譲りのショックウェーブ
「ずびまぜん…」
「いや、まっじで馬鹿だろこいつ。」
冷たい視線が凛月から飛んで刺さる。
「まあ、俺は助かったよ。ありがとな涼風」
「でも今回の襲撃でまあ色々と問題が起きてなあ、キッツいんすわこれが」
先程の会見の後、宇久白は皆を貸切のバーでこう語った。
「でもイラついたんすよまじで。伊織から話聞く限りじゃ先輩が起こした事故を肩代わりしたらしいじゃん。んで俺が来るまで凛月と組んで色々頑張ってたのにその恩もさ?忘れてるわけじゃん!!」
「事実かどうか、なんてのは関係ないんだよ。みーんな、誰かを叩いて気持ちよくなって、それで終わり。他人の人生がどうとか、知らねえ面して見過ごしてるんだよ」
伊織がジンジャエールを飲みながら真面目な顔でそう喋った。
「アニメとかでよくいる警察の中でも好き勝手が許されてる奴ね、裏の世界?とかで活躍するような、そんな奴も必要なのかもなあ」
「グビっ…んっ、、んっ。ぷはぁっ!」
俺はコップ一杯によそわれたジュースを一気飲みして強く机の上にコップを置いた。
「おぉ…!」
「俺は思うんですよ!!今日のことで痛感しましたよ!!!ただひたすら思いを貫いてる人が認められて有名になってくんだなって!」
「おぉぅ、」
「助けたいって思いが伝わりゃぁいいんすよぉ!」
ゆっくりジュースを飲んでいた凛月だが、耐えきれなくなったのか、「…論点ズレてね?」と、一言。
その日はのちのちの処理もあり、だんだんと人が減るように解散して行った。
最後に残ったのは俺と伊織、そして凛月だ。
おかわりしたジュースを片手にある話を切り出す。
「裏の世界って、どんな感じなんだろ」
「殺しの仕事、暗殺、密輸、誘拐、暴力団とかヤクザ、マフィア…テロ、裏金とか?飛躍しすぎてるけどな」
「まあわそんなもんだろうな。強いて言うなら他国からのスパイとかかな」
「実際はいるらしいけどな、テロとか阻止するー、、有名なのは別班とかか?本当にいるかは知らんけどな!」
「いたらアツいな。」
(裏金、別班、誘拐、マフィアぁ、…あぁぁあ?)
「うげ…っ、」
「おま!頭から湯気が!!」
「さっさと帰っか!」そう凛月が言って3人でつまらない話をしながら伊織邸へ向かった。
「じゃな。俺は今日、家に帰るよ」
「泊まんねーのか。気をつけて帰れよ」
「バイバイっ」
「うぃ。じゃ」
そう言って俺の家に着いてから凛月は自宅へと向かって行った。
「おっはよう!!」
伊織はそう言うと同時に俺の布団をひっぺがして起こしてきた。
「今ぁ、、何時〜…?」
「8時25分くらいだな、いい朝だぜ。見てみろよ、」
俺はカーテンをシャっと開けて陽の光を涼風に浴びせた。
「…眩しいって、」
「ははっ」
すると突然、異能者達に持たせられている怪物警報が鳴り響き、異能本部から場所が知らされた。
これは知らされた異能者の0mから1km圏内に怪物が出現し、怪物の排除を要請しているということである。
「早いって!寝起きだぞこっちは!」
「ふっ。行くか!」
大急ぎで外へ行き、伊織は車を出した。
「いや車いいん?!」
「緊急時の時は未成年でも許可されてる!そのための未成年運転免許試験だ。俺は持ってるからな!」
そう言って伊織の庭から出ると、すぐそこの歩道を走ってきていた凛月に出くわした。
「ありがとう!」
「うぃっ」
颯爽と凛月は乗車し、伊織との会話を交わした。
「凛月!おはよう!!」
「あぁ…おはよう。こういう時でも忘れないんだな。」
「母さんと姉ちゃんに口酸っぱくして言われてるからね」
「とりあえず現場のトンネル向かうから!ほっこりし続けないで!!」
「はい!」
