異能とはなにか
あ、この一撃を入れたら…こいつは死ぬんだ、
そんなの何となくわかってしまう様になってしまったのは、初めて怪物を殺した時、人じゃあない。
「ごめん。ごめん。ーー、。もうあの怪物は、居ないから。ほら、僕と遊んだあの林まで競走だ。」
そう真っ青になった顔色をしたお兄ちゃんが見つめてくる。「うん。」とだけ言って私は地面を蹴る。
林に着いて、お兄ちゃんを待つてた。
でも来なくて、すぐにピーポーピーポーって音がしたの。少し気になってさ、お兄ちゃんには悪いけど少しだけ見に行ったんだ。
ーーお兄ちゃんが死んだ。
お兄ちゃんが仕事に行ってて、お兄ちゃんのいない間の家は地獄だった。
母から暴力は普通で、父からは性的な目で見られた。
お兄ちゃんが帰ってきた。
でも今日は運が悪かったのかな。
帰ってきたらいつもは暴力わやめてくれるのに、今日わやめなかつた。
「やめてっ…やめて、!」
止まらない暴力。止まらない…暴力、、
お兄ちゃんは、今草むしりをしてる
家の中で、あたいの中の何かが吹っ飛んだ。
目が覚めた時、お兄ちゃんがあの怪物はもう居ないって言ってた。
怪物は、お母さんたちのことなんだなって、分かったの。
お兄ちゃんと約束して、林に行って、、草をかき分けたり、むしった草を使ってあたしの名前を作ったり。
ーーピーポーピーポーって、何?
近くの川、たくさん人が居るみたい。
「どうしたの…かな……ッ!」
お兄ちゃんが、死んだ…っ
自殺だって。入水自殺だって。
ーーなんで?
ぶち壊れた家、ぶち壊れた親、そんなに親が好きだった?あいつらのことが?好きだったの?
分からない。分からない分からない分からない。
私を置いていった理由を、教えてよ、お兄ちゃん。
最初の頃、少しだけいってた学校で教わった体育座り。
それをして、ぶち壊れた家があったはずの場所に座っていた。
「おい、てめえ、、いや君ぃ、…何……んん!っっしてんだ?」
苦しそうに口調を整えるお兄ちゃん。
「大丈夫ですか?」
「老けてるお兄ちゃん。黒いお兄ちゃん。ふふふっ!」
「なっ、、老けっ!…はぁ。」
「1回殺していいか?」
そう。異能団が私の居場所、楽しい楽園だ。
※※※
「お前がっ!」
弾くように言い、風属性の顔に一撃。
「壊していい…っ!」
続けて一撃。
「場所じゃっぁ!!」
加えてまたの追撃。
次が最後なのだと、傍から見てて分かる。
「ねえぇぇぇんだよ!!」
ダメだ、それをしたら…なんてのを考えた瞬間、咄嗟に声が出た。「リア!!」
ーー俺ではなく、怪魔がリアの目の前へ飛び出してリアの渾身の一撃を止める。
「リア…俺を死んだみたいすんなよ?まだ、生きてるわ」
「…ぁ、、怪…魔…」
ふわあっと前のめりになっていって、意識がなくなり怪魔へ倒れ込んだ。
怪魔はリアをそっと地面へ横にする。
「お前ら…少し来てくれ」
低い声での呼び掛けで、みんな怪魔の元へ寄った。
「覚えとけよ?
異能ってのはな…廻るんもんだ。五属性の誰かが死んだら…世界の誰かがその空いた枠を埋めるみたいに異能者になる…そういうふうになってんだよ。ここで風属性を殺さないのは自然の摂理っつーか…理に反する訳だ。」
そう言われて、涼風は血まみれのやつを横目で見る。
「俺がやります。テロ組織の残党もここに来るまでに切ってきました。今更というか、人を殺すのにはわけがあって抵抗はありません」
ーー凛月がそう冷たく言う。
「ダメだ凛月、やるべきはお前じゃあない。伊織でも、グンマでも、リアでもない…俺だ。」
「…!それは…!!」
皆、そんなことないって咄嗟に思った事だろう。だがグンマだけがそれを声に出していたのだ。
「俺は、日本生まれじゃねぇんだ。海外の戦場でやらかしてなあ、、死んじまったんだよ。
でも目が覚めたら、そこは地獄じゃなくて幽霊みたいになった俺が、たった1人で荒野の上で寝てたんだ。」
1度大きく息を吸って続ける。
「俺は1回死んだんだよ。俺は異能で仲間殺して…自暴自棄になって突っ込んで死んで、怪物になって荒野まで走ったってんだ。俺の存在が、、摂理に反してんだよ…」
ーー震えていたのだ、怪魔の声はブルブルと。
「だから、やるなら俺だ。それに、お前らがやったところ誰かに見られたら困るだろ?」
ははって笑って、怪魔はぐったりしている風属性を抱える。
「怪、魔…」
そう、後ろで声がして怪魔は後ろを振り返り、「リア…、」とつぶやく。
