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ファンタジーは現実へ  作者: ぽこぴ
海上都市ポセイドン
76/85

思いのぶつけ方

「いや、いやいやいや。おかしいでしょ!」


友達にそれ取って!というよりも軽い言い方で、団長を任された事に涼風はすぐ宇久白に詰寄る。

当然、その場に居たみんなも驚きの表情をしていたに違いない。


「何がだ?」


「な、なんで俺?!他にもいっぱい…、いるでしょ!?」


頬杖をついている神楽や神崎等の方をチラリと見てそう宇久白へ言い放つ。その申し出に即答するように、「いやいやないない。みんながなんて言おうが3代目団長は涼風、お前だよ」


ーーなんていうのをスカして言われても、


「ふ…っ、。」

宇久白は俺の頭へ手を置き、多少上下に揺さぶる。


「皆!!

これからの反逆軍との戦いは殺し合いじゃない!思いのぶつけ合いだ。だから頼む。あいつらを救ってやってくれ」


全員が唖然になったというか、なんというか。

個々で宇久白へ挨拶をしてから部屋を出ていく中、宇久白はある人物の部隊を引止めた。


「東雲。この後少し…時間あるか?」


「…。わかった。」

別室へと移動し、風木と斑鳩(いかるが)を含めて話を始める。


「それで、なんだ?」


「近々、東雲の所に反逆軍の誰かが行くと思うんだ。憶測でしかないけど」


「わかった、心しておくとしよう」


「あぁ…ありがとう」

今までの宇久白と少し変わったか?少なくとも私の目にはそう見て仕方がなかった。


「異能も伝えておこうかな、正直、俺が異能団で1番東雲を信頼してるからね」


「宇久白は意外と口下手か?それで…私の元へ来ると予測される人の異能は、なんだ?」


「それがねぇ、…」



※※※


街から少し外れた所の暗い夜道。

民間に反逆軍の存在が公に公表されている訳もなく、チンピラとしか言えない輩がうろついているのが当たり前のような場所である。


「ねえねえお姉さん!