ただひたすらに報告に受けた場所へ車を走らせて到着したのはまだ工事中のトンネルであった。
俺たちは車をおりて、そこに居たレスキュー隊と話を交わした。
「怪物警報が鳴って来ました。このレスキュー隊の隊長はどちらに…?」
伊織は隊員にそう聞く。
「こちらに、、」隊員はもの暗そうな顔色をして、救急車に伊織を誘導してある人を見せた。
「あなたが…状況は?」
「…トンネル内の、事故によって出た怪我人は救助したのですが、最後の一人の時に怪物が出てきてっ…!」
隊長は負った傷の痛みに耐えてようとしながらも、話を続けた。
「うちの隊員が…、竹内が!怪我人を庇って怪物に捕まってしまったんです、!行けるなら俺が行きたかった、でもこの足では行けないから、、お願いします!竹内を…助けてください、っ」
震えるながら頑張って上げる隊長の手を、俺は優しく掴んで、「はい。」とだけ答えた。
すぐ車を降りてトンネル内を伺っている涼風と凛月に話しかける。
「怪我人は全員救助したけど、怪物に捕まってる隊員が1人、いるそうだ。隊長の前じゃ言わなかったけど、死んでる可能性は?」
「無いね、声聞こえるから」
「声…?」
何も聞こえないけど、、と付け加える。
「だよな。多分これも涼風の異能だろうな。強化聴力みたいな」
「神楽さんかよ。それで、どうする?」
「トンネルの中は暗いし狭いしで、機動力があっても無駄に事故るだけ。2人に戦ってもらって、俺が助け出す感じで行こう」
「了解」
「うす!」
未知の薄暗いトンネルの中に3人、足踏みを揃えて入った。
「2人とも、150m先だって」
「学校のグラウンドがだいたい200あたりだから
…まあもうすぐそこにいるな。気ぃ抜くなよ」
凛月は刀をゆっくり抜き、俺達の耳にはその音が静かすぎるトンネル内にいるせいで余計に大きく聞こえた。コツコツと歩く音ばかりが響く。
俺たちは事前に打ち合わせしておいた、それぞれカバーし合える距離を保って、線を結んで三角形に陣形を組む。
緊張感がやべぇ、、
ーーでも、炎魔さんのあれに比べたらそりゃもう…全然っ。異能もしっかり使えてる、大丈夫だ、大丈夫…。
「…ッ!しゃがめ涼風!!」と伊織が叫ぶ。
「おっ!…!いやあっぶな!!」
俺の真横から脳天を狙って突き刺そうとしてきた先のとがった肉片は奇しくも俺が避けたことにより、反対の壁へ刺さる。
その肉片はどくどくと血が通って、脈打っていた。
「上か!」
トンネル内の天井から無数の棘で狙われ、避けながら左右の壁際まで逃げた。
上を見るな否や、怪物がくっついていて、すぐさま天井から地面へと降りてきた。
無数の棘がやつの体の側面に吸収されていった。
体をすぐに起こし…怪物が手を少し上げ、勢いよくこちらに指を指すように、下げた瞬間のことだった。
「?!!」
「どわあっ!」
涼風にもやった、脳天目掛けて釘の鋭さとを持った攻撃が上から槍のように降っては、こちらが避けるために、当たらずに地面にグサグサと刺さっていった。
凛月は足を軸にくるくると回転しながら避け、刀で地面に刺さっている敵の細胞を切り崩して見せた。
「4車線のトンネルで良かった。まだ戦いやすい!」
「涼風?!どこにいる?!!」
伊織は見当たらずにいる涼風に呼びかけた。
「怪我人見つけた!!!タイミングよくそっちに運ぶから戦っててくれ!」
怪物の向こう側に、確かに怪我人の傍で屈んでいる涼風が見えた。
「凛月、ショックウェーブを撃つ。合図するからそれに合わせて避けてくれ」
「ショックウェーブ…わかった。時間は…っ!どれくらいかかる?!」
怪物の猛攻を抑えながらそう話す。
「5秒くらいかな…」




