何事もない日常
早い…、、!
それもそうだ。あんな純鉄で出来てそうな鎧を年中付けているから…付けていない時のスピードは比にならない…!
東雲は攻撃を避けるとき、車の窓ガラスを割って車1台の中を通り抜けていく。
直後、東雲は車のドアを掴んでこちらへ投げて寄こしたのだ。
「…どこに…っ?」
そう思った途端、後ろから何かが走ってくる音が聞こえ、「まさかーー」
ーー と思って振り返る。
「そんなこと…出来るん、ですか、?」
「当たり判定があって良かったよ」
周囲に散らばっている譜面の上を高速で流れている音符の上を忍者のように走る東雲は、車のドアを持ち、采音へ突っ込んでから腹を一発蹴って奥の壁へ追いやることに成功した。
「ドアを、剣みたいにする人って…いますか?普通」
「?!」
采音の心情を、この攻防で東雲は着実に理解していっている。
采音も、少し前までは普通の女の子だったはずだ…
なのに、彼女を変えてしまったのは言わずもがなーー異能力だ。
(この子が今の異能団に居てくれたら…どれほどの助けになっていたか、。)
なんてのを考えてしまうと、彼女に足元をすくわれてしまう。
「ガっ、…っ
ーーはっ、はっ、、!」
私は全身に力を入れて今度こそ覚悟を決めてから采音へ走り出すーー
何度も何度も自分は物語を引き伸ばすような事をしていたのだと客観的に見て思う。その分、采音の期待を裏切っていたというもの同様だ。
「ーーなっ…?!」
私は右手でアッパーの様な形で、采音の笛をへし折る。
左手に持っていたのは、鉄の破片…と言っても、なかなかに大きく刀の様で、それを采音へ切りつけた。
東雲と采音の戦いを、警察及び、東雲隊の2人も観ていた。
細かく斬撃と殴打のような攻撃を使い分けながらも被害規模が馬鹿にならない程広い采音。それを避けながらダメージを追わせる東雲。
両者ともーー民間人への配慮を欠かしたことはなかった。
「あ、ぁぁああ〜、…負けて、しまいましたか。はは
は」
建物にもたれかかって、どくどくと傷口から血が吹き出るのを感じる。
東雲は、なぜ最後、力を弛めたのだと、采音へ問いただしたい気持ちをグッと抑える。
倉持采音…有名な音楽家の倉持秀蔵の一人娘で、厳しいレッスンの末、両親を異能で殺して異能アカデミーに収監…だったな。
力を手にし、最初は両親の殺害だと思考が生まれる時点でどのような環境だったか、普通に生きている人間の感性なら容易に分かるはずだろう
彼女が人を殺してまで言って欲しかった言葉はもう、分かっている。
「采音。お前の音色、良かったぜ。」
「…ッ!!」
しんしんと雪が降っているのを連想させるその着物はもう、血で染まっているが、そこへ采音の涙がこぼれ落ちた。
言って欲しかった言葉を、この人は言ってくれた。
それだけで十分すぎる生き様である。
「東雲さん、彼女は…?」
斑鳩が、そう私に聞く。
「殺したよ。」
「そう…ですか」
※※※
「霧島…、、で合ってるかな?」
「…はい?」
鎧を着た後、警察のところまで行くと私はある事を言う。
「丁寧に扱って欲しいんだが、頼めるか?」
「当たり前です、任せてください。」
運ばれていく采音を見て、そう呟く。
※※※
病院のある一室。そこで東雲は風木と斑鳩の同伴で、治療を受けていた。
「いたっ」
「あ!ごめんなさい!」
東雲隊の治療を担当しすぎて、半ば専属状態になっている愛菜という看護師。
「なんでしょう…これ」
愛菜がそう、小声で言う。
「どうしたんですか?」
「結構深くまで切られてるんですけど…なんでしょうかこれ、、?急所は外してあって、しかも傷口が一つ一つそうするつもりだったみたいに綺麗なんですよ。物凄く縫いやすいです。」
「お人好しめ…、、」
治療が終わり、服を着て外へ出る。
「2人とも。蕎麦食いに行こう」
「あー、いいですね。」
「行きましょう行きましょう!」
「今回は私の奢りでいいぞ」と、東雲が付け足すと、風木、斑鳩は揃って「遠慮します!」と断りを入れた。
※※※
ある人に招待されて、グンマとリアは、バーのドアに手をかけて、鈴の音と共に開ける。
「こんばんは…!」
できるだけ、「元気なリア」を装ってマスターと神楽に同時に挨拶をした。
「お待ちしてましたよ。ご予約通り貸切なのでゆっくりしていってくださいね」
マスターは厨房の酒を片しながらそう言う。
