」
涼風、凛月、伊織。この順番で喋る。
東雲隊、『仮』として神楽がリア隊へ所属、神崎隊、警察。当たり前の様にこの非常に大きい地震は皆の意識を、平和ボケから怪物と隣り合わせという…死と向かい合わせた。
バキ…っ、バキ…っ。と地面に大きな亀裂が、自分たちの前で入り始めた。
「これ、現実か?」
その大きな亀裂から、ごつく、でかい手が出てきては…体を下から上へ押し上げる。
即座に理解したーー。
ーー宇久白の言っていた脅威とは、これなのだ、と。
まだ地面から這い上がっていない怪物の頭へ、凛月が刀を抜いて切りかかる。
「…!」
そこには怪物は居なく、自分たちの頭上へ跳ね上がっていた。
伊織、涼風はその動きに驚愕の視線を送り、臨戦態勢へ入る。
凛月の一撃がかわされた…これだけで、注意するに値する。
凛月は振り切ったその遠心力を利用し、回転しながら背後をふりかえってまた切り込む。
怪物は手を両断され、右拳を握って凛月へ振りかぶったーーが、それを涼風が見逃すはずもなく、左腕だけとは言わずに右腕も切断した。
そして伊織は落ち着いて銃剣を剣モードに設定、心臓へトッ…と突き刺す。
凛月は右から後ろへ回転し、左から右へ切り裂いて頭の上半分、脳を破壊した。
「うん!結構動ける!!」
涼風は手のひらに自身のグーパンチをパチンパチン!と当てる。
「これは……?」
あ、通信だ。
一体を倒した後、すぐ持たされていた無線から急遽、異能本部から通達があった。
それを、涼風と伊織も同様に聞いている。
「先程起こった地震によるものか、まだわかっていませんが…今、六本木とは言わず東京全域に怪物が大量発生中!!」
話の途中、聞きながら巨大な亀裂に目をやると、奥の方で既に大量の怪物が市民を襲っていた。
声は荒らげず、静かにその場へ向かう。
「報告によれば、地面に現れた亀裂から怪物たちが出てきていると!!」
「こっちもそう!!」
「涼風達の皆さんは南側の怪物処理、及び警察との協力の元、市民たち避難誘導を急務として下さい!!!」
「はい!」
「了解です」
「はい」
通信機からの声にそう反応して、目の前の怪物を凛月がどんどん切りつけて行く。
道路の脇に伊織がしゃがみこんで、何やらスーツケースをあけ、それがパソコンの形へと変形していく。
ーーカチカチカチ………
と、キーボードを触り、伊織は後ろを振り返る。
遥か後方、しかしとんでもないスピードで近づいてくるその物体は、伊織の目の前にきて静止した。
「よしっ、!」
それをガシッと掴むと、剣のように持ち、伊織特製のブースト機能を使って宙へ舞い上がった。
上から怪物へ、刀を振り下ろして切るーー
「!??」
涼風も凛月も、そりゃ当然に驚いていた。
「見たかよ!作ったんだぜこれ!!」
「いや…凄いけど、」
言葉を濁す凛月を目にして我に戻ったかよのように、避難誘導を即座に始める。
「基本的にこんなかで1番強いのは凛月だ!凛月を中心に避難誘導範囲を広げていくぞ!」
伊織が叫んだ後、「うい!!」と涼風が応答した。
建物からわんさか出てくる人を、安全な方へと誘導していく。
「あ、あ、あー…みんな、反応しなくていいから聞いてくれ」
すると突然、通信機から宇久白さんの声が聞こえる。
ーーこれを聞いていたメンバーは少し、耳へ注意力を割いた。
「多少の犠牲は気にするなよ。異能団はいつだって汚ねえ方法で、犠牲を隠してきた。それも、今日で終わらせる。今からお前らの仕事は、異能者の最初の目的、怪物を殺せ」
、、正直…民間人なんかより俺は、異能団のみんなの方が大切だ。こんな事…言ったら怒られんだろうなあ。
「…!!」
涼風は街中を走っていると、ビルの壁にトカゲのようにへばりついているのを発見した。
先程の宇久白に多少の恐怖感を覚えながら、怪物を処理していく。
俺たちは思い知らされているーー
『異能者』は、元々怪物を排除する事が急務だったという事に。
ヘリやその他の移動手段で、それぞれの場所に警官ご配属され、異能者の戦いやすいようにと避難誘導が優先された。
神崎隊は当たり前として、東雲隊、リア隊の3方向へ、怪物は吸い寄せられていくように散っていく。
「あ、はーい。もしもしーすずっち?、、うん。こっちはもう大丈夫そう。けどまだ避難誘導が終わりきってないよ」
リアが涼風の問に答え、神崎隊、東雲隊も同じであった。
ーーすると突然、ゴムを弾いた様な振動が地表を弾ませた。
「…な、!この反応…、、」
異能団本部、司令室の最新型怪物レーダーによる反応は、カテゴリー5最大とするならば、カテゴリー3上位帯の数値を示していた。
「神楽さん!た、…大変です!!そちらの方向に怪物カテゴリー3上位の出現が確認されました!!」
「うぇっ!!まじ?!確かカテゴリーって…」
リアは少し前に聞いた怪物の強さを分けるカテゴリーの説明を思い出そうとする中、続けて報告者から…
「周囲に先程の2倍の怪物出現!!…、、これは…!」
と、報告を受ける。
リア達の耳にははっきりとある音が聞こえたーー。
建物を壊しながら…近づいてきてるのか、?
