夢
目の前は血だらけ。
女子供。そして父親。
数々の人が今。目の前で串刺しにされた。
加えて俺の顔もその返り血で血だらけになってしまっている。
その主犯の名が分からないので鉄くず野郎と呼んでいる奴が俺の横に空中から舞い降りてきた。
「なんでなんでなんで。俺のせい?俺のせい。そうだ俺のせい。俺が間に合わなかったから。間に合わなかった?なんで?なんでなんでなんで。」
俺は恐らく...そんな御託をほぼ永久的に綴っていたと思う。
そして俺の髪がわしずかみされて思いっきり地面に叩きつけられた。
何回も。
何回も。
叩きつけられる度に傷を負い、その傷を異能によって修復してしまう。地面はもう粉々で俺の頭から出た血で染まっていた。
「壊れてんなあ?もうとっくによぉ?」
そう言ってまた1回俺の額を地面に叩きつける。
「自分が特別な薬飲んだから強くなったとでも思ったのか?!!」
また1回
「色々な奴らから注目されているから調子に乗ったか?!」
そして1回。
何かを言う流れではあったが言わずに今までにない力で思いっきり地面に叩きつけられ、俺は「アグッ」と声を漏らした。
「あめーんだよ。ガキが。」
宙に頭を上げられた時、俺は視界が真っ赤だった。
何かを考えるだけの力は残されていたものの、別に何かをする気も起きず、ただ叩きつけられるのを待つように力が抜けていた。
あぁ。高校1年。姉ちゃんとお母さんにも最近異能だのなんだのと色々あったから会ってねぇや。
ごめん。.....
「ゴフッ!」
目を下にした時、自身の口から血が出た。
そして俺の顔面はそのまま地面に倒れた。
グシャァっと音を立てて。
...なんだここ。辺りが暗い。
どこだ。今どこに...。辺りをキョロキョロしていると1つだけ赤色に光る点を見つけ、咄嗟にそこに向かって走り出す。
すると途端に俺は身体に電撃の走った感覚を覚え、目を閉じ、再び開けるとある光景が目の前にあった。
「あらあら、斗ちゃんったら。虫さんを林に返してあげているの?」
こ、これって漫画とかアニメでよくある走馬灯って...奴なのか...?
だが今はそんな気分でも自分の記憶を見ようとも断じて思わない。早く消えて欲しいくらいだ。
俺は目の前にしゃがんでいる老人を見つめている。
恐らく霊体のようになっている俺に背を向けて、先程のセリフを放ったあと、少し経ったら右側をスっと向いてきたのだ。
俺はその視線の先を見るよりも大切なものを目にした。
俺は今、恐らく身体的に泣けないことにおそろっしく憎しみを抱いている。
頬は引き攣り、奥歯はガリガリと音を立てている。
...ばあちゃん...だ。俺の。
そのまた少し横を向くと林に手を伸ばして虫を逃がしているちっちゃい俺がいた。
「うん。なんか少し可哀想だったから!」
「優しいわねえ。.....ところで斗ちゃん。夢はあるの?」
「夢かぁ。うん!ある!」
「なんだいなんだい。教えておくれ。」
俺はひゅっと息を呑んだ。
「ヒーローになるの!僕は!」
うん。そうだったね。その時の俺はそうだった。
だから今からだ。今から叶えてやる。
そう俺は。
受験生が勉強してなくて、長期休みに勉強するぞ!という緩い決心の100倍以上の硬さで誓い、
真っ赤な色に閉ざされている眼をガバッと開いた。




