2年の示唆
伊織は持ち物のケースを開け、手の形に凹んだ所へ、自分の手を沈めた。
すると、鉄が自我を持っているかのように、みるみるうちに伊織の手へと移り、形を成す。
凛月、そして涼風に避ける様に伝えおく。
そして、その武器から放たれる攻撃をこういう。
「波動砲…!」
伊織が小声でそういうと同時に、俺は怪物の攻撃を捌きながら、体を左にヒュっと傾けてその波動を避ける。
波動は見ても分からず、ただ空中にモヤがかかっていた。そのモヤが、ものすごい速度で怪物へ当たって奥の瓦礫へと吹き飛ばした。
隙になっている間、涼風は左から怪我人を連れてダッシュで駆け出した。
「痛…っ!?」
俺は肩への反動に覚悟していながらも、その痛みを負いながら、背後か見ていた俺にははっきりと、押し倒した怪物が起き上がり、涼風へと牙を向いている所を。
「凛月!!」
俺がそう叫ぶ時にはもう、凛月は刀で数本の敵の攻撃を切り落としている最中であった。
「わーってる」
スピードを落とさず、流れるみたいに…切り倒す!
脳と心臓の破壊を、ひとつの動作でやり終える。
脳を切った後、やつを押し倒して心臓に刀を一突きした。
「流石だな」
「そうでも無いけど、ありがとう。」
方なの先から血がぽたぽたと垂れてる刀を、凛月は持参したハンカチで拭いた。
「竹内!!」
「ふぅ…怪我は少しありますけど、重症じゃないです!息も正常だしとりあえずは一安心っすね!」
「ほんと…!ありがとうございます!!」
1隊員が面と面を向かって感謝をして、他の隊員も真似をして感謝の言葉を涼風に放つ。
「こういう役は涼風に任せるか」
「そうだな」
俺たちは怪物の死体を引きずってトンネルの外へと出て、袋に詰めてから車に積んだ。
「「お疲れ様でした!!!」」
警官のよくやる敬礼と、労いの言葉が隊員達から聞こえ、振り返る。
「お疲れ様でした。」
「さいなら〜」
「お疲れ様でしたー!」
それぞれがそれに答えるように声を張る。
俺たちは車に乗り、レスキュー隊より少し早くその場を後にした。
「隊長さんにも言いたかったなあ、」
「お人好しめ!」
「全くだ」
その時、凛月の携帯から電話がかかってきた。
かけたのは宇久白さんであり、その電話に凛月は出たがらずにいた。
「でんわ出れたならもう怪物は処理したっぽいね」
「出なきゃ良かった…」
俺はここで、電話をスピーカーに切り替える。
「まあまあそんな事言わずにさ。それと嬉しい情報と嫌な情報があるんだけど、どっちから聞きたい?」
「じゃ嬉しい方で!」と、涼風が先走って答える。
「わかった!嬉しいこと…それは?!3日間の休暇でぃす!各々、好きなことをするといいさ!」
「短くね?やっぱブラックっすか?!」
「…悪い方は何ですかね?」
伊織は喚く涼風を横目に運転をしながら宇久白に聞く。
「悪い方…まあ凛月からしたら少し嬉しいかもね。結構でかい案件?が入る予定なんだよ。それに向けての準備?は3日後にするから、とりあえず3日間、ゆっくり過ごしてくれ」
「でかい案件…」
「あ、いい情報もう1個あったわ。」
「なんです?」
「最強部隊が来るって…事かな?休みたいだろうし切るよ。じゃぁね」
こちらの話は一切聞かず、そのままプツリと電話は切られた。
「最強部隊って、え?まじ?」
「…地上戦、空中戦、遠距離戦や近距離戦、全てにおいて抜かりない強さを誇り、部隊としてのバランスは最も取れている、ついで感覚で人気部隊ランキングも1位と」
淡々と凛月が口ずさんで説明してくれた。
「…東北地方で活動している異能者のなかの、てっぺんだな」
━━━━━━━━━━━━━━━
「それじゃ、とりあえずここで解散だな。3日間ゆっくり休めよー」
「伊織もな」
「3日後まで!」
俺たちは伊織邸で解散し、各々の家へと向かった。
(許可貰ったし、サプライズで行くか)
コンビニで買ったスムージーを手に、30分近くかそれ以上歩いて懐かしの家のインターホンを鳴らした。
玄関前の電気が付き、扉の向こうから足音が近づいて来る。
「はーい…ぃ、おま、…えっ?」
「や、やあ。」
「…っ!おっかあぁさぁぁぁん!!涼風…じゃなくて斗真帰ってきたぁぁぁあああ!!!」
玄関に繋がる廊下からリビングに行くための扉が開いた状態で、ひょこっと母親と姉が顔を出した。
「あぁ…ああそう…」
「とっ!とりあえず上がれよ斗真!」
姉が母親を見えないように隠してから言う。
「俺っちの匂いってこんな感じだったんだ」
「斗真、泣きてえことあった?」姉が聞いてくる。
「無いね。なんなら喜ばしい事があったよ!」
リビングのソファに座ろうとする所で、母親がグンっと近づいて来た。
「ほんっっと…、よく帰ってきたねぇ…、、」
「ちょちょ、母さん!…ーーふふ」
※※※
「寝ちゃったよ。」
少し落ち着いてから、母さんはソファでぐーすか寝てしまった。
「無理もないんじゃないかな。起きてられる時間まで、できる限り寝ないようにしてたからさ。あたしらがいくら言ったってこういうんだぜ?帰ってきたらどうせ腹減ってるから、何か作るまでに起きてないとって」
「…母さんが寝ちまったしなあ、姉ちゃん、飯作って!!」
「あいよ」
姉ちゃんの作った炒飯が、俺が姉ちゃん作のご飯で一番最初に食ったもので、俺が1番好きな食べ物だ。
「ありがとう姉ちゃん。まじうめえ…」
「そりゃあたしが作ってんだからな。あたりめえだ」
一瞬で炒飯を平らげて、食器を流し台にもって行って洗い始める。
「ん?別にあたしが洗うぞ」
「ソファでゆっくりテレビでも見とけって。やっとくから。」
そんなこんなしてラスト1個の所で、台所へ成瀬がやってきた。
「よく帰ってきたね。槍に刺されなかったか?」
「…、刺させるもんかよ。」
「ラスイチで悪いけどこのコップもよろしくっ!」
「中身入ってんじゃねえか!飲めよ!」
「ふっふー!紅茶にはちみつどんぶりかけはまずかったし不味かったらしいな。もうやらないと誓ったぜよ」
「いや最初からやるなよ…」
「バイトして、金稼いで、しっかり住まわしてもらってる分以上稼ぐからさ。少しだけ許してくれ」
「…別に、住まわしてやってるとか思ってねえから誰も。バイトもキツかったらやめていいし」
「そういう訳にも行かないんだよ。斗真に命助けて貰って、家にも住まわしてもらってる。返せねえくらいの恩があるんだぜ」
多分、俺も成瀬も、急な真面目じみた話に困惑しながら思ってることを言ったのだろう。
「闇バイトとかに引っかかんねえか、それだけが心配だわ」
「引っかかんねーよ!」
「さあ…?どうだかねえ?」
口角をあげて成瀬を見る。
ーーつまるところ、嘲笑いとでも言うだろう。
「て、てめえ……!」




