虚無る2人。
「…っ」
目にカーテンから差す日光が当たり、それで目を覚ます。
朝飯、昼飯はしっかり食べるのが俺の中で決めている事。これだけは絶対にやると決めている。
昼飯を食い終わった所で、自室の椅子に腰掛ける。
左手であの紙を持ち、それを眺める。
「ニャチャン…だっけか。年が分かんねえけど…まあ、言語が作られるレベルの話、だいたいでいいか。」
そう思い、俺は右手の親指と人差し指で涙袋の辺りを押して目を閉じるーーーー。
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「ご馳走様でしたっ」
パン!と手を合わせ、台所へ食器を置いた後、歯ブラシをしに行く。
シャカシャカシャカ…と、無心で鏡を見つめている。
まるで…虚無。虚無ってるのだ。彼は。
「ねぇ、ベースってよくなァい?」
「んんんっっっ!!!ブホッっぉぉ!え!何!!」
耳元で成瀬がそうASMRの如く囁き、俺は洗面台の中へシュワシュワでドッロドロの歯磨き粉を吹いた。
「いやほら、ベースよ。ギターだよ!」
「あぁ…ギターね、アコギしか知らない…」
「なんで知らないの!ほら!あれだよ!ぼっちのギター!!」
「やめろって…」
「あ!ちなみに私の推しはシックハックのひrーー」
「あー!うん!わかったから!黙って!!」
成瀬のせいで歯磨き粉を付け直した。
※※
今日は任務の日。俺は靴を履いて、玄関の扉を開ける所だった。
「斗真」
呼び止めたのは母さんだったが、その周りには1家総出だ。
「行くんだったね。お仕事」
「うん。」
「色々口うるさく言うと嫌われちゃうから、これだけ。気をつけてね」
「おうっ!」
俺は目を泳がせて、姉ちゃんを見る。目が合うと、姉ちゃんは違う違う!と言わんばかりに、目をくいっくいっと右斜め下へ寄せる行動を繰り返した。
恐らくこれは、俺に見ろと合図していているに違いない。
その方向には成瀬が不安そうな顔を浮かべていた。
「ははっ。行ってきます!」
ただ少し笑って、俺はドアを開けて向かい始める。
そしてすぐそこに車が止まって、窓が空いて見知った人が声をかけて来た。
「涼風!乗れや〜!」
…リアかよっ…、、。
凛月、伊織はもう乗っていて、あと2人のメンバーの所、つまりは船の所まで送って貰う。
思っている以上に早く着いて、その海の匂い、そこらで食べられる海鮮に唾を呑む。
「早く行くぞ〜」
「割とまともな船ッスね」そう伊織が言う。
「まあ、海だからって怪物がいねぇとは限んねぇしな」
「えっ…!居るんですか…ここにも」
不覚にも大丈夫と過信していた涼風が、弱音を零してしまった。
「いや〜どうだろ。大丈夫だとは思うけど…まあ気は抜くなよぉ?」
「うぃっす」
…船に乗ること1時間。
凛月があることを聞く。
「宇久白さんは?」
「あの人来ないよ?んっとぉ…任務あるから」そう怪魔が答える。
「来ないんすか!って…任務、?」
「…おう。そうだが」
凛月はふと…いやガッツリ思うが口には出さない。
(なんでこの人…嘘つくんだろ)
…船に乗ること3時間。
…船に乗ること4時間……
ここら辺で負傷者が出始めるーー。
「おろろろろろろろぅぅぁぉ」
「涼風ーー!頑張れーー!」
「ぶえぇ…やっば…」
そんな俺の横に、新たな人が走って手すりをガシっと掴む。
「あ…あなたも船酔いですか…?」
俺はその人が同乗者か操縦者的な人なのかと思い敬語を使ったがーー。
「いやリアかよっ!なんか2回目!!」
「おrrrrrr…ぅぁ…、、。な、なんだい、恥ずかしがっているのかい?ウブなショタだぜ…ぇ、、おrr」
「誰がショタじゃ…つかそんな身長低くねぇ…し、、、おろぁ…っ」
「ふっ…そんな2人に最高のアイテムがあるぜぇ〜?これだっ!」
俺の背中を撫でていた伊織は少し席を外して、戻ってきたと思ったらその一言を放ち、手にあるものを持っていた。
「ーー酔い止め!!」
「ほらよ」
伊織から涼風へと、薬の受け渡しが行われる。
「あー…あたしの分はぁ、、あ?」
「あっちだ」
そう言って指を私の後ろに指し、その方向から声が聞こえてくる。私はその方向を見た。
「大丈夫ですか?リア」
「おぅ…、じいちゃん、。あんがと〜!」
グンマさんは酔い止めを、リアに投げて寄越す。
それをリアはまるでご馳走にかぶりつくように袋を開けて、飴を口に放り込む。
俺は両脇をフェンスに掛けて、両手をブラブラさせながら「まじ…ありがとう伊織、。」と呟く。
酔い止めは30分で効き目がはっきり出てくると袋に書いてあった為、それまでは気休めにしかならないが。
ーーそれから5時間程経った時の事。