「頼みたいんだけどさ、リア。俺みたいに海外からの異能者が来たら…面倒、見てやってくれよ。」
「ぁ…、あぁ。分かった、分かったから…!早くこっち来いって!!」
「悪い。無理だな」
グンマにリアを連れて行ってもらう様に手を弾く。
怪魔は風属性を体に押し当て、どんどん体の見えない部分へ取り込まれていくーー
殺すなら…リスクのねぇ奴を取るべきだ。
「グンマ、リアをよろしく頼むぜ。」
ーー完全に風属性を取り込んだ怪魔はその愛鎌で、自分の命を絶ったのであった。
※※※
「いやーほんと…!ありがとう!!君たちのおかげで助かったよ、、!」
港までの道のり、その道中でそのような言葉が沢山俺たちにかけられる。
称賛の声だ。でも俺たちにとって、その声は霊力がどんどん無くなって塵になって行った怪魔への冒涜にしか聞こえなかった。
港へ着いた時、そこにはヘリが止まっていて、中からは宇久白が出てきた。
メンツを確認するようにそれぞれと目を合わせていく宇久白、そんなことしなくても、一人居ないことなんてすぐに分かった事だろう。
「迎えに来たよ。…5人とも、」
ーー海の上を飛んでいる最中のヘリの中は最悪だった。全員が黙りこくって、何も考えているのか俺には分からない。
そんな中でもずば抜けて暗い目をして、床を眺めているリア。涼風はそれを目の前で見て痛々しく感じる。
※※※
日本へ着いた時、リアは宇久白へ問う。
「団長が居てくれたら…怪魔は死ななかった…っ、」
ただそう嫌味で言い残してその場を去ろうとするリアにグンマは団長へ一礼してからついて行く。
「リア…!」右腕を伸ばすが…届かないと悟って腰へ戻した。
俺は、どうしたらいいのか。仲間への関心を無くしたら失って…培った信頼を信じたらまた失う。
信じるなっていうのか?仲間を?信じない仲間なんて…仲間と言えるのか?
「宇久白さん。リアなら、立ち直りますよ、」
「……どうすりゃ…良かったかなあ」
凛月には、長い間そばにいたのに一度も見た事のない…宇久白さんの泣きそうな目、「少なくとも、俺らが居ますよ。」
「…伊織?」
「悪い…少し研究所に行きたい。着いてきてくれるか?団長も、来れるなら来て欲しい。」
「あぁうん。行くよ」
伊織のその申し出に、満場一致で伊織宅へ向かう。
紙やら資料が散らばっている部屋に通されて、伊織が開発した変形型の実用武器の元の形であるケースから…ある黒い物体を取り出した。
「あんなことがあった後ですぐに言うから、気分が悪くなると思うけど…この黒いのは…怪魔の肉片だ。」
「ーーは?」凛月が突発的にそう言う。
「2人きりの時に話したんだ。異能は…細胞を燃やして得たエネルギーを使って使用してるってな。怪魔は自分が死んだら…自分の肉片を取るように俺は言われたよ。なんでかはわかんなかったけど、これみたらもう分かった。」
「異能が…細胞を燃やす?」
口元を抑え、宇久白に限らずに皆が驚愕した表情をする。
「あぁ…燃えちまった細胞は異能に適した細胞へと置き換わる…だから、歴戦の猛者が強いんだ。異能を使い込み、それに適した体へと細胞レベルで変わっているからな。」
「なら、五属性が異能の酷使で怯む隙があるのも分かるが、体の一部を使う異能ならどうなる?」
ー凛月は自分や他人を比べ、謎を伊織へ追求した。
「多分、その特定の場所の身体機能が上がると思う。例えば…ホークアイ?だったら、使えば使うほど、元の視力がどんどん上がる、とかな?」
「伊織」
少しの間黙っていた宇久白は、声のトーンを無意識に落として喋る。
「…はい?」
「怪魔の肉片と、どう関係がある?」
「、、怪魔が言ってたんですが…自分は霊力というか、エネルギーを消費してるらしくて。この肉片を見ると…なんか段々と…小さくなってるんすよ」
「なー…るほどっ、ね。じゃあ怪物はエネルギーを使っても適応する前に再生するから、個体の強さは変わらない…って訳か。」
「そうっすねえ。……今のところは」
2人の会話を傍から見ている涼風と凛月は、場違い感が否めないが、黙ってそれを聞いている。
「じゃあ、俺は一旦帰るわ。」
宇久白は会話が終わってすぐ、なにかに納得して満足したかのように玄関へ向かうが、「あ、3人とも。ここんとこ1ヶ月か、もっと長いかは分からないけど、その期間は死ぬほど鍛えといてくれ」
俺たちの返事は聞かずにそれだけ言い残して玄関の扉を開けて颯爽と出ていった。