それも、かなりのスピードで、だ。それを初めに感じ取ったのは神楽であった。
「2人とも。少しだけ静かに!」
2人は声を出さずに頷いて、集中する神楽を見つめた。
(強化五感…聴力)
あと、250mってとこか?…220、190…。どんどんこっちに来てやがる
そして俺は通信した。
「司令室。ここらで避難誘導が住んでる地域は?」
「そこから左側全域と思っていいです!!」
「お〜…け〜〜、、君、伝え方良いね。ありがと〜」
「貴方の戦いをサポートする様言われています!何かありましたら遠慮なく!」
そして俺は左側へダッシュで駆け出した。
「ちょ!どこ行くの?!」
リアが神楽へ驚きを隠さずに言った。
「リアは全力で怪物処理!めんどくせぇ事は俺に任せときゃいいんだよ」
窓ガラスで側面を覆われたビルとビルと間をキックしながら進んでいく。
鉄のフェンスの細い幅へ両足で着地して、すんばりを効かせて高くジャンプした。
ーーすると、遠くから俺に向かって轟音が近づいて来る。
俺は後ろを振り返ると、ボッカリ穴が空き…砂埃を撒き散らしながら黒い物体が迫ってきていた。
向けられた拳には謎の迫力…それに伴って威力がついて、ギリギリでかわした拳は俺の立っている床へ当たる。
宙に浮く感覚の中、俺は刀を怪物の頭へ横から斬りかかり、ガチィン!と強靭な腕で止められてしまった。
俺の目は次、怪物の足へ行く。
神楽の攻撃を止めた怪物は、エネルギーを貯める様に足を振りかぶり、一気に放出した。
「あっっ…ぶ…、、」
それもまた、神楽は双剣の一方を使って防いだが、衝撃波を食らってしまい、遠くへ吹き飛んでゆくーー
床を滑って行くのに対して必死に抵抗し、スピードが緩んで行くにつれて目線をあげた。
カテゴリー3上位種…その姿を神楽は目の当たりにした。
刀を持ち替え、臨戦態勢に入る。怪物とのにらめっこも、ほんと1秒。
ーーお互いがお互いに向かって、地面を蹴って進んだ。
「!!」
エネルギー貯め、放出するはずだった怪物の右腕は、血の飛沫を静かに垂らして地面に落ちた。
今までの怪物には見られなかった衝撃波の放出…!!
そんなんやられまくるとかたまったもんじゃねえ。さっさと終わらせる!!
「ニン、ゲン」
「だっっ!?!」
背後から完全に心臓を捉えていた俺の刃の突きは、
人体の構造等一切気にせずに曲がりくねってきた怪物の一撃で軌道がズレ、地面に当たった。
ーーそこから1歩踏み込まれ、微力の衝撃波を持った拳での乱打が続く。
(右腕が治ってる…!)