神楽と目が合うと、ここ、ここ。と指で席を指し、そこの席に2人で座る。
何か話すのかと思い、用意されていたソフトドリンクには手をつけずに神楽をじっと見つめている。
…見つめているだけの時間が少しずつ過ぎていき、リアは痺れを切らした。
「…何なんですか?」
「あ〜!や…っ〜〜っと口開いたあ。喋れなくなったのかと思ったじゃん」
「……」
いつもなら適当にあしらうリアだが、そんな余力が無いのか、はたまた…。
そんなリアを見て神楽はこう言ったのだ。
「何?落ち込んでる私可愛い〜…ってかあ?」
「神楽さん…!」
最悪すぎる空気に耐えかねてグンマが椅子から尻を弾ませた。
それでも、リアは下を向いたままだ。
「よくもまあ…そんなんで遠征に行けたもんだな。俺なら願い下げだわ」
ガシャン!と机が揺れた。
そこでようやく、リアの右手は、神楽の胸元を掴んでいて、静かに歯ぎしりをしていた。
「何だ?」
「分かってんだよ…怪魔がした…選択が1番良いって!そんな事は分かってんだよ!!」
「じゃあ毅然としてやがれ!当たり前みたいに!!私はこんなんじゃ凹まねえって!!なんなら強くなったって思って!!後輩嘘つきゃ良いだろ!その嘘を実現すりゃ済む話だこれはよぉぉ!!」
今まで嫌味の様に言葉を吐きながら椅子に座って、酒を飲んでいた神楽がリアと共鳴する様に、席を立ち上がった。
「ジュース飲んで!!」
俺はリアの顎を鷲掴みし、飲み物を流し込む。
「ちょっ…!、ゴゴゴッ、!ボ……!」
リアが飲み切るのを待たずして神楽は話を進めた。
「後輩達にカッコつけて!!実現して!!そっっれでもなんかあったらーー!」
「…あったら?」
「俺に言え…どうにかこうにかして、俺が何とかしてやっから…」
口の横からヨダレではなく、無理やり飲まされたドリンクが少し垂れながら、リアは神楽を見ていた。
そして、リアはストン、と椅子に座る。
「…マスター!!大きな声出してごめーーん!!ソフトドリンク同じ奴お願い!!!」
「はーい」
厨房からマスターの声が小さく聞こえた。
その後、ソフトドリンクを飲みながら、「不器用だなあ」と呟いたのであった。
※※※
「伊織ー。これがこの前使ってた武器?」
「ん?あぁそう。試作品で、完成品だな」
頬杖をついて何やら書類を書いている伊織に、涼風はへんてこな質問をした。
「試作品で完成品?」
「あー…怪物の細胞って細胞や異能を酷使する時、特別なエネルギーを使うだろ?あれの抽出で…なんか色々な力に変換してるんだよね。異能者なら、細胞一つ一つに力の弱い異能が宿ってて、その細胞を燃やしすことで異能の出力を上昇させれる…みたいな?数十兆の人間の細胞全て括って異能…って言ってもいいな。」
長ったらしく伊織が語るせいで、その部屋の物の数を数えることに集中していた。
「え、えーと…つまりは、、出力の高い異能を使おうとすると、より多くの細胞を燃やすってこと?」
「そうだな。今その論文とかを書いてるんだぜ」
「え…え?!すげ〜、!!」
「結構前から書いてるからなあ、もういいや。」
半ば投げやりに書類を片して外へ出る。
近くの店から凛月が出てきて、すぐ外での合流を計画していた。
少し、街中を歩いているとーー
「君!!止まりなさい!!!」
笛の音と共に、怒号の様な声が聞こえてきた。
その声が聞こえてくる方向を見ると、小さな男の子が警察官2人に追われていたのだ。
そこで、凛月は嫌な予感がする。と声を漏らす。
「ちょ、ちょちょちょ!やっぱり来た!!」
その男の子の道先にはちょうど俺たちがいたため、凛月の足に抱きついて助けを求めて来たのだ。
ちょうどそこへ警察官もきて、面倒な状況になってしまったが、
凛月や伊織は割と顔を知られているため、関係者ではないと思われてる。
「すいません…彼、異能者になったばかりの子で」
「へぇ〜!でもなんで追いかけるんですか?」
「慣れていない異能が街中で暴走でもしたら大変でしょう。最初は優しく異能学校へ連れていこうとしたんですけど…」
「はいはいはい!!だってさー僕。学校行くだけだから!!大丈夫だって!」
自分の足にしがみついている子に向かって結構明るく話しかけたつもりだ。なのに、その子は涙目。
ーー何故か分かる人は居るか?
その後、警察に連れていかれる少年を見送って炎魔さんの所へと向かった。