「おいお前ら!釣りしろ」
当然の事だったため、「っしゃあ来た!」とリアは返す。
「いや…なんで俺たちは今、釣りをしてんだ?」
凛月が食い気味に言う。
「飯がねぇからだ」
そう伊織が答えた。
「なんで無いんだよ!」
「ちなみに、俺もない」
「いやなんでだよぉ!!」
「…トホホ、、」
「しゃー釣れたぞ!」
背景で楽しむ凛月を覗いた涼風隊。そしてリア隊。
凛月は持参した昼飯を、ひとり虚しく食べたのであった。
※※※
およそ8時間の船旅を終え、俺たちの目に飛び込んできたのは確かに海の上に浮いている町であった。
「うぉーすげー!!」と、声を上げたいところだが、海上都市に着く前に、グンマさんからある説明を受けた。
「いいですか?この都市は海外の人脈のある金持ちが建設した所なんです。それの開港等を祝った式が明日あるのです。ですが、同時に海外であるテロ組織が暴動化しているらしくてですね。護衛をお願いされると思ったんですが…」
「ですが?」
その続きを凛月は急かす様に重ねる。
「…。その金持ちの宮殿は大まかに三角形になっていて、その角にいてくれればいいらしいので直接会うことは無いだろうと言うことでた。」
「なんだそりゃって思うよね〜」
「という事で、今日はフリーって事でいいんすよね?」
「そういう事だけど、宿に…なんだっけ?」間抜けにリアが怪魔に聞く。
「6時50分な。今が…3時30分ちょい過ぎくらいだからまあ、三時間くらいのフリー時間だな!」
「しゃぁ!行こうぜー!」
「うしっ!」
涼風が走り出したのと共鳴して、リアも走り出した。
それを残された4人は、バカを見る目である事を呟く。
「大変ですねお互い…」
「そうですねえ…世話がやけすぎて焦げてますよ」
グンマさん達と適当に話しながら、先走った2人を追うように早足で追いかける。
少し歩いた所で、
「すっげぇ色々あるな」
「見てみろよ凛月ー!イカのイカスミ焼きだってよ!笑」
「おぅ…そいやお前イカ焼き好きだったな」
「お前も食ってみろよ!」
「いや…ぁ、、」
そこで凛月の頭の中に、父さんの言っていたことが響いた。
「食べたいものがあると思うから、はいこれ」そう言って出してきたのは、福澤ゆきっちが4枚程。当然俺は断ったが、無理やり寄越してきたので仕方なく受け取ることに。
「んじゃあ食うわ」
「おっまじか?」
凛月が定員に話しかけ、スムーズにトラブルなくイカのイカスミ焼きを購入した。
「イカスミ焼き…だったか?変な味だな」
「ははっ」
※※
「みろよじぃさん。射的だってよ」
「ほぅ…やってみますか」
店の人に金を渡し、コルク銃とコルクが数個乗っている皿を貰う。
「何狙うんだ?」
「そうですねえ…あの特濃蜂蜜…なにか特別みたいですねえ」
「お客さん!あれ狙うんですか?!あれほんとに難しいんですよー。定員の私たちでもあれはもうきつくて!」
「そうなんですか、じゃ貰いますー」
「無慈悲すぎん?」
グンマはジッ…と銃を構え、銃口を特濃蜂蜜瓶の角を狙った。
パン!という音と共に、定員も驚く程綺麗に蜂蜜瓶がストンと落とされていってしまった。
「いや…まじかよ…」
「行きましょうか」
しょげている定員から無慈悲に蜂蜜瓶を受け取る。
トコトコと人だかりを歩いているとある人だかりができている場所があり、何やらと覗いてみると、、
「すっげぇ!」
「何だこの人やばい!!」
ーーそこには輪投げで無双している伊織君、その外れに凛月君が傍観していた。
「うわー!もうやめてくださいお客様ぁー!」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!と定員さんの嘆きを聞きながら大量の魚味キャラメルポップコーンを持って伊織と凛月が出てきては、私たちと目が合う。
「そっちも取ったんすね色々」
「こっちバカおもろかったぞww無慈悲w」
怪魔がゲラゲラと笑う中、それに反応して凛月も「こっちも何も思わずに魚味キャラメル大量取りでしたよ笑」
「俺の1個前の人も凄かったしな。7個くらい取ってったんで」
「伊織は何個だよ?」
そう怪魔が聞く。
「16個ですっ!」
きらん。と効果音を口にする伊織。
「お前の方がえぐいじゃねえかw」
「あ、見てくださいあれ」
と、凛月がある方向を指さす。
ーーまさか、その方向にはベンチに座って虚無になりながらもアイスを黙々と食べている。
「ぶっっ…!!」伊織は吹き…
「おやおや…」グンマさんは呆れ…
「こりゃ…傑作すぎる…、、」怪魔は慣れないスマホで写真を撮る。
「まじで…属性が一緒だな」
口角がピクピクし、笑いを堪えながら言う。