数々の建物の上を飛び移りながら、轟音と共に高速で刀と拳が交わる。
拳を切っては再生。を繰り返しながらも、俺はある一瞬の好きを見逃さない。
怪物の重心が右にズレた一瞬━━俺は右へ飛び出して、逆手持ちした刀で心臓を刺す。
加え、怪物の頭がボトっと地面に落っこちた。
心臓を突いたあと、神楽は軽くジャンプする。
腰を曲げ、右腕を酷使して怪物の首へ刀を入れた。
ーーこれを可能にしているのは、神楽の異能とはまた別…【超軟体】という体質故だった。
少し目を落としたとこに転がる怪物の生首を、神楽はその刀で滅多刺しにした。
「ふぅ…、北海道に居たやつの方が強かったなあ…」
そして俺は司令部に通信をする。
「サポートくん?他にこんな感じの奴いる?終わったんだけど」
でも骨あったなあ、このレベルポンポン出てこられちゃ困るわ。
「…?!!もう倒したんですか??!!」
「??…あぁ」
「…まだ生体反応は未だ継続中です!!」
「ーーえ」
後ろを振り返ると目の前に怪物の頭が見え…すぐに腹部への莫大な衝撃と痛みが走るーー
その場から神楽は吹き飛ばされ、鉄フェンスを突き破りながらビルのガラス窓へ突っ込んでいってしまう。
「神楽さん!!無事ですか?!!」
「、ぅお…おぅ、、なんとか…サポートくん、どういうタネか分かるこれぇ?」
ーーガラスの破片と、ぶつけまくったオフィスのパソコンや机の角を振り払いながら、壁に空いた穴から外を見渡す。
「現在解析中ですが、心臓と脳は破壊しましたか?」
「…肋の中心、多分そこに何かあると思うから、そこだけに集中して解析を頼む、、」
「了解しました!」
通信室からの返答の後、再度、強化五感の嗅覚に全振りしてやつの体を探るーーすると、
(ど真ん中…何かあるな?、、?)
怪物の肋の真ん中、心臓と同じように、
肋の内側へ何かが鼓動しているのを知覚した。
あれを潰さねぇと死なねえ…って…?
「…単独でイキるんじゃなかった…」
すると怪物は急激に速度を上げて、小野いるビルの下層へ突っ込んだ。
ーーすると、ビル自体がピキピキと音を立てて、ひび割れがどんどん進んでいく。
下層で怪物が手を上に振り抜いたのか、神楽の周りへ衝撃波が流れ、色々なものが粉々になって吹き飛んでいってしまった。
下…ーー!
神楽は下からビルの端を蹴って急速に上がってくる怪物を迎え撃とうとし、刀を合わせた。
「、、っグ…、!」
勢いをまともに受けて俺はビルの端から屋上まで垂直に、床を壊しながら進んでいった。
外へポーンと投げ出された時、足を捕まれ、近くにあった団地に投げ飛ばされてしまった。
「神楽さん!!」
「師匠…」
あらゆる壁を掻き分けて、レンガの壁を背もたれにして倒れ込む。
そこからゆっくり起き上がり外を見る。
高く飛び上がりながら建物を次々に渡りながらこちらへ近づいてきていた。
「神楽さん!!リア隊と合流して作戦を建て直してください!!このままじゃ無理です!!」
神楽はそんな通信を無視して、高くジャンプをして建物へ飛び移る。
「こいよ…」
刀を握ったまま、両手を広げて迎える。
目の前まで怪物が飛んできて、拳を振るーーが、俺は右へふんわりと避けて…続けて怪物は俺に向かって乱打するが、俺はそれを舞を踊るように避ける。
避ける度、刀で踊るように、滑らかに怪物の体を切ってゆく。
怪物と面と面を向かい合った時ーー怪物の衝撃波を持った攻撃が真正面から飛んでくる。
神楽はその衝撃波を、自分に当たらず、周囲へ逃がすような斬り方をした。
怪物は心底驚いただろう。神楽は怪物の体に密接し、その周りをクルクルと回りながら斬り続けていったのだ。
最終的、神楽は後頭部を地面に踏み倒し、全身を一気に切り刻む。
四肢を削ぎ落とし、衝撃波で対抗して来ようと、その衝撃波を外へ切り流す。
痺れを切らしたのか、怪物はデタラメに身体中からエネルギーを放ち、その場から一時的に離れた。
ーーだが、神楽の強化五感、視力はそれを見失う事など無い。
怪物が地面に降り立つと同時。
「!!?」
逆手の刀で心臓部を突き刺した。
裏拳へ威力を乗せ、俺を振り払う怪物。
「待て待て、まだ、核を潰してねぇだろ?」
逃げるなという意味を込めて言葉を放った。
「全力でこいよ。手加減したら負けんで」
怪物を挑発し、たった数畳の間合いで拳と刀が一度に交わった。
ーー腕が落ち、足は崩れ、血が飛び散る。
「怪物にも焦りってあるんだ」
周囲の建物だけが崩れている。
加え、砂埃が撒き散っている中で、パキっ…というガラスが割れる様な音と共に見えてくる光景。
それは、神楽の刀が核に刺さっている事の暗示だ。
『カテゴリー3上位怪物…、、生体反応消失!』
「今までの怪物の中じゃあ、2番目くらいかな?」
『神楽さん……単独撃破!!!』