今1人ー?なんかすごい綺麗な服じゃん!」

絵に書いたようなナンパ男の格好をしている人が、ある女性に声をかける。


ーーその女性は音楽の音符の柄がチョイスされた真っ白の着物を着て、全体的に和風であった。


「そうですか?ふふ、ありがとうございます。」


その男はいやらしく体を頭から足まで見ると、私の手に握られている横笛を注目した。


「その、笛?みたいな??なんか弾けたりするの?」


「まぁ、少しなら弾けますが…聴きますか?」


相手の意を汲んでそう提案する私ーー

そして横笛に唇を付け、たった一音だけを(かたで)る。

点滅する街灯によって不規則に照らされる地面。その照らされる地面は、先程のナンパ男の血で染まっていた。


「ダメですよ?今日の私はただ、散歩をしていただけなのですが、殺す気にさせたのは貴方…男というものはいつまで経っても、憎いものですねえ。」


ピチャピチャ、と血の上を歩く度、音が鳴る。

元々の体質の絶対音感は、怪物化し、それに適応した事によって更に力を増した。


「あぁ…貴方から来てくれて私は嬉しいです…!そちらまで伺うと…天水マリアとかいう不純と相対することになっていたかもしれない。大好きです、東雲さん!!」

すぐに会いに行きます。明日でも、明後日でも。何時でも…。


廃墟と化した大型倉庫、いつも反逆軍のみなが集まっている場所。

私はそこへ入ってゆく。


「ただいまですー」


「おかえり」

そう返してくれたのは(しゅん)君だった。

全体を見渡して、珍しくメンツが揃っていることに気がつく。

「雲波さん、どこに行ってたんですか?」


「海上都市ってとこ。土産全員分あるぞ」


「え?!まじでぇ〜!!」

椅子に座ってただ天井を見ていた足立(あだち)がその大きな刀を下ろた後、

異様なまでに食いつき、ワクワク感をただ漏らしながら雲波に近づいた。


「…って、こりゃ一体なんだ?」


「魚味キャラメルポップコーン。どうぞー」

軽く投げて足立へとパスをした後、「瞬!」と声をかけて渡す。「ありがとう。」と返事を貰い、続けて采音(ことね)へも渡す。


「ありがとうございます。」



「加賀美。お前にもあるぞ」

加賀美収也(かがみしゅうや)。恐らくこのメンツの中でも随一で暗い性格の持ち主である。


「要らねえよ」


「食ってみろって。せっかく取ったんだから」

半ば無理やり収也の手のひらに乗せて夜鴉(やがらす)と団長の元へ行く。


「ほらよ夜鴉。」

「あんがとよ。」


「団長もどうぞ」


「おう。ありがとう」


「……?どうしました?」

団長は俺の顔、といっても仮面をつけているから面を見ている図になっているが、俺をジッと鋭い目つきで見てきた。


「いや、異能団とか警察に見つからなかったか心配でさ」


「あーそれはですね。面を外して行きましたよ」


「?!!」


言わずもがな、その場にいた皆が雲波を見た。

顔に出すものと内心で驚く者、様々だ。


「外して」


「嫌ですよ」


「外せ」


「嫌ですってーー、え?!ちょいお前ら!!離せ!!!離せえぇぇ!!」


カラン!と面が地面に落ちた。



そんな雲波が叫び散らかしている所を、私は瞬君と傍観していた。


「ずっとこんなことをしていたいと、心の底から思うのですが、それと同様…やらなくちゃ行けないことがあるというのは(しあわ)せのはすがどこか(つら)いものですね」


「そうだな。俺も早く…やらねぇとなあ」


「弟さんが、いるんでしたっけ」


「…あぁ。ずっと、俺が面倒見てきたよ。

弟のためにどんなことだってしてきた…窃盗も、恐喝も、時にゃ人殺しだってやった気がする。異能者になって記憶が少し曖昧だけどな」


「愛せる家族、ですか、」

少し冷たく、トーンの下がった声でそういうもんだから、俺は横にいる采音をチラリと横目で見た。


その時の采音は少ししょんぼりしていて、言ってしまえば泣きそうだった。


「Loveではなくて、likeのニュアンスで言いますが、私は貴方が好きです。」


生きるために幾度となく他人からの好きや愛などを疑って、時には自分から嘘の愛を与えて騙してきた俺。

でも采音の ”それ” には何故か、疑いはかけることは出来なかった。


「今帰ってきたばかりなのに、もう行くのか?」


「はい、長居(ながい)をして、決意に揺らぎが出てしまっても困りますからね」


「そうか…そうだな。」


「初めの頃、私に色々教えてくれてありがとうございました。言うことは、これだけにしておきます」


そう言って采音は立ち上がって外へ通じる扉へ向かう。

「采音」


「はい?」


「元気でな」


「はい!」

建物がボロいためか、歪んだ機械音が扉の閉まる(たび)に音を増す。

そのせいで、采音の歩みの音色が聞こえなかった。




「采音は、行ったのか?」


「そうっすねぇ…」


「こういうのもおかしいけど、良かったのか?」


「俺は思うんですよ…ボス、、。

転生とかが無いなら、天国は今までの死者でギュウギュウ詰めだ。でも転生があるなら、死者を新しい生者として送り出す。もしくは生まれ変わったりとか?

