海上都市
カチャ…カチャっ。とダンベルを持ち上げる音が、早朝7時から凛月邸のトレーニングルームで鳴っていた。
「やっ。朝からトレーニングとはまあ、僕が休みを与えた理由を、何も分かってないみたいだね」
「……。インターホンなりました?」
「鳴らしたよ〜。お父さんらしき人が出てきてすぐ入れてくれたよ」
宇久白はゆったりとした声色で、凛月に寄る。
「で、なんでトレーニングしてるの?」
「、、。異能者は、負け=死だと思った方がいいと、俺に言ったのはあんただ。負けないために報われるまで努力する。報われない努力は、努力とは言えないんです。努力が意味も文字も同じく文面通りに、水の泡ですよ」
「努力して報われなかったら、それは努力とは言えない?何を言ってんだ?努力は努力だろ。成功っていうのは、自分が思う最高の努力をした後に、来るか来ないかのイベントだ。」
そのトレーニングルームに朝から、不穏すぎる空気が漂い、凛月に自分がなんのために生き残ったのか再確認するいい機会となったーー。
「お前はまだ、あの家族に囚われてる。お前の父さんが何故、俺に助けを求めたのか、なぜ俺が…父親を覗いてお前の家族を殺してまでお前を解放したのかよく考えてくれ。」
「……。」
筋トレをする手が止まり、宇久白さんは部屋から出ていってしまう。宇久白さんは、あの日以来、ずっと我が家に顔を出し続けてきた、
日本各地、国境を越えて海外からも才能のある人達を異能団へ集めている…。
1家の落ちこぼれ扱いの俺が残された理由…か。
「父さん。ご飯、用意出来ますか?」
用意していたタオルで汗を吹き、朝ごはんを要求する。
「もうしてあるよ。ゆっくり食べて。」
※※※
11時頃。
「おはざまっす団長。」
「おぅ。研究はどんな感じだ?」
「あんたが用意してくれた機材、最高だわ。3日間、充分すぎる休み取っても肩への反動をかなり抑えられたスーツができそうっす」
「そうか…やっぱお前って天才か?」
机の上に置いてあった紙をパラパラと視察して、一切の意味が分からない。
「この資料…お前の先輩がやってた研究の影も形も無い。確かに怪物の原動力的立場のエネルギーを使うっていう発想は貰ったけど、これはもうオリジナルだろ?」
「まあ、あの時先輩に言われたんで…託したってね。土台は変えない。あの人の研究を、俺が最高地点まで持っていくっすよ」
「なんかもう、…頑張れ!」
「ういっす!」
グーサインを出し合ってシュールな光景が浮かび上がってお互い、微笑する。
伊織の研究所を出て、リアに電話をかける。
「もしもーし。今いいか?」
「モーニングコールですかあ?」
「今11時だぞ。それとこの前の話なんだが」
「…、3日後、実物を渡すんで。したい話も少しあるんでね」
「わかった。それだけだよ」
「これだけぇ?もっかい寝ま〜すぅ〜」
「ふふ。おやすみ。」
そう言ってスマホの向こうからの音は切れたーーー。
次に、俺の右斜め後ろに目を少しだけ寄せる。
(2人…か)
俺は少し小走りで商店街に入る。
当然、その2人も追ってくるがーー、
「ど、どこに行った?!」
「わかんないです!辺りを少し探してーー…」
「政府にもまた…舐められたもんだねえ。」
ある店の屋上から、俺の監視役を見下ろしてそう呟く。
諦めりゃあいいのになあ。属性しつこいの野郎はねちっこさが違うぜ。
涼風は成瀬や家族との団欒を楽しみ、伊織は涼風、凛月に近距離戦闘を任せっきりにしないために武器の開発を楽しみながらしている。
凛月は自分を見つめ直し、それぞれがそれぞれ、この3日間を有意義に過ごしていただろう。
3日目の大雨で、それまでのテンションは下がってしまったが、みながディズニーのようなテーマパークに行きたいと思うように、みなの好奇心を沸き立たせるとびきりのニュースが報じられた。
『どこよりも早く!どこよりも正確に!どうも!!大速報キャスターの1条です!ご覧下さい!!これが最近現れてすぐ住み始める人も急増し、ここでしか食べられない魚の斬新な調理法で作られた絶品料理!若者が好きそうな見たこともないお菓子などが揃っている【海上都市】です!!!』