だから、采音との関係は来世に任せます。僕だって…彼女がlike(すき)ですから」


団長との会話を俺はこれで終わらせて、太陽が登る。


ーーその日は何もせず、ただただTVでニュースが流れてくるのをひたすら待った。



※※※



「東雲さん!こっちです!!」


「はい!!」

別件を終わらせたばっかなんだが…運が悪いな。


地下鉄内で怪物発生の緊急通報が東雲隊へと寄せられ、同時刻の任務を終わらせたのち、即座に現着した。

避難誘導は済んでおらず、地下から地上への階段に凄い行列ができてしまっていた。


「東雲さん。対怪物処理課(たいかいぶつしょりか)在籍の霧島です。」


「地下鉄内に怪物が居るのか?」


「はい、私に捕まって下さい。今すぐに」


「分かった。」


霧島と名乗る者に捕まると、フワァっと体が宙に浮き、混雑している人々の頭上を飛んで地下へ着地した。


「ほお…いい異能だな」


「光栄です!…それで、怪物は……ッ!」


人がどんどん外へ掃けて行くに連れて視界が鮮明になっていく。


「あれは…、、」


怪物が呻き声を上げながら、壁へ追いやられて居た。

次の瞬間、血しぶきをあげて脳、加えて心臓を破壊され、その奥からカラン、カラン…と下駄で歩く音が聞こえる。


「良かったです。東雲さんが居てくれて。」


「霧島と言ったか?今すぐ外へ行って避難誘導を進めろ!」


「了解です!ご武運を!」

話がよくわかる人だなあ。と感心を持ちながら、真正面の女の子に注目する。


倉持采音(くらもちことね)…宇久白が言っていたぞ?反逆軍で1.2を争うレベルで要注意人物だってな」


「宇久白…懐かしいですね…、雷さんに全て押し付けた男ですが、私にはどうでもいいんです。」


「…?!」

私の目の前に、楽譜の様な線が現れ始めたのだ。反射的に後ろへ後退し、距離を取る。


「思いのぶつけ合い…これ殺し合いではありませんよ。」

そう言うと、横笛を咥え、曲を吹き始めた。

そうすると、先程見えた楽譜の上を、音符が高速で流れ始める。


ーー聞いていた通りだ…、これはっ!!、

当たり判定のもつ音階の出現…類を見ない稀有(けう)な異能!!


「期待されて…重圧も凄かっただろう!何故誰にも相談しなかった?!」


私の防御モードもあまり意味を成さない事は直感で理解した。

辺りに立てかけられた看板や、円柱型の地面と天井を繋いでいる建造物も、采音の攻撃をかわしたことにより、流れ弾のように当たってしまう。


「出来たなら、しましたよ…私の話を親身になって聞いてくれたのは…っ、、反逆軍の人だけでした!異能団じゃ…ないっ…!!」


ーー1度話した唇を、再度笛へと付ける。


更なる斬撃と、殴打の様な攻撃の猛攻により、私は外へ飛び出た。

太陽の日に当たった彼女は、言うなれば源義経(みなもとよしつね)の様な機敏な動きをしていた。


音階を流れる、休みを表す音符の上へと乗って宙を移動する。

そこまでなるのに…どれほどの研鑽を詰んだのか。若い体でありながら…今では人を殺すことも惜しまない…。

東雲(しののめ)は攻撃を掻い潜ながら、采音へと近づいて拳を振るーー。



「別の…しっかりした生き方を模索する事だって出来たはずだろう…!!」


「いえ…これで、いいんです、これで…!」


采音から発せられる猛攻がピタリと止み、私は采音を見上げるーー


「憧れと戦える…それだけでいいんです。東雲さん。」


「……分かった。霧島!!何があっても撃つな!」


「?!!」

ーー嘘だろ?東雲…。

あんたにとってそいつは異能者という共通点しかない…ただの犯罪者だ。そのはずなのに、何故敵の意を汲むんだ?!


采音の背後で銃を構えていた霧島へそう言うのと当時に、私は少しだけ離れた場所で動いて貰っている風木と斑鳩(いかるが)にも無線で手を出すなと言っておく。


采音は地面へ降り立ち、私と向かい合う。

「交響曲第五番ー運命。」


「ッ!!」

(まばた)きをした後、視界中に楽譜が現れてあらゆる音符がその上を駆け抜けるーー


車を殴り投げ、譜面へ重ねると、丸い休符とぶつかって丸い穴が空く。


基本的に当たったら一発アウトレベルか。

元々人通りが多いのに加え、近くで大会があったために車が多い。環境を駆使して戦う…戦闘の基本だ。

数々のアクロバティックな動きにより、呼吸が荒くなり始めるのを知覚しながら采音へと近づく。


私が前々から感じていた予感が、そこで的中するーー

(…?!異様に、攻撃が低い…?!)


次の瞬間、グワァン!、と足元を引っ張られ、体勢を崩してしまった。


「ーーしまっ、」

咄嗟に防御モードへ切り替え、受身を取るも、身体中の来ている鎧に切り傷が付けられ、中には内部の皮膚に到達しているものもありながら、休符で殴打された。


「ガ…ッッ、あーー」

ダメだ、言ってやらないといけないのに。


「…東雲さん?」

「宇久白から事前に君の話を聞いていたのに、最初からこうすればよかったな。」


そう、東雲は呟くや否や、鎧を剥ぎ、地面に投げ捨てるーー

そうして現れた東雲の体はまるで合金であった


「私は君、倉持采音との戦いを殺す気でやるぞ」


「やりましょうか…」




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